第3話 傍観者
「大丈夫?」
席に着くと委員長が話しかけてきた。晴れやかな気分だったのに最悪だ。
「大丈夫だと思ったから話しかけてきたんだろ」
冷たく言い放つ。
委員長は文武両道、容姿端麗で男女問わず人気ある女子だ。そして、校則はきちんと守ろうね、とか言ってくる真面目な優等生だ。そのくせ俺がいじめられていた時には一切話しかけてこなかった糞野郎だ。今さら話しかけてきやがって。偽善者め。
「ち、違っ、私は」
何が違うというのか。白々しい。普段優等生ぶってきれい事ばっか言っているくせに、肝心な時には助けにこない卑怯者だ。
「失せろ」
「その言い方はないんじゃないの!?」
俺を咎めてくる奴がいた。
「いじめを見て見ぬふりしてた奴が偉そうに説教すんな」
反論すると堺も言い返してくる。
「偉そうなのはあんたじゃない。そんな性格だからいじめられたんじゃないの!?」
瞬間俺は沸騰する。バッと立ち上がり、堺を蹴り飛ばす。堺はロッカーにぶつかり尻餅をつく。
「ッ、何すんのよ!!」
「あ? 蹴られるような性格してるのが悪いんだろ」
いじめられるような性格をしていたからいじめられた。蹴られるような性格をしていたから蹴られた。何もおかしいことはない。なのに、
「
今度は委員長が俺を咎めてくる。俺へのいじめは咎めなかったくせにだ。それはつまり、
「俺へのいじめはやりすぎじゃないってことか?」
青筋を立てながら質問する。
「そ、そういうわけじゃ……」
委員長はうつむく。何がそういうわけじゃ……だ。そう行動してんだろうが。
「いじめを見て見ぬふりしてきた奴が俺に偉そうに指図すんな、偽善者が。お前も殴り飛ばすぞ」
「ッ!」
胸ぐらを掴んで脅すと、委員長は押し黙る。
「それでいいんだよ。傍観者はずっと傍観者でいればいいんだ。しゃしゃり出てくんな」
委員長を突き飛ばす。
「……ごめん」
まるで被害者かのように席に戻っていく委員長と堺。席に着いた俺をクラスメイトたちが非難する目で見てくる。かわいい女子が蹴られたりしているのに文句の一つも言えないような奴らが何様のつもりで俺を非難するのか。腹が立つ。
だから俺は立ち上がり、一番強い怒りを俺に向けていたサッカー部主将遠藤の元へと向かった。
遠藤は運動神経抜群で容姿端麗、体育祭の時には、クラス一丸になって優勝目指そうぜ!とか言うタイプだ。つまり委員長と同類だ。そのくせいじめを見て見ぬふりする。今だって、おそらく委員長のことが好きなのに、喧嘩が怖くて俺に文句の一つも言えない臆病者だ。そのくせ遠くから偉そうに非難の目を向けてくるのだから苛つくことこの上ない。人を非難する前に自省しろよ。あ?と睨む。
「なんだよ」
遠藤は強気に睨み返してくるが、汗をかいている。強がっているのは一目瞭然だ。
フッ。
正拳突きを遠藤の顔面に寸止めする。一拍おいて拳圧で風が起こり、遠藤の髪が巻き上がる。と同時に遠藤が間抜けな声を上げる。
「うわあぁっ!!!」
驚き椅子ごと後ろに倒れる。
ハハハハ!
間抜けな遠藤を見て溜飲を下げた俺は清々しい気分で一時限目を受けた。
その後二時限目を受けていると、突如として生活指導の体育教師中村が入ってきた。そして俺は殴り飛ばされた。
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