第22話「ベータテスト(有償)」
その日、プリミアの広場には大量のユーザが集合していた。俺はそんな様を遠巻きに見ている。何故見ているかって? 妹がデモに参加してるからだよ!
「ユーザはテスターじゃないぞー!」
「「「「「「「「「「ユーザはテスターじゃないぞー!」」」」」」」」」」
スローガンを掲げて広場に居座っている連中を見ていると頭が痛くなってくる。
原因にして全ての始まりは昨日のアップデート、ゲーム中にゲーム内のミニゲームとして麻雀が実装されたときだった。このゲーム、一プレイ十円としっかり課金をしていくのだがはっきり言ってクソゲーだった。とにかくバグが多いのだ。順番を無視して鳴いたり、手配が多牌になるなど当たり前、フリテンでも上がれる、ドラのみで役として成立するなどとにかくバグ満載のゲームだった。これが無料のミニゲームだったらここまで炎上はしなかっただろう。運営は何を血迷ったのか、これを課金ゲームとして実装してしまったのだ。
このゲームの小狡いところはVRMMOをプレイしながら携帯端末の操作ができないというところにある。携帯端末には無償の麻雀ゲームなど山ほどある。しかしノンリアルファンタジーオンラインをプレイしている途中ではそれらがプレイできないのだ。そこでゲーム内にミニゲームとして実装してしまおうという発想『だけ』は良かったのだが、いかんせん出来た物が出来たもので、しかも有償となったので大炎上する運びとなった。
「ユーザにデバッグをさせるなー!」
「「「「「ユーザにデバッグをさせるなー!」」」」」
デモは進んでいく。運営もさすがに今回のことは失態だと思ったのかこれにGMを介入させるような真似はしていない。この集団をBANしたら今までに無いほど炎上する上、デモに参加しているのがヘビーユーザーなので安易な対応は出来ないという悲惨な事態に成り果ててしまっている。その結果がこの野良のデモ集団だ。
デモといってもこれといって何か特別なことを出来るシステムは実装されていないので集団で座り込んでいるだけだ。精々所々に『運営は反省しろ』と装飾された装備を持って座り込んでいるやつくらいが自己主張をしている僅かな民だ。
俺はフォーレに直通チャットを開く。
「なあ……そろそろ上がりにしない? 運営がそう言うの聞かないのは皆百も承知だと思うぞ?」
「だからこそ運営を調子に乗らせてはいけないのではないでしょうか? 私は課金したんですよ!」
お前……プレイしたのかよ……
「しかも初回は初めの局で天和が出たんですよ! もちろん私以外に! 運ゲーでそんな事故が起きないように実装することさえもやらなかったんですよ! 私が即箱になって十円損したときの気持ちがお兄ちゃんに理解出来るんですか!」
「十円くらい我慢しろよ……勝負は時の運だろうが……」
いや、腹が立つ気持ちも分からなくもないけどさあ……絶対に天和が起こらない運ゲーというのもまた平等に歪なものだと思うぞ?
「私は運営が態度を改めるまで動きませんよ!」
「もうやめてくれるならガチャチケット一枚やるぞ」
俺は奥の手を出した。この前配布されたガチャチケットを保管していた。こういう時に通貨代わりに使える便利なものだ。
「さあお兄ちゃん! ガチャを引きに行きましょうか!」
変わり身の早い妹をガチャ広場に連れて行くのはそう難しいことではなかった。
後日、麻雀の無料化とプレイした人には支払った金額分の詫び石ということでこの件は決着がついたのだった。
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