第5話
今日はすっとこの世界に来れたな。実は未だにどういう条件でここに来るのかはっきりとはわかってない。現実の俺に何か起こると俺はこの世界に来るらしい。他のみんなは何があったのか知ってると思うけど教えてくれない。あのみなみですら教えてくれないのだから相当。あいつら自身は俺から生まれたとかなんとか言ってたっけ。もともとの俺の一部、それがここにいるみんなの正体。でももともともくそも俺は今までの記憶ちゃんと持ってる。あ、でもここに来る直前の記憶だけないや。そんなことを思いながら自分の部屋を出た。
「ちょっと待って!」
隣のみなみの部屋のドアが開いておりみなみの声が響いた。
「やっだよー。早くママ来てよ」
元気な女の子の声がドタバタと足音とともに聞こえる。
「私はママじゃないってば」
みなみの反論する声も聞こえてきた。
気になってみなみの部屋を覗こうと近づいた。すると、メルヘンのような淡い水色のTシャツを着た女の子が飛び出してきた。
「あ!おじいちゃん!」
俺の方を見て少女というかどっちかというと幼女が言う。
俺はまだ十代なのでそんなことを言われる謂れはない。
みなみのことをママと呼ぶのならみなみとは兄妹みたいなものだから、せめておじさんくらいにしてほしい。いや、おじさんも嫌だけど。おじいちゃんよりはマシ。あわよくば、お兄ちゃんと呼んでほしい。
「お兄ちゃんかせめて崇って呼んでくれないか?」
こう言うことでおじいちゃんもおじさんも呼ばせない作戦だ。さあどう出る。
「いや」
彼女は冷たい表情と声ではっきりと言い切った。
「だっておじいちゃんはおじいちゃんだし…」
「だからおじいちゃんは止めろ!」
彼女の目に溢れんばかりの水滴が溜まっていく。今にも泣いてしまいそうだ。
強く言うつもりは全くなかった。反射的にカッとなってしまった。
「崇!何子ども泣かせてるの?」
みなみの部屋からみなみが出てきた。
彼女の顔はやはり怒っていた。
「あ、いや、そういうつもりじゃ…。っていうかこの子誰なんだよ」
「いや、私もわかんない」
わかんないのかよっ!っとツッコミたくなったがさっきのこともある。辞めた。
「あなたの名前はなあに?」
「すいの名前はすいだよ?ママ」
やはり、みなみをママと呼んでいたのはこの子だったようだ。
「すいは何でみなみのことをママって呼んでるんだ?」
「だって、ママはすいのママだから」
俺は視線をすいからみなみへと移した。
「みなみ、説明しろ」
みなみは戸惑っているように感じた。
「何があったか順番に説明してくれ」
俺は再度、みなみに何があったのかを言い方を変えて訊いた。
どうやら、こういうことだったらしい。
朝起きたみなみはベッドにから出るときに身体の上に違和感があった。何かが巻き付いているようなそんな感覚が。布団をめくるとこの女の子がみなみに抱きついて寝ていた。昨夜、就寝時にベッドにいたわけではないらしいので寝ている間にこの子が潜り込んできたのではないかというのがみなみの見解だ。だが、この子がママと呼ぶことと一体何者なのかはみなみの話を聞いただけではわかりそうにもなかった。
「おーい!朝飯できたぞー!」
下のダイニングキッチンの方から賢哉の声が聞こえてきた。
というか賢哉たちすいのこと知らないんじゃ?そう思って下を見るとテーブルには五人分の朝食が並べられていた。賢哉のやつ一連の騒ぎをしれっと聞きながら朝飯作ってたな。
下に降りる三人。降りるやいなや、すいがテーブルの一人席つまりお誕生日席へと駆け座った。
「すいの分もある!ありがとう!おじさん!いただきます!」
ちゃんと大きな声でいただきますって言うなんて礼儀正しいなこの子。いや、そうじゃない。賢哉のことおじさんって言わなかったか?そう思って賢哉を見ると苦笑いしながら。
「おかわりもあるからなー」
「はーい!」
元気な声で返事をするすいに周りはかわいいと思いながらもなんともいえない雰囲気になっていた。
軽く道具を洗い終わった賢哉は俺のほうに来て耳打ちをしてきた。
「あの子何なんだよ?」
「俺に訊かれてもなぁー。名前はすいということとみなみをママ、お前をおじさん、俺をおじいちゃんと呼んだことくらいだ」
賢哉は頷きながら、少し考えているようだった。
「なるほどねー。そうゆうことかー」
「な、わかったのかよお前」
「まあねー。でもまだ教えない」
「なんでだよ」
「そりゃ、面白いからに決まってんだろ。それとこの話聞いたら亜耶もわかるんじゃないか?精々頑張ってくれ」
なんなんだよコイツ。腹立つなぁ。とりあえず朝飯食い終わったら亜耶に訊いてみるか。
遅れてダイニングに来た亜耶。
「みんな早いのね。ん?その子は?」
亜耶の疑問に俺が答える前にみなみが答えた。
「すいちゃんっていうんだって!めっちゃかわいくない?」
「そうね」
みなみの解答はほぼスルーされていた。
「あとで詳しく話すよ」
すかさず俺は亜耶に一言、言った。
「そう」
これもなんか流されたような感じがしたがまあいいだろう。とそこで。
「おかわり!」
すいの大きな声がこの空間に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます