第49話「逃れられないゲーム」

「お兄ちゃん……眠いです……」


「俺だって眠いよ、そもそもガチャチケットが欲しいって言ったのはお前だろう?」


 今回のこのゲームで開催されたキャンペーンはいつものものとは一線を画していた。その内容とは……


「ああ! 画面をタッチしても動かない!」


「ボタンを使うんだよ、いい加減慣れろよ」


 全員に配布された旧世代のゲーム機を使用してのスコアアタックだ。ゲーム内でレトロゲームの機械をエミュレーションしてそのゲームでのスコアアタックをすることになっている。


 モバイルデバイスの大半がタッチパネルになった時代に古式ゆかしいボタンを使って操作するゲーム機だ。バーチャルパッドなどといった柔なものではない、本物の物理的なボタンを操作してプレイすることになる。


 この時代のゲーム機をプレイヤー人数分も集めるのは不可能なのでVRMMOならではの企画と言えるのだが、いかんせん高速な処理とヌルヌル動く画面になれた世代の俺たちには、敵が五体も出れば処理落ちをして、目で追えるほどカクカクと動く追従性の悪い液晶は苦行とさえ言えた。


 細々としたところが行き届いていないゲーム機だ。昔の子供達はこれを喜々として遊んだのだろう。遙か次世代機では物理部分含めてのエミュレーションが可能だったが、性能が低い部分まで真似しなくていいと、もっぱら言われていた。


「ていうかなんで他の皆さんが不参加なんですか!」


「皆この世代のゲーム機に今さら慣れるのは無理って言ってたよ」


「どんだけ嫌われてんですか!?」


「さっきタッチパネルじゃないことにキレていたお前が言うなよ……」


 十字キーを細々と操作しながら敵を倒していく、シンプルなシューティングゲームだった。一時流行ったという弾幕シューティングゲームほど弾を処理出来ないので、敵弾がまっすぐ高速にこちらに向かって飛んでくる。弾数は多くないが敵のエイム力が強いのでなかなか難しい。


「あー! またゲームオーバー! ボムもないってなんなんですか!」


「昔のゲームはそういう甘えを許さなかったらしいぞ……とか言っている間にクリアっと」


「お兄ちゃん!? これをクリアしたんですか!?」


「ああ、慣れると案外なんとかなるぞ」


 俺もさすがに妹と一緒に一日プレイしていれば慣れてしまった。そして俺がメインでスコアを稼いでいき、フォーレの方はゲーム機をにらみつけながら操作していた。


 結局、クリアをできたのは俺だけだったのだが、そもそもこの企画への参加者が少なかったおかげで、ギルドのランクで結構な上位につけ、全員に十連分のチケットが、俺には百連分のチケットが追加で配布されたのだった。

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