第24話「アバター配布」
今日は男女ともに同じ格好をした奴が多い。理由はVtuberとのコラボで期間内にログインすればそのアバターを誰でももらえるからだ。
「見てくださいお兄ちゃん! なかなか可愛いでしょう? そそりますか?」
「はいはい可愛い可愛い」
妹がそんなことを俺に言ってくる。まあ可愛いんじゃないか? 人気配信者だしな。
「いつものお前の方が可愛いとは思うけどな」
俺の言葉に妹は顔を真っ赤にした。そんなところまでトレースできるこのゲームは力の入れどころを間違っているのではないだろうか?
「そこの二人! 私が奢ったんだから飲みなさいよ」
マクスウェルの言葉で皆ギルドハウスのテーブルに着く。今日は自称社会人のマクスウェルの奢りでビールを購入してみんなで飲んでいる。一応社会人を自称しているだけはあってしっかりと金は持っているようだ。なお、全員同じアバターを着ているので頭の上に表示されている名前が無いと誰が誰だか分からない状態になっている。
「かんぱーい!」
皆で酒を飲んでいるが、俺とメアリーは仮想アルコール機能はオフにしている。ヴィルトは珍しく酔っているようだ。当然だが妹はアルコール機能を有効にしているのですっかり酔っている。先ほどの発言も酔っぱらってのことではないのかと思っている。
「いやー、しかし見事に皆同じ顔ね」
「そのうち有償課金でのスキンにするって噂ですしね、無料の時にもらっておかないと」
「しかし町中もこの格好で歩いている人ばかりというのはなんとも不気味でしたね」
「人は期間限定に弱いし、新しい物好きが多いですからね」
「それにしたって多様性は無いのかって話よ? 横を向いても後ろを向いてもドッペルゲンガーがいるような気分よ」
緑髪のツインテに近未来的な服、それをこのゲームの世界間に無理矢理会わせたようなアレンジをしている。決して悪くはないのだが使っている人数が多いので個性的なアバターも没個性になってしまっている。
ヴィルトは会計を済ませて町に出たら驚いたそうだ。
「驚いたわね、見事に皆同じ格好をしているんだから。それでもわざわざアクセサリをつけるあたり目立ちたい人が多いんでしょうね」
「なんとかの欲求段階なんてものもあるしな、流行には乗りたいけど目立ちたいっていう贅沢な人が多いんだろ」
「フォーレとかはアバターそのままでアクセサリも無しよね? 何か理由はあるの?」
妹は恥ずかしそうに答えた。
「ただ単にお金が無いだけです……一応私は社会人では無いですからね」
誰がなんの職に就いているかなど些末なことだが、経済格差ばかりはどうにもならない」
「あっ(察し)」
「なんですかマクスちゃん! その何かを察したような顔は!」
「私はたとえニートでも立派な生き方だと思ってるわよ? 私は差別しないからね」
「ニートじゃないです!」
「そうね、フォーレちゃんはがんばってるわね、お酒、たまにしか飲めないでしょ? 私が奢ったげるからもっと飲みなさい」
そう言ってマクスウェルはウインドウを開いてビールケースのアイコンをタッチした。チャリンという音で課金の完了を知らせて、ビールの追加がテーブルの上に現れた。
「マクスちゃんナイス! 酒を奢ってもらえるならニート扱いされてもいいよ!」
お前にプライドはないのか……? そう言ってやりたかったものの、ガブガブ飲んでいるので、もはや言葉はろくに覚えていないであろうデータ量が妹の脳に送られているだろう。
「フォーレちゃん、もう少しプライドを持った方がいいわよ?」
「プライドでお腹は膨れませんからね!」
良い笑顔でそう言うフォーレに優しい目を向けながらマクスウェルはこちらに話を向けてきた。
「ギルマスも仮想アルコールを有効にしたら? せっかくみんなで飲んでるのよ?」
「いや、俺はギルマスとして酔うわけには……」
「堅いわねえ……まあいいわ、メアリーも酔わない設定にしてるでしょ? あなたも飲んだらどう?」
ナチュラルにアルハラをするマクスウェル。さすがに俺求めに入ろうとしたところでメアリーは『飲みます!』と言った。
ぐびぐびと飲み干すと次から次へと缶を開けていくメアリー、マクスウェルも不味かったかなという顔になった。
「あの……程々にね?」
「らいじょーふれすよー! わらしはよっぱらっらりしませんよ!」
飲み始めて僅かな時間でメアリーは酔っぱらってしまった。どうやらメアリーはこのゲームで精神耐性が低いようだ。俺はコイツを正気度に関わるクエストには出来るだけ参加させないようにしようと決めた。
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