第33話 怒るイオと対魔物会議

「魔物があらわれた!?」


 フェイジュンとジーウェイの祖父である土スキルの名家。

 前国王側だったため、囚われている彼の恩赦おんしゃの話をしているときだった。


「魔物は消えたってイオが……」


 俺はイオを見た。

 疑われたと思ったイオは、ピンッと白いネコミミとシッポを立てて怒っている。


「イオは嘘つかないにゃ!人造魔物にゃ!」

「まだいたのか!?」


 全部終わったと思っていたのに。

 頭の中にハテナが浮かぶ。


「魔術師たちが研究所は壊したはず……。俺も確認したぞ?」


 セリスも同意する。


「そうよ!大魔術師さま直々に、浄化の魔術をかけていただいたんだから!

 邪悪なモノは生み出せないはず!」


 そこにいなかったドーラに簡単な説明をする。


「お話は分かりましたが、人造魔物を作った人はどうなったんですか?」

「王が倒されたと分かると、すぐに自害しました」


 軽蔑したようにフェイジュンが答えた。


「それよりもレオさん!王国へ急がないと!」


 ドーラがあせる。


「そうだな。あそこは俺の国だ。

 好き勝手させるわけにはいかない」


 転移用の魔法陣が描かれた布を、ジーウェイが用意してくれた。


「各部族の首領が持つようにしました。

 荷物を運ぶときや急な用事でも、すぐ移動が出来るようになりました。

 これもレオ総督そうとくのおかげです」

「それは良かった。いつも悪いな、ジーウェイ」

「当然のことをしたまでです。レオ総督そうとく、ご武運をお祈りします」


 王宮の魔術師たちの部屋に転移する。

 ドーラとセリスと、フェイジュンも希望してついてきた。

 しばらくすると、なぜかジゼルとリーベラさんも転移してきた。


「なんでここに?」

「魔物が出たらあたしの出番だろ?」


 リーベラさんはフフンと笑った。


「救護担当ですわ。ジーウェイくんから連絡がありましたの」


 ジゼルも得意げだ。


「レオ陛下はモテますね」


 おもしろくなさそうなドーラに言われて胸を張る。


「みんな、今まで戦ってきた仲間だからな!」


 笑って見回すと、なんとなくみんなの表情が微妙だ。


「な、仲間……ですもんね……」

「仲間。……でも、私が一番親しいですわ」

「……ふーん、どうだかね」

「仲間とか!我が王の鈍感!」

「レオ陛下以外は仲間と思っていないのでは?」


 よく分からないが、責められている気がする。


「仲間にゃ!みんな仲良し!にゃ!」


 イオだけは俺の言葉に同意してくれた。


「イオもそう思うよな!」

「にゃ!」


「お取り込み中のところ悪いですが、魔物の動きをお伝えしたい」


 スッと音もなく魔術師の男が現れた。


「分かった」


 どこからか地図があらわれた。

 魔術師の男が地図を指さす。


「魔物はあなたの実家を破壊して現れました。

 今は何かを探して、街の上空を飛び回っています」

「俺の実家を……」

「魔術師が攻撃したところ、水を使った盾で防御されます。

 今のところ街は無事ですが、民は混乱しています」


 心当たりがある。胸騒ぎがした。


「兄の守護獣ビーストのスキルだ。

 兄は水の防御盾でガードするのが得意だった。

 ……兄が人造魔物になったのか?」


 まだ守護獣ビーストを得る前、二人をワクワクして見ていた記憶がよみがえる。

 そして腕をつかんで家から追い出したあの日のことも。


「とにかく、王国軍に民を落ち着かせるよう、動いて貰わなくては」

「かしこまりました。お伝えします。セリス、頼んだぞ」


 魔術師の男は消えた。


「魔物が何を探しているか分からないが、どこで迎え撃つか決めなければ。

 民に被害が出ない場所……」


 地図をのぞき込んで大丈夫そうな場所を探す。


「王国軍の訓練場はどうですか?」


 ドーラが提案した。

 王宮の外れにある訓練場は確かに広い。


「ダメダメ!王宮に危害を加えてどうするの!」


 セリスがすぐに反対する。


「手っ取り早く上空で倒すのはどうだい?」


 気の短いリーベラさんらしい意見だ。


「イオは飛べません。それに落ちてきたもの街が壊れたらどうするんですか」

「街って不便だねぇ!」


 ガリガリと頭をかいてイラ立つリーベラさん。

 ドーラが引いていた。


「あなた、ガサツすぎませんか?」

「ふふふ、街の方には刺激が強いですわね。

 リーベラさんは騎馬族で一番強い女性ですの」


 ジゼルがフォローを入れる。

 胡散臭そうに、ドーラはリーベラさんを見る。


「うるさいな。総督そうとくの言うことは聞くよ。

 それ以外は臨機応変ってやつだ」


 ブスッとしたリーベラさんと、まだ何か言いたげなドーラ。


「ケンカしないでくれ」


 頼れるんだか頼れないんだか、分からないメンツにあきれつつ、地図を見ながら考える。


「この川はどうですか?街の中を通ってますし、川幅も広いです」


 フェイジュンがさしたのは拡張工事を計画していた運河だった。

 様々な物資を大量に運ぶために作られた運河は広く、深く作られている。


「イオが戦いにくいかもしれないが、船を止めれば一番マシな場所だな」

「イオは戦えるにゃ!」

「船は魔術師が止めるわ!」

「決まりだな!早く行くよ!」


 俺たちは急いで運河へと転移した。



 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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