第10話 グラバの花
グログル王国北部隣接地帯フォルド子爵領領館
子爵領の中心地、子爵城公邸、領館執務室の中、眉間に皴を刻んだ、
この城の主 レジュルログ=アルデ・ド・フォルド子爵が、うず高く積まれた書類を処理している。
静かに扉が開き、頭髪を撫でつけた痩身の男、執事長が入室してきた。
「閣下、モージェスの司教より、拝謁の打診が御座います」
執事は主人の部屋に入るときには剥啄はしないものである。
「物見からの報告が届いている件であろう」
「御推察の通りにございます」
「カリューグ男爵邸からは嘆願が届いておるが、聞くに及ばん。
過ぎたる好色を商館に押し込めた報いはうけるべきであろう、囲い込み過ぎた奴隷の処分を領内で行おうとは、愚かな」
「事が済み次第、謁見の手配をいたしましょう」
新しい報告書を、手にしたまま、執事長は恭しく頭を下げる。
子爵は指先で合図を送り、執事長の持つ報告書を受け取る。
「2頭の奴隷は、エリスが囲い込んでるのか」
「エクレット様は動かれますご様子に」
予定調和でもあるかのように、執事長は淡々と言葉を綴る。
報告書に目を通しながら、腹のうちで次の展開を確定していく。
「交雑配種などと、バカなことを、男爵の三男は追放でよかろう」
続けて問う「賊は何者であった?」
淀みなく「サーフェデラ伯爵の手のものでありました」執事長が
答える。
「ダグラスめ領内での不埒な行い、借りは取り立てねばならぬな」
「エクレット様はいかがいたしましょう」
「会おう、だが神殿経由するようなら捨て置け、司教に丸め込まれ、て日常に戻るだろう、嘆願が届けば許可しよう、騎士団経由で請願が届くようなら、迎えを出せ、それで状況は察するだろう、うむ。
司教も招いておけ、幕引きといたそう」
「御意」執事長は静かに目礼し、退出していった。
「ん~~~~~~~!エリスーこの件に絡んでくるなんて、ジュグダの賽は気まぐれすぎるぞ」
もうそこには、子爵としての威厳を脱いだ子爵が、深く椅子に座り直し、目頭を揉みしだく。
天井に向かい指を流すと、二つの影が現れる。
「
王には借りを返してもらうだけでお騒ぎ無きようとお伝え致せ、んんんん。
虹玉を献上致せ」
影の一つは揺らぎ消え、もう一つは揺らぎを一度止め再び揺らぎ消えた。
グラバの花とは、受取を拒否できない贈り物の一つ、5~6輪を一纏めにして、必ず室内に活けなければなければならない。
花言葉は『大切な友・孤高の人』『私は貴方の傍にいる』
淡い桃色に黄緑の縦模様が入った、六枚花弁の握り拳程度大きさの花が、控えめな印象をあたえ、甘い香りを放つ。
決して不快な香りではないのだが、遠くからでも花の存在が判る程、香りを放ち続ける。
濃厚でもなく充満するすることもなく、その香りだけなら好ましい香りでもあるのだが、室内に持ち込めば、香りが家具・カーテン・絨毯に染み込み、一カ月は香りが抜けない。
打ち消し合う香りがなく、消臭ができない、更に動物系の香水と合わさると、腐敗臭や排泄臭に替わり、肉・魚・乳酪等の食事の香りにも影響が出る。
果実酒や穀物酒に甘い香りが付くことから、一部の好事家では酒蔵に一刺し飾る事もある。
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第十話 グラバの花
さて次回は
バウバウが走り回り穴を掘る、飛び跳ね走り、穴を掘る。
ブルダック爺さんの花畑が、穴だらけ。
スニック坊やが好きだと言った、グラバの花を丹精こめて、育て上げ
咲かせたばかりなのに、バウバウが穴を掘り、小便をかけた。
次回「第十一話 聖創黎記書」
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