第11話 指切りげんまん
どうしてこんなことになってしまったんだ・・・。
ラケットのことをうさぎ先輩に聞いたものの、一緒に買いに行くことに。
どれを買えばいいのか教えてもらって、休みの日にひかりでも誘って行こうと思ったんだけどなぁ・・・。
・・・ひかりが一緒に行ってくれるかは微妙だけど。
せっかくの休みだし、悪いですよと遠回し気味に断ったんだけど、うさぎ先輩の押しに負けてしまった・・・。
あんなにお願いされたら断るのは無理だ。
「──ほら、でもさ! ラケットの種類とかさっぱり分からないでしょ? 私がいればそういう心配とかないし!」
「いや・・・でも・・・」
「私と一緒に行くの嫌・・・かな・・・?」
上目遣いで聞いてくる。
そう言われると断れない・・、。
「別に嫌ってわけじゃないんですけど・・・」
「じゃあ一緒に行こ! お願い!!! おーねーがーいー!」
とまぁ、こんな感じでお願いされ、一緒に行くことになったというわけで・・・。
あの時のうさぎ先輩は、欲しい物を買ってもらえない子供のようだった。
そんなやりとりを思い出していると、白いボールが横を通りすぎる。
「こらー! ボケっとしない!」
球出しをしている先輩に注意されてしまった。
すいませんと謝り、列の最後尾へ移動する。
うーん・・・。困ったなぁ・・・。
部活初日だというのにどうにも身が入らない。
ボールを打つうさぎ先輩を見る。
楽しみにしているうさぎ先輩を見たからには今更断れないし・・・。
これがくぼちゃんが言ってた、うさぎ先輩と仲良くなれってやつなのかな?
もしかして、この流れって必然だったりするの? だとしたらいよいよくぼちゃんが何者か分からなくなる・・・。
案内人と言っても運命まで操れるわけではないよね・・・? そうだよね?
でも、約束しちゃったからには行かないとダメか・・・。指切りまでさせられたし。
「──じゃあ約束だからね! 絶対だよ! はい、指切りげんまん!」
指切りげんまんとかいつ以来ってなるぐらい、久々にした気がする。
なんか所々、うさぎ先輩は幼い所がある。
「・・・ちゃん? ・・・桜ちゃん!」
急にうさぎ先輩に名前を呼ばれる。
「桜ちゃんの番だよ!」
「あっ・・・、すいません」
・・・今は部活に集中しよう。
──翌日
「桜ちゃん」
部活が終わり部室に戻って着替え終わった所で、うさぎ先輩に声を掛けられる。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。明日のことなんだけどさ、待ち合わせの時間とかどうしよっか」
あぁ、もう明日か・・・。
何時でもいいんだけどなぁ。
「私は何時でもいいですよ」
「じゃあ、駅前の時計広場に11時とかでいい? モールの中のスポーツショップでラケット見よう」
「わかりました」
「あの、さ・・・」
急に先輩が体を右に左にと揺らしながらモジモジし始める。え、何? 私、告白でもされるの?
断りの返事はなんて言おうかしらとそのあとの言葉を待つ。
「・・・午後も特に予定ないなら、ご飯とかどうかな?」
どうやら告白はお預けらしい。
人生で初めて告白されると思ったのになぁ。残念。
冗談はさておき、ラケット見たりしてそれが終わる頃にはちょうどお昼時か。ご飯食べるぐらいならいいかな。
「いいですけど」
そう答えるとうさぎ先輩が笑顔になり、喜んでいるのが伝わってくる。
「明日楽しみにしてるね!」
「はい。お先に失礼します」
うさぎ先輩に挨拶をして部室を出る。
すると、部室を出てすぐに大きな声でやったーと大きな声が聞こえてくる。・・・聞かなかったことにしておこう。
あんなに楽しみにされるとなんかプレッシャーが・・・。
「明日大丈夫かな。色々と」
不安な気持ちになりながら私は学校をあとにした。
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