第4話
「あっつ!」
広範囲にわたる炎を避けきれなかったセンの左腕が火傷する。自身の体に纏わせた魔力の防御によって焼失こそ免れたものの、傷はかなり深そうだ。暫くはろくに動かすこともできないだろう。
それを見てスキルが発動しないわけもなく、大多数の魔物の注意を引き付けた俺は回避行動をとりながら回復魔法を使った。
「ありがとう! このぉ!」
すぐに体勢を整えたセンは、素早く相手との距離を詰めると、自身の三倍はあろうかという大きさの魔物を下から一刀両断にする。
「よし次! って、えぇ!?」
残りの魔物は距離を開けられた俺の追跡を諦め、センに殺到する。彼女は眉根を寄せながらも、気丈に笑って見せた。
「ホント、いっつもこうなんだか、らぁっ!」
センは押し寄せる群れに向かって突進する。そして相手の攻撃を紙一重で避けながら、すれ違いざまに斬り倒していく。
一度でも攻撃を食らえば、そのまま群れに飲み込まれてしまう。そんな何十回目かの死線を、センは今回も斬り抜けてみせた。
「ふうっ」
周囲を警戒し、他に魔物がいないことを確認してから、センは息をついた。振るった剣から魔物の血が飛ぶ。
「惜しかったな」
「本当よ。あれさえなければ文句なしだったのに。まあ暫く先生に他の魔物を任せちゃってたから、元々独力じゃ切り抜けられなかったでしょうけど」
「そうだな。ただそれでも、以前のセンとは比べ物にならないくらいだ。この調子なら、討伐対象の魔物もセン一人で倒せるかもしれない」
「ふふ、ありがとう。そうね、倒せそうかどうかの判断は私がするわ」
「ああ」
その時だった。遠くから誰かの声が届く。俺は咄嗟に耳を塞いだ。センの顔つきが険しくなる。
「聞こえたか?」
「うん。まだ遠いけど、多分、王国の人間だと思う」
つまりはそういう内容の言葉だったというわけだ。俺は駆け出しそうになる足をどうにか抑える。
くそ、これだから魔物のいるところには留まりたくないんだ。本当に助けを求めていたのだとしたら、命に関わる。俺のスキルはその可能性を無視できない。
「私が行く。先生はここで待ってて!」
「あ、おい!」
制止も聞かず、センは声のした方へと向かっていった。俺は暫く考え、大人しく彼女の帰りを待つことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます