メキシコとアメリカ

 アメリカには約1100万人を超えるメキシコ人が居ます。その多くは労働許可のない不法移民ですがそのうちの約 800 万人が仕事についていると言われています。その仕事は多種多様で建築、農業、飲食 業、塗装、運搬、メカニック、ハウスクリーナー、ベビーシッターとメキシコ人が携わらない職業はないでしょう。通常アメリカで仕事に就つくためには国民番号ソーシヤルセキュリティが必要ですが彼たちの持つ番号はその大半が偽物です。メキシコ人が多く住む街に行来ますとこのソーシャルセキュリティーと身分証明書をお金で買える所が有ります。そこに行けば好きな名前で証明書を作って頂けるので、もしあなたが学生ビザや観光ビザでアメリカに入国しても、それを入手すれば働く事も出来ますし全く違う人にもなれます。ハワイ州で仕事をして捕まれば雇用主も罰せられますし本人も強制送還の対象になります。さらに何年かアメリカに入国が出来なくなります。ですがアメリカの本土ではそれが可能なのです。ただその偽物身分証明書では自国への出入は出きません。たとえパスポートが切れてもビザが無くてもこの国から出なければアメリカに住むことは可能です。驚くなかれそのような日本人も結構います。またそのような人達は毎年行われる永住権の抽選に申し込み正式にアメリカに住めるように何度でも試しています。もし当選すれば何人に限らず永住権が貰えるのです。ラテン系の人が多いアメリカですが同じメキシコ人で有ってもアメリカ国籍を持つ人(アメリカで不法移民の間に生まれた人)が不法移民のメキシコ人を下にみる傾向が有ります。同じ不法移民のラテン系の人達もエルサルバドール、ガテマラの人達とはあまり仲が良く無いようです。アメリカ各地にいるメキシコ人ですが私の住んでいたスタジオシティにはあの鳥インフルエンザの発祥の地オアハカの人達が多く住んでいます。もう少し北側に行きますとメキシコシティの人が固まっています。これは最初にその土地にやってきた人が自分の故郷から家族親戚や仲間を呼んだため同じ出身地の人が集まるのです。いつでしたかニューヨークで日本食のコンテストが開催されました。なんと優勝したのはメキシコ人でした。最終審査は日本で行われましたが残念ながら彼は日本に行く事が出来ず参加出来ませんでした。その理由はメキシコ人にとって正式にパスポートを取るのはほぼ不可能な事だからです。メキシコは昔の中国や韓国のように国民がパスポートを取り海外に行く際、それがたとえ観光目的であっても財産証明を提出しなくてはなりません。貧しい人達にとってはハードルが高いのです、その上保証金を積まないといけません。そうしなければ殆どの人は帰って来ないのです。もし保証金を積んだり財産証明を提出していても、約束された日数に帰国しない場合国が没収します。ですから黙って国境を超えてアメリカに来る方が面倒もリスクもない訳です。韓国や中国でも以前は同じように保証金を積む時代も有りましたが、現在はその制度が緩和されたため観光で来る人が多くなったのです。ハワイには何故メキシコ人が居ないのか?理由は簡単です。カリフォルニアや陸続きの所は国境を越えればいいですが、ハワイまで泳いで来る事は不可能です。先日私の息子が友人と4人でメキシコに行った時です。赤信号を守りちゃんと停止したのにも関わらず警察官が信号無視をしたと言ってきました。「信号では停止しました」と言っても聞き入れてくれません。するともう一人の警察官に千ドル払えばお構い無しだがもし支払わなければ監獄に連れて行くと言われ、友人とお金を出し合い監獄行きを免れたそうです。もしあなたがメキシコにお出かけの際には、メキシコ人の友人と行くか、ちゃんとしたツアーで参加する事をお勧めいたします。

 さて、アメリカ政府の矛盾点ですが、不法移民はアメリカ国内で仕事についてはいけないと言われて居るのに年末になると政府がピンナンバーという番号をくれます。これは所得税の申告番号ですが、働いては違法という人達から税金は取るのです。しかしメキシカンにとってはたとえ納税してもソーシャルセキュリティの掛け金を収めても何の恩恵は有りません、それは彼らが不法移民であるからです。ただし税金さえ払っていれば暗黙の了解で送還を逃れる事が出来るのです。現在カリフォルニアでは大麻が合法になりましたが違法であった頃は違反者を取締りその都度手続きをして留置所に入れていたのですがその人数があまりにも膨大で有るため手続費用など人件費がかさみ政府にもその余裕が無くなったのです。また刑務所もオーバーキャパシティになりそれをカバーする予算も無い事から、無駄なお金を使うよりそれらの業者から生産許可費用、販売権、税金を頂く方が国が潤うと考えたのです。最近では痛み止めに化学薬品を使用するより自然薬品として大麻を使用しています。ですから現在カリフォルニアには合法的なマリワナショップが方々に有るのです。もし貴方が購入したければそのような店に行けば簡単に手に入ります。ただしもし吸引後に交通違反で検挙されますと飲酒運転と同じように扱われます。販売店に入りますと綺麗なガラスの容器に異なるブランド物が並んでいますので丁度酒屋でお酒を買うような具合です。用途も多様化しています。痛み止め、食欲増進、入眠、睡眠用とあらゆる種類が販売されています。最近日本でも医療用に限り研究が進められていますが大麻の話をするだけで御用になるような国では、不可能で有ると思います。日本の皆様、申し上げておきますが間違えでもこのような品を日本に持ち込む事はなさらないで下さい。カリフォルニアが合法でも日本では違法です。こんなことでトラブルになれば、アメリカに入国する以前に日本から出国出来無くなります。

 メキシコのお話に戻りますが彼らはアメリカの法律を学びそれをうまく利用して生活をしています。メキシコ人の夫婦がアメリカに入国する際まともに移民局を通れば2人は夫婦として登録されますが、不法移民は独身として生活することが可能です。子供が生まれる際にはシングルマザーとしての扱いが受けられますので出産に掛かる費用、病院代はほぼアメリカ政府が負担してくれます。これがアメリカの厚い保護ですが一方で我々のように真面目に税金を収めている人達は、保険の制度に基づいた全ての費用を払います。その上その費用は我々国民の税金が使われているのですから何とも平等とは言えません。そのためトランプはアメリカの負担を少しでも避けるためメキシコ人を本国に送還するといいますが、それは不可能なことです。もしアメリカ全土を工場に例えればその人々を追い出せば工場は機能しなくなるからです。その事情をよく知るメキシコ人は昔のような少ない賃金では働かなくなりました。メキシコは自国の賃金が低いため国境を超えても他国に侵入してお金を稼ぎ家族親兄弟に送金します。 産めよ増やせと沢山の子供を作りアメリカに送れば、親兄弟は生活が保証されるのです。ですから子供が 1 ダースなんてざらにいます。どこの国にも同じような人は居ますが、メキシコ人の多くは酒飲みが多くわりといいかげんな楽天家は昼休みに酒が入ると仕事には戻ってきません。休み明けの日は仕事に来るのか来ないかその日にならなければ分りません、いっぱい飲んで酔っ払えば彼達にとっては祝日のようなものです。

 結局トランプが送還出来た人達は主に不法滞在者の中でも犯罪歴が有る人に限られました。労働許可のない日本人が実際にはアメリカで働けるのは、こうして傘になって下さる多くの不法移民のメキシコ人のお陰なのかも知れません。過去何度となくメキシコ本土からアメリカに通じるトンネルが発見されました。この多くは麻薬密売の秘密トンネルで有ります。大きいものではトラックが通れるほどです。以前にハワイでも島の窪地の周りに家を立て一見農業を営んでいるように見せかけ地下1エーカーの土地で大麻を栽培していた人達がFBIによって検挙されました。その収益は何億ドルとも言われています。彼達は本土から乗り込む航空会社の乗組員らと組んでコカインのような麻薬と交換取引をしていました。連邦政府FBIによって摘発検挙されましたがアメリカではよく有るお話です。そのような訳でアメリカとメキシコの経済と犯罪は切っても切れないお付き合いで双方のマフィア組織と共に簡単につながりを断ち切る事は出来ないのです。果たしてこれが自由国家と言えるかどうかは分かりませんが陸続きの両国は単一民族の島国日本のようには行かないのです。そして今も尚ハワイアンが「この島はアメリカンによって奪われた」と言うようにメキシコ人も「アメリカはメキシコ人から彼らが奪ったのだ」と主張しています。

 私のケースは何十年も前に終わっているのですから以前は出入国も全く問題は有りませんでした。アメリカの大統領がトランプさんになった後に起きた事です。仕事でメキシコから帰ってきた時です。移民局の職員に「質問が有ります」と空港管理局の個室に案内されました。「以前君には事件に関連したレコードが有りますがその事件の終了証明が無いと入国の際に毎度こうして呼ばれ質問を受ける」といいます。此処が同じアメリカで有っても州によって異なるのでハワイ州からカリフォルニア州に対する証明書が必要と言うのです。早速ハワイに連絡して証明書は頂いたがそれでも必ず止められ同じことを質問されます。現在は何も言わなくても証明書を見せればすぐに通してくれますから別に悪い事をしている訳ではないので構いませんが、問題はこれに掛かる時間です。私が待合室に呼ばれるとそこには毎度 20 人近いメキシコ人が必ず居るのです。ですから私の順番が来るまで何時間も待たされるのです。そんな事で私と顔見知りになった職員が「アメリカ国籍を取ればいい」と言っていました。「アメリカ国籍になれば2度と此処には呼ばれない」と言います。私の場合 50 年間グリーンカード(永住権)ですがそれで何も問題は有りませんし、アメリカ国籍になることに抵抗が有ります。この様に大統領が変わりますと法令もシステムも全て変わります。トランプはアメリカを外部から保護する為入国管理をとても厳しくしました。以前トランプがアメリカとメキシコの国境警備を厳しくして塀を築くと言っていましたが、メキシコ人はどこにどれだけ塀を作ろうがいくらでもアメリカに入る方法はあると笑っていました。また彼はアメリカから全てのメキシコ人を追い出すと言っていましたが、先程もお伝えした様に、無理な話で有ります。もし本当にアメリカに居るメキシコ人が本国に送還されますと、アメリカの経済は大きな打撃を受け大変な問題になると思います。

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