第47話「エミュ鯖訴訟事件」
「ギルマス、平和ですねえ……」
「平和だなあ……」
俺と妹の会話にマクスウェルが割って入ってきた。
「あんた達ねえ、現実に目を向けなさいよ」
そう言って『お知らせウインドウ』を開いて俺たちにも見えるように可視モードにしてこちらに向ける。そこにはこう書いてあった。
『弊社サービスのクローンを提供している業者への訴訟の件』
「マクスウェル、俺たちはちゃんと金を払ってサービスを受けているんだから関係ないだろう?」
「マクスちゃん、細かいですよ」
「私が悪いわけ!? これで大騒ぎになってるのを知らないわけないでしょう!」
エミュ鯖、要するにサーバのプログラムをコピーして本家と同じサービスを、ガチャ石のレートを下げるなどして運営しているサーバだ、もちろん違法である。
「まあそう言う阿漕な商売をする奴だって出てくるだろ、人気ゲームだしな」
「私の入っているボイチャサーバがこの事件で崩壊したんだけど……」
「マクスちゃんもわざわざ危険な場所に踏み入れなくてもいいでしょうに……」
「私は悪くないわよ! 普通ゲームのサーバにエミュ鯖プレイヤーが入っているなんて思わないでしょ!」
まあそれはそうだ、民度が高いゲームならそもそもエミュ鯖など出さないからな。存在を許されないものが存在していることがおかしいんだ。
「エミュ鯖なんてリスクの塊な物をなんで使うんだろうな」
「無茶ですよねー……訴えられたらプレイデータごと消し飛ぶのは確定でしょうに……」
世の中には向こう見ずな無鉄砲がいると言うことだ。
「ボイチャサーバにエミュ鯖ユーザが入るのは勘弁して欲しいわね。迷惑極まりないわよ。しかもこの訴訟が発表された時点でキレ散らかすザマよ」
「レート下げてるとは言え課金してるんですもんね、おじゃんになればキレるのも無理ないですよ。悪いもんは悪いと思いますけど」
「そう言って効く連中なんていないわよ。そんな正論を聞くなら始めから正規サーバを使ってるでしょうね」
「辛いですねえ……」
悪人に正論が聞くなどと思っているならそれは幻想に過ぎない。正論で引くなら端っからエミュ鯖などに手を出さない。
「昔からある問題みたいですけどねえ……運営がサーバのプログラムをお漏らししたのがよくないんじゃないかと思うんですがね」
「フォーレ、昔世界最大シェアを誇っていたOSのソースコードが流出したんだぞ? 完璧に隠すことなんて不可能なんだよ」
「「「コミュニティはもうちょっと管理して欲しいな……」」」
三人の言葉は一緒だった。
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