お薬
鬼灯
お薬
ゴホッゴホッ
狭い部屋の中で咳の音が響き渡る。
また、いつものように僕は熱を出してしまった。
また、ママに迷惑かけてしまう…頭がそれでいっぱいだった……
僕のママはいつもお仕事で忙しい…だから毎晩遅くに帰ってくる。
僕のお家にはパパがいない…そのせいでママは忙しいんだって毎日言ってる…だから僕は毎日一人……最初はママも一緒にいてくれたんだけど……忙しくて、ママは最近仕事の方に行っちゃうんだ…
本当はママに家にいてほしいんだけどお仕事があるし……お仕事はしょうがないことだから…
それに帰ってくると毎日ママは疲れた顔してるから我儘言えないや…
でも大丈夫!
そんな僕には強い味方【お薬】がある。ママがくれたんだ!「辛い時にいっぱい飲みなさい」ってママがいったから、それから頑張って飲んでんだ。これで一人でも大丈夫!強い体になるためにも早く元気にならないといけないから頑張っているんだ!ママの為にも早く元気になりたいや!
僕はママが作ってくれたお粥をいっぱい食べて、いっぱい薬を飲んで、ベットに横になった。ママが言ってたんだけど“いっぱい”って効果がとってもあるんだって!だからママが薬をくれた時、いっぱい飲みなさいと言ってた……早く体調治すのにもうってつけなんだってね。
……でも、お薬呑み込む時は嫌ー。だって美味しくないもん。それになんか呑み込む感じがいや…
………ちょっと前までベットの上でゴロゴロしてたけどだんだん退屈になってきちゃった……元気になってきたから暇になってきちゃった…部屋に一人きりでいるのはつまんない……それに、怖いし寂しいや…
やっぱり、一人は辛いや……
ママ早く帰ってこないかな…
ママが早く帰ってくることを考えていると、ウトウトとしてきて、だんだん眠くなってきちゃった……
そう言えば、フクサヨウ?って言うのがあるってママ言ってたや……眠くなるのかな?それって……そんな力があるなんて……
「やっぱり…おく…….すり…すごい。」
「あれ?もう夜だ…遅くまで寝ちゃったな。」
起きるともう外は真っ暗…
「えっと、時計…今は11時か…トイレ行きたくなっちゃった。」
でも、部屋の外暗くて怖いんだよね。
頑張ってトイレに行こう…
僕はゆっくりトイレに向かった。だってお化けとかいたら嫌じゃん。
トイレに着くと隣の部屋に電気がついていた…
しかもちょっと扉開いてる…
あれ、ママにいつも入るなって言われてる部屋が開いてる…ママ帰って来たのかなぁ…
そっと扉の隙間から覗いてみるとママがいた。
ママがテーブルでよく飲む大人の飲み物を飲みながら何か喋ってる。小さな声だからよく聞こえないから僕は耳を澄ました。
「あの子が……あいつがいるから、わたしは不自由なのよ……望んでたわけじゃないのに勝手に生まれやがって…しかも、病弱…本当疫病神ね。
薬……渡してっけど中々死なないわね…あの薬を買った私も私だけど……詐欺だったのかしら…
ったく早く、くたばってほしわ…
お前のせいで、こっちは寝れねーっつーの…」
そう言うと、ママは棚の所に移動して僕と同じ丸いお薬を一粒飲んだ。
そして、また大人の飲み物を飲んでたけどテーブルで寝ちゃった…
そっか……
「ママ眠れないんだ…じゃあ、僕も協力するぞー!」
僕に考えがあるんだ〜。
僕、ママの役にたてるかな?
朝になってママが起きてきた…
今日は珍しく僕の方が早く起きれた。
「ママおはよう〜。」
「………おはよ……早くお茶寄越してくんない?」
寝起きのママはいっつも機嫌が悪い…いつもは何で機嫌が悪いのか分からなかったけど…今ならわかるよ。いつも頑張ってるママに僕からのサプライズ!
「うん!いつも通り用意したよ!今日はスペシャルなやつにしたんだ!」
いつもより、もっともっと僕の愛情もたっぷり込めてコップに注いだんだ〜。
「そんなのどうでも良いから早くちょうだい…」
イライラしてるか、ママは僕の手にあったお茶をひったくるようにとった。
ママはお仕事で疲れてるから、しょうがないよね…でも大丈夫効果いっぱいだから、ママに効くぞ〜!
ママはそのままお茶を一気飲みした。
いい飲みっぷり!
「ねぇママお薬飲めた?」
だっていっぱいが、いいんでしょ?
だからねいっぱいお茶にお薬入れたんだ!
そしたらママもフクサヨウの力で寝れて元気になるでしょ?
僕って頭いい!何で今まで思いつかなかったんだろう…もっと早く思いつけば良かったのに……
まぁいいや!僕からの、サプライズ
ママいつもありがとう!
お薬 鬼灯 @Hiizumi
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