4章:裏切りと救い

私は人生最大の裏切りにあった。

「光羽と雄大、付き合ってるんだって」

学年中に、その事実が広まってしまった。

なんで?私は誰にも言っていない。

まさか、雄大が?どうして?

しかし、雄大も周りから冷やかされている。

「お前、光羽と付き合ってるんだっけ?」

私も、ウザい男子から雄大の名前を連呼される始末。

私の姿を見た瞬間ー。

「雄大!雄大!」

呼ばれた雄大が近くにきて、私と目が合う。そして周りから冷やかされる悪循環。

雄大と同じクラスである香織から、心配されてしまった。

「アイツホントウザいよね」

アイツとは、私と雄大を冷やかした男子の事だろう。

実は小6の1学期、香織には仲の良かった男子がいた。

その人と両思いだったのは、周りから見ても一目瞭然だった。

すると、このウザい男子は大声で

「香織、琉斗のこと好きなんだろー?」

と叫んだ。

香織は「別に好きじゃないし」と言い返したものの、これがきっかけで2人はギクシャクしてしまい、話せなくなってしまったのだ。

「ホントアイツは、ヤバイよ」

さっきから同じことを繰り返し言っている。

今回の事で、香織にも雄大と付き合っている事が知られてしまった。

でも彼女は何も追求してこなかった。

他にも変化があった。

「うわ、また来た」

「ホント気持ち悪い」

私は、雄大の事を他に好きな女子に悪口を言われるようになった。

雄大のクラスには仲の良い人が多かった。だから、よく雄大のクラスには休み時間のたびに訪れていた。それが裏目に出てしまった。

ー私が雄大にアピールするためにクラスに来ていると勘違いされた。

でも、そう思うって事は、この女子たちも似たような事をしているということだ。

雄大のクラスを見ていただけなのに、その女子にドアの前を塞がれたりもした。トイレであった時は、ドアを開けて私がいた瞬間に、教室に戻っていかれたりもした。

ウザい男子の叫びも収まることもなく、私はひたすら耐えることになった。

周りから、雄大について聞かれることも、笑われる事にも慣れた。

私は、雄大が何かしたのだと察した。

ー雄大の心にもう私はいなかった。


私は、雄大に別れを告げた。

彼は「やっぱりそう言うと思っていたよ」と受け入れてくれた。

ここから、笑人との関係が大きく動く。


   ※ ※          ※ ※


雄大と別れてから、私は笑人の姿を探すようになった。

何故か彼の顔が見たくてしょうがなかった。

笑人の笑顔。眼差し。それが欲しくてたまらなかった。

私は相変わらず、雄大のクラスに行き続けた。別に雄大にアピールするわけではない。

笑人は雄大と同じクラスなのだ。

私がこのクラスに訪れる理由は、これだ。

悪口は言われ続けているけど気にしない。

「お弁当、食べ終わった?」

「うん。終わった」

香織に休み時間のたび、話しかけに行っている。

「お弁当しまってくるね」

香織が私から離れた瞬間、視線を感じた。

首を少し動かすと、あの目に捕らえられた。

笑人と目が合った。

でも、この前目が合った時とは違う。

今日の笑人は真剣そのものだ。

私は、だんだん見ていられなくなり目を逸らした。


その日の放課後も、笑人からの視線を感じた。

やはり真剣そのものだった。

笑人の様子が今までと違うことにー気づいた。


年明け。体育の授業はサッカーだった。

サッカーに興味はないけれど、最初の方はパス練習だけなのでラクだった。

そして香織から、意外なことを聞いた。

「ウチのクラスもサッカーだったんだけど、パス練習のペアがね」

私が身を乗り出すと同時に香織が笑った。

「雄大と笑人がペアを組んでたの」

え、私は固まってしまった。こういうのをフリーズというのだろうか。

香織には笑人の話しはしていない。だか、香織が少し前に「笑人って優しいね」と私に話してきたのを良い事に、笑人の話を聞き出そうという作戦に出ていた。

それよりも雄大と笑人だ。あの2人が一緒にいるところなんて見たことがない。

それに、来月に控えている宿泊行事の班、バス席も全て一緒だという。

ただの偶然だと思うが、何となく気がかりで頭の片隅に入れておいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る