捨て猫
雨の日の夜、家に帰る途中に猫がいた。段ボール箱の中に入っていて、雨よけもなく濡れているようだった。雨の日に不良が捨て猫に傘を差してやる、なんて聞いたことあるけれど、そもそも捨て猫自体あまり見たことがなかったので、珍しいなと私は思った。傘を差してあげたところで家では飼えないし、無責任に優しくしない方が良いだろうか。そう思っていると、ふと、違和感を覚えた。
私は今、遠目から猫を見ている。段ボールの中を覗き込まなくてもそれが猫だとわかったのは、その猫が段ボールから体を出してピンと背筋を伸ばしていたからだ。
そういえば昔から不思議だったのだ。雨の日に濡れた猫に傘を差すにしても、どうして猫は雨宿りもできない段ボール箱の中に居続けるのか。猫だって馬鹿ではないのだ、濡れて凍えるくらいなら屋根のあるところに普通行くはずだろうと。
猫は雨に濡れたまま段ボール箱の中で背筋を伸ばしている。
もう一つ、私は疑問に思う。今は夜だ。雨も降っていて視界も悪い。それなのに私は何故、アレをすぐに猫だと認識できたのか。
『アレ』は本当に猫なのだろうか?
そう考えた途端、段ボール箱の中の猫がすーっとこちら側を向いたような気がした。
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