気になるアイツの心を読む。

花依だんご

心の周波数

 私、鳴山心実は、人の心が分かる。


 人は皆、心の周波数を持っている。言ってしまえば、自分専用のチャンネル。


 何故か、私はその周波数を変えることができ、そのチャンネルにお邪魔できてしまうのだ。


 そして今、私には気になる人が居た。


「……あいつ、一体何考えてるのかしら」


 私の前の席で、いつもぬぼーっとしている男子生徒、山田。マジで何を考えているかわからない。


 ここ最近、ずっと周波数を合わせようと試みているけど、未だ成功できたためしがない。他の人はあっさり聞こえたのに……


 ぐぬぬ、としばし奮闘していると、ザーザー、と何か音が聞こえてきた。


 よし、あとは微調整をして……


 やがて音が明瞭に聞こえ出し、私はついに山田のチャンネルに足を踏み入れる。


『タニシ』

「タニシ!?」

「おい鳴山、うるさいぞ」

「すみません!」


 言い忘れてたけど、一応今は授業中ね。数学の。


 っていうか、タニシって何!? あの田んぼにいる貝みたいなやつ? なんで数学の授業中にタニシのことなんて考えてる訳!? 意味わかんないですけど!?


とか思っていると、また声が聞こえてきた。


『どうやったら世界から戦争を無くすことが出来るのだろうか……』


 めちゃくちゃ崇高な考えしてて草。


 ……じゃなくて、何で戦争平和の話!? 確かに戦争の無くし方は気になるけれどさ。それ今!? 授業に集中しなよ!?


 ……って私、人のこと言えないじゃん。


 いやいや、これは山田が変なことばっかり考えてるのが悪い。タニシだの戦争平和だの、訳が分からない。


 ……タニシから平和の話って、ちょっと飛躍しすぎじゃない?


『ギガンティック米俵』

「ぶふっ」

「鳴山! 2回目だぞ!」

「す、すみません!」


 く、悔しい。つい吹き出してしまった。何だよギガンティック米俵って! 想像しちゃったよ、ビルくらいある米俵!


 一人で百面相していたせいか、めちゃくちゃ疲れた。何というか、心がぐったりしている。


 そろそろ山田のチャンネルを切ろうと思ったその時、山田が何かに気づいたように声を上げた。


『あ、』


 今度はなに?


『レオナルド・ディカプリオとNEOファクト芝生理論で韻が踏める……』

「ぷふ、ぐふっ、あはははは、ぷくく……」

「鳴山ぁああ!!」

「ご、ごごご、ごめんなさいっ!!」


 やば、ついに先生がブチギレた。


 すると、また山田の心の声が聞こえてきた。


『ふふふ……そんなに笑ってくれて嬉しいよ』

「こいつ……!」


 どうやら心を読まれていたのは、私の方だったらしい。

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気になるアイツの心を読む。 花依だんご @Hana_dango333

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