第34話 運河での対決と全員集合

 転移魔法で着いた運河から空を見る。

 はるか上空に黒い魔物が旋回せんかいしている。


「イオ、できるだけ運河の上で攻撃してくれ」

「ご主人も手伝うにゃ」


 イオが強制的に、俺へスキルを与える。


「これは……筋力増強スキルか?」

「にゃ」

「魔物が!」


 魔物がまっすぐに俺へ向かってくる。

 魔物の頭に、俺の兄がくっついていた。


「レオォォ!」

「兄さん!どうして!」

「ラスキン家の恥晒しがぁぁあ!」


 どうやらまだ俺を許せないらしい。

 運河へジャンプした。


「にゃ!」


 イオが水柱で足場を作った。


「これは便利だな」


 そのままヒョイヒョイ飛んで運河の真ん中へ。

 魔物も追いかけてくる。


「ガニメデ!」


 リーベラさんの指示で、拘束スキルを使うガニメデ。


「なに!? 弾かれた!」


 魔物は水の膜で拘束をはじく。


「ぱっくんちょ!」


 魔物のスキルをイオが奪った。

 兄がくるりとイオのほうを向く。


「きさまぁぁぁ!無能の守護獣ビーストがぁぁぁあ!」

「イオ!」

「にゃ!」


 イオが炎スキルの火炎弾を、魔物のつばさにぶつける。


「効かないにゃ!」

守護獣ビーストとは違うものになっているのか」


 昔はキレイな白鳥の守護獣ビーストだったのに……哀れだ。

 イオが体勢を立て直して、風スキルのカッターで切り裂く。


「すごくかたいにゃ!」

「水の上だと戦いにくいな。イオ、俺をおとりに風圧で上から押しつぶせ」

「ご主人が傷つくのはイヤにゃ!」

「大丈夫だ。さっき奪った水スキルをつけてくれ。

 防御盾を使う」

「押しつぶされたら、浮き上がれないにゃ」

「魔物が弱ったら、水スキルで引き上げてくれ」

「……にゃあ」


 しぶしぶイオがスキルを与える。


「よし!上手くいったら、ステーキ食べ放題だぞ!」

「にゃ!頑張るにゃ!」


 兄の守護獣ビーストのスキルで水の防御盾を作る。

 自分を中心に丸いボール状の盾に入った。


「ぐっ!さすがに、2つのスキルを使うのはキツイな」


 俺の準備ができたのを見計らって、イオが自らの水スキルで高く高く水柱を作る。


「無能が!刃向かうなぁぁあ!」


 魔物の体当たりを避け、イオは水の勢いで飛び上がった。


「にゃぁぁあ!」


 イオが風スキルの大きな力で、魔物を押しつぶす。


「ぎゃぁぁあ!」


 ドプンッ


 魔物が俺を巻き込んで運河へ沈んだ。

 ボールのような防御盾の中にいるので、ダメージは無い。

 魔物におおわれ、かなり深くまで沈んでしまった。


「大きな運河とは知っていたが、こんなに深いのか……。

 防御盾の空気がなくなる前に、戻らなくては……」


 ガキンッ


 魔物の鋭い鉤爪かぎづめが、俺の防御盾を壊そうとする。


「なっ!まだ動けるのか!」


 ガキンッガキンッ


 鉤爪かぎづめが、まるで俺を掴むように防御盾をひっかく。

 遠くでドボンドボンと音がする。

 おそらくイオが攻撃しているんだろう。


「イオの攻撃で弱らないなんて、いったい何をされたんだ!?」


 アルベルトが魔物になったときよりも、はるかに強い。


 ガキンッ


 防御盾にヒビが入った。


「クソっ」


 もうダメかと思ったそのとき、突然魔物がしびれたように動きを止めた。

 運河が割れて、川底に着地する。

 水の壁の中、魔物は動かない。


「ご主人!」


 イオが駆け寄ってくる。


「イオ!」


 イオが怒って俺の手に噛みつく。


「イテテテ」

「ムリ禁止にゃ!」

「ごめん。イオがなんとかするから、すぐに戻れると思ったんだ」

「大ざっぱすぎるにゃ!!」

「ゴフッ」


 頭突きまでされてしまった。


「我らが王よ!ご無事ですか!」

「レオ陛下!」

「レオ総督そうとく!」


 運河の岸から俺を呼ぶ声がたくさん聞こえる。

 そこには魔術師たちと王国軍、そして騎馬族十二部族のみんながいた。


「みんな……どうして」


 状況が飲み込めないまま、岸に上がる。

 ハリブの首領が答えた。


「そりゃあ、俺たちは、レオ総督そうとくの矛であり盾だからな!」

「ハリブの首領の守護獣ビーストが、魔物を気絶させたにゃ」

「そっか、雷スキルで……さすがだ」


 運河を見ると、さっきまで割れていたのが元通りにもどっている。

 魔物も沈んだままだ。


 他の騎馬族も口々に俺に声をかける。


「騎馬族は情に厚いんだよ!」

「魔物狩りは俺たちのほうが上手いだろう?」

「まったく、レオ総督そうとくは俺たちがいないとダメだなぁ」


「王国軍も来たのか」


 王国軍は、運河に向けて移動式大砲を設置している。

 騎馬族と戦いを起こしたときの、軍を率いていた大尉がいた。

 俺に敬礼をする。


「タダモノではないと思っていたが……。

 陛下になられたときは驚きました。

 民はみな、避難させて無事です」

「大変だったな。混乱はなかったか?」

「我々が収めるよりも早く、騎馬族が収めてくれました」


 ストレの首領が言った。


「十二も部族がある。魔術師と組んで場所ごとに見回れば簡単だ」

「簡単なのか?大変そうな気もするが……?」


 大尉がフォローする。


「機動力で騎馬族にまさるものはありませんので。

 それに庶民には王国より、騎馬族と親しいものもいるのです」

「なるほど」


 魔術師たちも魔物を迎え撃つべく配置についていた。


「我らが王よ。船は全て港へ転移させました。

 防御陣をはりますので、街への被害も出しません」

「ありがたい。しかし魔物はまだ動くのか」

「まだ倒れてはいません。あれを倒せるのは神獣さまと、あなたさまだけです」


「さてレオ総督そうとく、祭りの始まりだ!」


 ハリブの首領が、不気味に盛り上がる水面をみて、声を張り上げた。


「兵士たちよ!位置につけ!」

「魔術師!戦闘用意」


 みんながいる。ひとりじゃないんだ。

 これで、終わらせる。


「みんな、いくぞ!」

「「「おぉ!」」」


 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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