第五話 訓練最終日

今日は訓練三日目だ。

起きたら直ぐに支度をし、訓練室に向かう。


「師匠、おはようございます!」

「スピネル、おはよう」


朝の挨拶を交わし、いつもの様にナイフ等を準備する。


「今日は実践的な訓練ではない」

「では、今日はなんの訓練なのですか?」

「今日は、この世界について学習してもらう」

「分かりました」


そう言って、師匠の前の席に座った。


「この世界では、四天王と呼ばれる者たちが日本を四分裂して支配している」

「じゃあ、ここの地域も?」

「勿論だ。ここら辺はヴァイスと呼ばれる者が

支配している」

「ちなみに四天王を倒せば、その地位を奪うことが出来るがーー難しいだろう」

「それは何故ですか?」

「まず、この数年間は交代していない。誰一人

としてな。そして各四天王には管轄の組織があると言われている」


つまり、管轄の組織を倒さなければ四天王には

辿り着けないと言うことか。


「次の話へ移るぞ」

「お願いします」

「この世界では、常に戦闘が起きている」

「今この瞬間も、ですか?」


師匠はコクッと頷いた。


「皆が戦闘を繰り返すのは何故だか分かるか?」

「自身の能力に溺れているからですよね」

「それもあるが、違う。正確に言えば、能力を

強化するためだ」

「戦うことで能力が強化されるのですか」

「その通り。だから人々は自身の能力の強化を求め、四天王になる為に戦闘するのだ」


だったら四天王は、どれ程の能力を持ち合わせているのだろう……


「だから、お前も旅に出たら戦闘をしろ。お前

ならきっと四天王になれる」

「はい」


少し、弱気な返事になってしまった。

まだ、自信がついていないのかも知れない。


「最後に補足だ」

「なんでしょうか?」

「この世界では例外的に二つの能力を持ち合わせる者がいる」


一つでも強化なのに、二つも……


「四天王のうち二人はそうだ」

やっぱり。能力を二つも持っているのに弱いはずがないよな。

「以上で話は終わりだ……」

「ありがとうございました!」


「そして、合格おめでとう」

「え ?どういう事ですか……」


僕は唖然とした。


「昨日お前が俺にナイフを刺した時点で、合格だ。だから今日は実践ではなく、この世界について教えた」

「あ、ありがとうございます!」


大きく一礼した。


「明日の朝はもう、旅に出ていいぞ」

僕は少し涙ぐんでしまった。

「おいおい、その涙は明日にとっておけ」


そう言って師匠は笑った。

僕も一緒に笑った。


「さ、戻って飯にするぞ!」

「はい!」


こうして、僕の最後の訓練が終了した……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る