路傍の魍魎
眠
電車内
電車に乗って窓の景色をぼんやりと眺めていると、ふと窓に映り込んだ人の数と車内の人の数が合わないことがある。空いてるはずの座席に人がいて、いないはずの場所に人が立っている。そういうとき、私は決まってそれらに気づいていないふりをする。得体の知れないものに関わるとろくなことはない。鏡のようにはっきりと映っているわけではないから、窓に映ったそれらの顔はいずれも暗くぼんやりとしている。けれど直視しないようにしていても、視界の端に入るその影は明らかに誰もいないはずの位置にいる。人なのかもわからない。ただ、それを確かめてはいけないという漠然とした予感だけがあった。
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