第3話 薔薇の家族


「自己紹介を忘れる所だった。僕は、『薔薇』の2つ名を持つロズワード・ハルレーシェだ。よろしく」


「私は、『鈴蘭姫』の2つ名持ちのリィーシャ・バリーです。よろしくお願いします」


「リィーシャって呼んでいい?僕の事も、ロズワードって呼んでいいから」




 私達の世界『フラーシェロン』は、特別な決まりがある。それは、『花』に関係する2つ名を決める事だ。なぜ、このような決まりがあるかと言うと、この世界の創造神である『フラーシェロン』様が決めた決まり事だった。


 私達の世界は、今は宗教にそこまでのめり込んでいる人がいない。教会なんてものはないし、宗教の必需品なんてものは販売されていない。なんなら、破棄された。でも、この文化は、色濃く受け継がれている。


 その理由は、『フラーシェロン』様が導いているのか、自分や自分の家族がつけないと決めても最終的には、周りも自分の家族も自分も2つ名を認めている。しかも、2つ名が最初から決められていたかのように記憶が飛んでいるらしい。


 フラーシェロン様は、少し自分の言う事を聞かせたい時があるらしい。フラーシェロン様は、花が好きだから、世界の住民の言う事を聞くために、2つ名をつけると言う事をお願いしたらしい。世界の住民は、フラーシェロン様の言う事を快く了承したようだ。


 ちなみに、フラーシェロン様は、住民の2つ名を普段名乗るようにしている。しかし、相手が名前を聞いてきたら、『2つ名』ではなく、『名前』で呼んでいい。


 その決まり事があるから、私が『夾竹桃キョウチクトウ』の事を名前で呼ばないのに、『サンド』を名前で呼ぶのはそういう事だ。そして、今『薔薇』が自己紹介をしたので、『薔薇』と呼ぶのは、失礼にあたる。




「ハルレーシェ様でも良いような気がします」




 そう私が言ったら、『薔薇』はちょっと拗ねてしまった。まるで、名前で呼んで欲しいと言わんばかりに。




「ハルレーシェだと、家には2人いるから、やめてほしい」


「?」


「ロズー、『鈴蘭姫』ちゃんがそろそろくるんじゃない?早く話を打ち切ってー」


「今、話しているよ。早く来てよ」


「えっ、来てるの?早く言ってよ!」




 そう話声が聞こえたと思ったら、ドタドタと急ぐ足音が、玄関の方に近づいてきている。息を切らしながら、切れ長の大きな目をした美人がやってきた。




「『鈴蘭姫』ちゃん、私はロズの姉の『彼岸花』のリリー・ハルレーシェよ。よろしくね」


「お嬢様、突然走ってどうなさったのですか?……なるほど。私は、お嬢様と当主様の護衛『金木犀』のオリナーレ・レダーです。よろしくお願いします、『鈴蘭姫』さん」


「『鈴蘭姫』のリィーシャ・バリーです。よろしくお願いします」




 どうやら、『薔薇』の1家で過ごす日々は、騒がしくなりそうだった。

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