第六話 旅立ち
今日は旅立ちの日だ。
訓練が無いのでぐっすり寝ていた。
「おい! 起きろ!」
師匠の大きな声で目覚めた。
「まったく、いつまで寝てるんだ」
「すいません、つい」
「まあいい、朝食にするぞ」
今日の朝食はオムレツ。師匠は料理がとても上手なので、わくわくしている。
「さあ、召し上がれ」
「わあ、美味しそうですね」
食卓に並べられたオムレツからは、チーズがとろけて出てきていた。
僕はさっそくオムレツを頬張った。
「美味しいです! やっぱり師匠は料理が上手ですね」
「ははは、そんなことないさ」
師匠は少し照れくさそうにしていた。
こんな何気ない師匠との会話も、今日で終わりかと思うと切なくなってくる。
「ごちそうさまでした!」
「ご馳走様でした」
最後の師匠との朝食が終わった。
僕は旅の準備をするため、部屋に戻った。
旅の準備は終わった。
師匠に別れの挨拶をし、旅に出よう。
そうして、部屋を出た。
「そろそろ出発か?」
部屋を出ると、すぐそこには師匠の姿があった。
「はい。今まで、お世話になりました」
「堅苦しい挨拶はよしてくれ。こっちも孫ができたみたいで楽しかったぜ」
「ありがとうございます」
「旅に出る前に、これだけは約束してくれ。“絶対に死ぬな”」
「約束します。僕は絶対に死にません」
「破ったら、許さないからな__」
ふと顔を見ると、涙をこぼしていた。
僕も感化され、涙をこぼしてしまった。
「おいおい、泣くんじゃねえよ。男だろ」
「師匠こそ」
二人で顔を見合わせて、涙が出るほど笑った。
はたしてこの涙は悲しみ出てきたものなのか。
はたまた、笑いすぎて出たものなのか。
そんなことはどうでも良かった。
僕は涙をぬぐい、覚悟を決めた。
「では師匠、いってきます!」
「おう! 行ってこい!」
僕は扉を開け、旅の第一歩を力強く踏み出した。
旅が、いよいよ始まる__
第零章 始まり (完)
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