第10話 佐藤美桜の決意

 ──ピピピピッ


 目覚ましを止め、ゆっくりと目を開ける。

 もう朝か・・・。

 今日からさくらちゃんがソフトテニス部に入部するって思うと、楽しみで寝るのが遅くなってしまった。


「楽しみ!」


 その言葉と同時に一気に体を起こす。

 さて、準備するかな!

 パンパンと顔を叩き気合いを入れた。



 今日は授業があまり身に入らなかった。

 どうすればさくらちゃんと、距離を近づけることができるかなぁとか、一緒に遊びに行ったら楽しいだろうなぁとか、そんなことばかり考えていたからだ。


「早く放課後にならないかなぁ」


 1秒ずつ進む時計を見つめながら、誰にも聞こえないぐらいの声で呟いた。



 ───放課後


 部室に到着してから数分後にさくらちゃんが来た。


「あの、うさぎ・・・じゃなくて部長」


 うさぎってなんだろ?

 とりあえず、うさぎの耳を手で作ってみる。ぴょんぴょん。


 桜ちゃんに名前で呼んでほしいとお願いすると、少し恥ずかしがりながらも名前を呼んでくれた。

 さらに部活では名前を漢字表記にすることになったり、嬉しいことが続いた。これで名前お揃いだ!


 それからラケットの話になり、桜ちゃんと仲良くなれるチャンスが訪れる。


「でもどんなの買えばいいのかさっぱり分からないので...」


 桜ちゃんがそう言ったので少し考える。

 こんなラケットがいいよって教えることは簡単。

 でも、買う時に私が傍にいればもっと色々教えられる。


 ラケットを買うだけじゃなくて、ご飯食べに行けちゃったりする? 桜ちゃんは何が好きなのか気になるなー。なんなら私がお弁当作っていこうかな? いや、それはさすがにやりすぎかな・・・。ご飯食べ終わったら、洋服とか一緒に見たりして、私が桜ちゃんに似合いそうな服を選んで試着してもらうのもいいなぁ。桜ちゃんはシュッとしてるし、色々似合いそうだから楽しみ! それでちょっと疲れたらお洒落なカフェに入って休憩するのもいいよね。一緒にメニュー見てこれ美味しそーとか他愛のない会話をして、違う種類のケーキを頼んで半分こして『あーん』とかして照れてる桜ちゃんを見て可愛いーってなるのは必然! 私にもしてって言うけど、嫌ですよとか言いながらしてくれるんだろうなぁ。想像しただけでにやけちゃう。そのあとはプリクラ撮るのもいいよね。どんなポーズで撮るか悩んでる内に撮影始まって、変な顔で写ってしまったのを出来上がり見て笑ったりして。それでそれで、せっかくラケット買ったから公園でちょっと素振りやろっかって言って、ここはこうだよって手を握ったりして、もうキャーってなる気持ちを抑えながらちゃんと教えちゃう私超偉いから、やっぱり少しぐらい密着してもいいかな、なんてことを考えてたら桜ちゃんが困った感じで見つめてきてそこから二人は──。段々暗くなってきて、遅くなっちゃったし、夜は危ないから家まで送るよ、と言って桜ちゃんの家まで知れちゃうかも!? さすがにこれはないとは思うってゆうか、欲張りすぎかなーと思うけど、もしかしたら桜ちゃんがちょっと家に上がっていきますか? なんて聞いてくる可能性もあったりしちゃうかもしれない。次の日は日曜日だし、泊まっていきます? なんて言われたら絶対泊まる自信しかない! そしたらお風呂一緒にはいるのかな? でもまだ知り合って間もないのに、いきなり一緒にお風呂はまずいかな? 私は全然一緒に入っても構わないんだけどね。桜ちゃんの裸が見たいってわけじゃないんだよ? 湯船に一緒に入って、後ろから抱き締める形になっても冷静でいられる...わけないでしょ! あ、ヤバい。鼻血出そう。寝る時は一緒のベッドで寝て、気づいたら手を握り合って、見つめあって・・・。


 桜ちゃんが何か言ってるような気がしたけど、私はそれを無視して


「よし!」


「今週の休みに一緒に買いに行こう!」


 そう言って、一緒にデートに(ラケットを買いに)行くことを決意する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る