第2話 日本酒2

 もう少し日本酒の話をしよう。

 題名の酒を造っていた酒蔵(造り酒屋)はもうない。そして、こういうことは珍しいことでもない。

 酒蔵はどんどん減っている。一つはスケールメリットの問題だ。小さい酒蔵が経営を維持することは難しい。造る酒の量が少なく、販売範囲が地域に限られているからだ。そういう酒蔵が日本酒離れが始まった頃から売れなくなって、経営余力がどんどん落ちていったのだ。それでも昔は大手の酒蔵が樽買いしてくれたので小さな酒蔵もほそぼそながら維持出来ていた。だが、20年ぐらい前から樽買いもなくなってきて、多くの零細酒蔵がなくなっていった。その多くが普通酒だけを造る酒蔵だった。もちろん、そこには経営努力をしないために起こったことでもあり、仕方ない面もある。

 しかし、良い酒を造る努力をしてきた酒蔵が最近廃業することが起こっているのは、別の理由がある。杜氏が確保できなくなり廃業する例も増えて来ているのだ。杜氏は長い間但馬杜氏や南部杜氏など、冬季の出稼ぎとして行われてきた特別な季節労働者だった。また、良質な酒は杜氏の技術に頼って造られてきた。それも時代の中で変化する。雪国の出稼ぎもする人がなくなって行く。大手の酒蔵は杜氏を正社員として、冷房完備の工場で一年中酒造りをする。そうすると今まで地方の酒蔵から買い上げていた酒を買わなくても必要な量を確保できるようになる。収入の減った地方の酒蔵は更に余力が無くなる。そこへ杜氏の高齢化と後継者不足で酒造りを出来なくなる中小の酒蔵が廃業してゆくのだ。

 そうして個性のある酒が消えて行く。時代と言えばそうなのだが酒好きには悲しい思いがある。

 ただ、最近良い傾向も見られる。ネットの効果で良心的な酒蔵の製品が売れるようになってきた。美味しい酒が消えてしまわないことを祈るばかりである。

 前回、日本酒の種類で出さなかったのだが、生酒、生貯蔵酒と言うものがある。これは、同じではない。生酒は文字通り火入れをしない生の状態で瓶詰めされる酒で、生貯蔵酒は、生で貯蔵して、瓶詰め直前に火入れした酒のことである。だから、生酒は酵母が生きていて、長い間貯蔵すると味が変質する。基本的には、出来る限り早く飲むべき酒なのだ。

 また、原酒と言うものもある。これは、樽から絞った日本酒を割水(薄めること)せずにそのまま瓶詰めしたものである。大体、アルコール度数20%以上あるものが多い。日本酒は、蒸留しない酒としては度数が高い。そのため、通常は割水して15〜17%程度にするのだ。だから、原酒はストレートで呑むと悪酔いしやすい。ロックなどにしてゆっくり楽しむのがお勧めである。

 

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