第23話「ウィークリークエストの成功」
「みんな! よくやってくれた! おかげで今週もギルドのウィークリークエストは成功した」
「私のおかげですよね!」
「フォーレちゃんはあまりがんばってないでしょ。私やファラデーがかなりの部分をこなしたわよ。ミスリル鉱石の納品とか本当に面倒だったのよ?」
フォーレに対してマクスウェルはつれない返事をする。
「それを言ったらヴィルトさんやギルマスだってあまり貢献してないじゃないですか?」
俺がフォーレを小突いた。
「俺もヴィルトもギルドの事務処理をやってたんだよ。俺はともかく仲間を悪く言うな」
「私も少し貢献してないかなとは思ったんですが……フォーレちゃんももう少し優しくても……」
フォーレは渋々言葉を取り消して乾杯する運びになった。というか俺のギルドの報告書からすればフォーレも極端に貢献度が高いわけではないのだが、その自身はどこからやってくるのだろうか?
「じゃ、気を取り直して……乾杯!」
皆一斉にグラスを上げ、酒を飲んでいった。皆仮想アルコールの設定を有効にしているらしく、二、三杯飲むと早いやつはもう酔い始めていた。
「今週もギルドクエストが上手くいって何よりだよ! でもだんだんウィークリーの難易度が上がってない? 運営もひどいことするよねー? 初期なんてトカゲの皮一ダースで納品は終わってたんだよ?」
メアリーがそう愚痴る、インフレはネトゲではいつものことではある。しかしその増え方がいくら何でも早すぎではないかと言うわけだ。
「皆軽くクリアしちゃうとボーナスのガチャチケットが配布されるからな、その辺は絞っておかないと金にならないんだろう」
マクスウェルはそれを聞いて不満そうだった。
「言いたいことは分かるんだけどねえ……月額課金だってしっかりお金を取ってるわけじゃない? それ以上のものを搾り取ろうとする姿勢は気に食わないのよね」
俺はなんとかその場を納めたかったのだが運営を擁護する言葉が思いつかなかった。正直なところを言えば俺も運営はがめついなと思ってはいるし、ガチャに頼った運営がいいことだとは思えない。しかしまあしょうがないことだと割り切っているだけだ。言い換えれば運営については諦めているともいっていいだろう。
「ギルマスは欲が無さ過ぎますって! 運営が調子に乗っちゃいますよ?」
「フォーレ、気が合うわね、珍しくあなたの意見に同意だわ」
マクスウェルまで同意してグダグダになりつつあった。俺は仮想アルコール機能を有効にしているであろう妹とマクスウェルのコップにどんどんビールを注いだ。これくらいしか黙らせる方法を思いつかなかった。
「ギルマス、気が利くわね」
「マクスちゃん! 一緒に運営の愚痴で盛り上がりましょう!」
「そうね、たまにはそんな話もいいのかもね」
こうして妹とマクスウェルは運営への陰口で盛り上がることになった。俺は仮想アルコールを弱設定にして一杯ビールを飲んだ。データが脳内に流れ込んでくる。本物のビールを飲んだことは無いがこういう感覚を楽しいと思えるのだろうか?
「ギルマス、珍しく飲んでますね?」
メアリーがそう言う、俺は少しぼんやりした頭で答える。
「ああ、今日はもうクエストの心配をする必要が無いからな、気楽なものだよ」
「マスターには感謝してますよ、私でもギルドに入れてくれたんですからね」
そういえばメアリーはソロで活動していたんだったな。
「気にするな、持ちつ持たれつってやつだよ」
彼女はにっこり笑って俺に頭を下げた。
「それでも随分助けられましたよ」
こうしてギルドのクエスト達成を祝う宴会は進んでいった。
「さて、そろそろ自由に解散を……」
「え~……もう少し飲みましょうよー!」
「そうね、ギルマスは少しお堅すぎるわね、もっと宴を楽しむくらいの気概はあってもいいんじゃないかしらね?」
「お前ら二人で盛り上がってるならそのまま飲んでればいいだろ? 別にギルドから出てけって言ってるわけじゃないんだからさ」
「堅いですねえ……」
「融通が利かないわね」
「はいはい、俺の悪口は言ってもいいから! 明日のこともあるし、今日の打ち上げはここまで!」
俺が最後にログアウトしたのだが、やはりマクスウェルと妹が最後までログインしていた。
マクスウェルが翌日平気だったのかは知るよしもないが、妹については俺がたたき起こさないと眠り続ける程度には夜更かしをしたようだった。
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