籠に閉じ込められたココロ

第3話

「かなっちー？どーしたん？」

「おーーーーい、かなさーーん？」

はっ！

「ごめんなさい、なんでしたっけ？」

今は昼休み。私はいつも通り、ゆりちゃんとゆりちゃんの中学時代からの仲良しさんである有村真麻（ありむらまあさ）ちゃんと一緒に屋上でお弁当を食べていた。

「だ、か、ら！あいつどーにかなんないかなって話！！」

真麻ちゃんはみんなのお姉ちゃんって感じで、いろいろな人の相談に乗ってあげてる。だから学年の中でも情報通なのだ。

「えっと、あいつって？」

「真谷だよ！真谷聖夜！！」

ん！？し、真谷くん…？

今、1番話に出して欲しくない人……

「真谷くんがどうしたんですか？」

「いやさー、あいつってあんな性格だけどモテるじゃん？だけど振り方が超テキトーだから傷つく子が多くて……私にたくさん相談に来るの……どーしようもないじゃん、そーいう性格のやつなんだからさ！」

「なるほどね……まやっちって相手のことなんて何も考えてなさそうだもんね」

「そうですね……って、まやっち……？」

「まやっち！『真谷』って『まや』とも読めるでしょ？だからあだ名なの！」

「いや、あんたしか呼んでないからな？」

「えー良いでしょーかわいいじゃん！それに本人も嫌がってないし！」

「え、そうなんですか？」

あいつって、そういうふうに呼ばれるの嫌がりそうなのに……。

「私もビックリした！本人目の前にして言っても普通に返事返ってきたからさー。ほら、なんでも思ったこと言うやつだから、嫌がらないってことは呼んでも大丈夫ってことでしょ？」

「だからって……」「えーなんでー」そう言いながらお弁当を片付けて階段に向かって歩きはじめた2人。

そっか……自分の気持ちを常に話してるってことは、裏表が無いってことでもあるのか……。

それに比べて私は……。

「そうだ！駅前にアイス屋さん出来たんだって！！帰りに行こうよ！！」

アイス……！お母さんが言ってた所だ。

「はーー？昨日ダイエットするとか言ってたのどこの誰だよ」

「ちょっとくらい平気だってー」

「あ、あの……」

私の声に2人が振り返る。

すると途端に声が出なくなる。

「どーかしたー？」

「え、あ、先生に呼ばれてたので先に行きますね！」

真麻ちゃんが私の名前を呼んでる気がしたけど私は階段を駆け降りた。

本当は一緒にアイス屋さんに行きたい。

だけど……そう声をかけようとすると、脳裏に思い浮かぶ。

「あんたなんかと出かけるわけないでしょ？」

「ホントにウチらと仲良いと思ってたの？」

あの頃の記憶が……

「あんたみたいな性格のやつと友達になってくれる奴なんて居ねーんだよ！！」

私のトラウマが……

私はいつまで経ってもココロを籠に閉じ込めたまま、解放できずにいる……。