第6話

中3になった時に、今の大阪の家に引っ越して来て、部屋に入った瞬間、霊の存在を感じた。最初の夜、寝ていたら、ボクの上に乗っかってきた。


それから、高校生の間も、毎日、夜、寝てると、ボクの上にあらわれていた。

服飾デザインの専門学校に入学して、ある晩に、

「ようこそ、うちの部屋に!」

って、ボクに言わはった。

「えっ!もう何年も、いますけど...」

って答えてみたら、

「あっ、知ってますけど、しゃべるの初めてやから...」

って言って、それから、

「ずっと、いつも見てましたよ!」

「あっ、ありがとうございます...」

「うちも、ついに、人にしゃべれるようになりましてん。いいやろ!」

「あっ、そうですね。成長したんですね」

「かえです!よろしくね!」

「あっ!かよちゃん!よろしくね!」

「ほんなら、おやすみ!」

「あっ、おやすみなさい」

霊は、その晩は静かになった。

かよちゃんっていう女の子みたいだ。


ある時、

「友達に交信するね!」

って、かよちゃんは言った。

よくわかんないけど、

「どうぞ~」

って、言ってみた。

そしたら、かよちゃん、急に話し始めて、

「あっ!もしもし、かえだよーっ!...うんうん、そうなんやー!ははは...」

って相手と、しゃべってた。

あっ!かえちゃんだったんやあ~って思った。

しばらく、かえちゃんは相手の友達としゃべってて、

「ほな、またね~」

って言ってから、ボクに

「交信おわったよ~」

って言った。

「かえちゃんなんだね~」

「そうだよ~、香る絵って書いて、かえだよ~」

「かわいい名前ですね~」

「ありがとう~じゃあね~」

って言って、かえちゃんは、その日は静かになった。

まるで、ボクに、かえちゃんだってことを、わざわざ友達と交信して、教えてくれたみたいやなあ~って思った。


ある晩、寝てたら、ボクの上に乗っかってくるのを感じたから、あっ、香絵ちゃんだ~って思ったら、

「こんばんは~起きてた~?」

って言うから、

「寝てたけど、起きちゃったよ~」って答えた。

「写真、見てくれる~?」

「いいよ~」

って言ったら、天井のほうから、1枚の写真が急にあらわれて、ハラリと落ちた。

拾って見てみたら、2人の女の子の写真だった。

「うちは、ちっちゃいほう」

って香絵ちゃんは言った。

「友達は、もう1人の高身長で、カッコいいほう」

「友達、めっちゃカッコいいね~。サングラスもきまってるし」

「そうでしょ~、みんな、そう言うの。...やっぱり友達のほうが好き?」

「友達はめちゃめちゃカッコいいと思うけど、ボクは、ちっちゃくて、かわいい香絵ちゃん、めっちゃ好きだよ~。友達の子よりも。確かに、昔だったら、友達の子のこと、間違いなく、めっちゃ好きになるだろうけど、今は香絵ちゃんのこと、誰よりも、いちばん、めっちゃ大好き!ボクは中3の頃から香絵ちゃんと、ずっと、部屋でいっしょにいたから、そう思えるのかなあ~」

って答えたら、

「ありがとう~、じゃあ、おやすみ~」

って香絵ちゃんは言って、それから静かになった。

写真も、フッと消えてしまった。

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