誰かが体験したささいな怪談、その語りを連ねたショートストーリー集。
あらすじもタイトル通りにミジカくまとまりました。なんでもない日常の中で遭遇した不可思議なお話を綴ったこちらの作品、魅力は「良質なテンプレート」、これにつきます。
怪談というものは、出遭った人がその話を持ち帰らないといけません。つまり語り部が殺されてしまっては成立しないものです。だからこそ、お話にオチがついてはいけないわけですよ。そのテンプレを正しくなぞることで「あれって結局なんだったんだろう?」というモヤっと感が生み出され、余韻が生まれるわけですね。
そして、「なんだったんだろう?」を演出する背景設定を持つお話がちりばめられているのもすばらしいですね。ふいに遭遇する怪異も恐いのですが、「もしかしてあのことが関係しているのでは?」があるお話も恐い。さまざまな様相の恐さが詰まっているから、この作品はもれなく恐い!
1話を読み終えるのに3分は不要。極上のモヤっと感をさくっと味わっていただけましたら。
(「夏といえばコレでしょ!!」4選/文=高橋 剛)