第4話 鈴蘭姫と薔薇の出会い


 薔薇の屋敷に来て、1日目の夜が終わろうとしている。今日は、色々あって疲れた。明日に備えてそろそろ寝ようと準備した。


 すると、私が泊める部屋のドアがノックされた。急いでドアに向かってドアを開けたら、『彼岸花』のリリーさんがドアの前に立っていた。




「突然ごめんねぇ。リィーシャちゃんって呼んでいい?ちょっとリィーシャちゃんに聞きたいことがあってぇ」


「はい。私で良ければ聞きますよ。あと、リリーさんって呼んでもいいですか?」


「リィーシャちゃん、可愛いぃ。じゃあ、リィーシャちゃんと、ロズの出会いについて聞きたいのよ。あの子全然話さないからぁ」


「私で良ければ」


「ありがとう」


「そうですね。あれは、私の小さい頃でした」




 私は、リリーさんに『薔薇』と出会った時を思い返す。


 𓍯*

 𓍯**

 𓍯***


 私と薔薇が出会ったのは、私がまだ4歳の頃。場所は、家の近所の原っぱ。そこでは、時々お茶会に見立てたままごとをやっていた。


 そんなある日、私と幼なじみのサンドを含めた5人でままごとをやった。しばらくままごとをやっていると、やがて飽きてかくれんぼが始まった。


 私がちょうど良さそうな茂みの中に入り、少ししたあと、私より少し年上の男の子と、恰幅のいいおじさんが、私の入った茂み近くにやってきた。


 すると、おじさんが男の子に鈴蘭を食べさせようと、奮闘し始めた。当然、私も男の子もびっくりする。男の子は、必死に抵抗していた。


 私は、茂みの中で観察していた。が、そんなことを続ける訳にはいかない。私は、茂みの中から出てきて、おじさんに体当たりをした。


 男の子もおじさんもびっくりしていたが、おじさんは、体当たりをした私の事が気に食わなかったようで、私の口に無理やり鈴蘭を突っ込んだ。


 その後、私の体は激しく痙攣した。体に電気が通ったようにビリビリしていた。寒気もするし、頭が割れそうな程痛かった。


 おじさんは、最初笑っていたけれど、段々と怖くなってきたのか、私と男の子を置いて走り去って行った。


 男の子が、その様子を見て、私の背中をさすったり、大きな声で助けを呼んでいた。


 私は、頭にピリっと電気みたいな痺れがとおった後、倒れてしまった。そこから、記憶がない。


 その翌日から、私の2つ名は『鈴蘭姫』になった。その頃から、私は、他の人達と少し距離を感じるようになった。


 学院に入ったら、『夾竹桃キョウチクトウ』と言う2つ名の人にいじめられはじめた。


 全ては、『鈴蘭』のせいで。別に鈴蘭自体はそこまで憎んでいない。でも、時々思う。『あの時助けを呼べば、私は鈴蘭を食べなかったのかな?』と。


 鈴蘭のせいで、私の血は少し変わってしまった。鈴蘭の毒まみれの血に。


 𓍯***

 𓍯**

 𓍯*


「と、これが全部です」


「そんな重要な事なんであの子は話さないのよ?全く、話してくれてもいいのに」


「分からないです」


「リィーシャちゃん、あの子が報告しない可能性があるから、報告をしてくれる?」


「分かりました」


「あと、危ない事に足突っ込まない!あなた、小さかったから他に何かあってもおかしくないし、最悪の場合死んでいたかもしれないわよ!無茶はしない事を約束して。お願い」


「リリーさん……」




 私の事を家族以外が心配するなんて、初めてだった。それだけ、私の事が大切に思えたのだろう。だったら、答えは1つ。




「分かりました」


「ありがとう。……それにしても、一体どこの誰があの子に毒を盛ろうとしたのかしら?」


「すみません、そこまでは分かりません」


「そうよねぇ。そういえば、寝る準備が整っていると言うことは、リィーシャちゃん寝るんじゃないの?」


「はい。寝ます」


「いっけない!私、リィーシャちゃんの睡眠邪魔する所だった!じゃあ、お休みなさい」


「お休みなさい」




 私が寝る準備を済ませている事に気がついたリリーさんは、私が借りている部屋を出ていった。


 私は、そのままベッドの上で眠った。快適だった。疲れていたのか、すぐに眠れた。明日も、いい日になるかなぁ。

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