第6話
ここで降りる人は僕たち以外にいなかった。暗くて汚いホーム。薄暗い改札を出る。
無言で2人で歩く。階段をのぼり息が少し上がり、先を歩く彼女から離れていく。彼女は何も言わず僕を待つ。階段を上りきったと思ったら今度は急な登る坂道。左右は木や草で人が通るには整備されてない道。
だけど、心地よかった。
2人だけの世界で、風と木の動く音だけ。次第に、日が落ちていく。空は赤くなり始める。
その時、視界が澄み渡る。辺り一面の赤い空。やがて、オレンジになり、太陽は最後の力を見せる。まだ、真っ暗にはさせないぞというかのように紫に。そして、黒。
初めて見た。夕日の空はこんなにも数多の顔をみせてくれるのか。
その時、彼女は不意に口を開く。まるで、空に見惚れる僕を待っていたかのように。
「私の事を好きになったら、私はみんなの記憶から消えます。
私の事、好きになっちゃダメだよ。だって、不幸にしちゃうから…」
「どういうこと?」
だけど、きっと彼女はこれ以上話そうとしないだろう。
横にいる君に手を伸ばして掴みたい。
そうしないとどこかに行ってしまいそう。
何故かそう感じる哀しい横顔で、そうつぶやいた。
「分かるよ!私の事好きになるの。可愛い、優しい、悪い所なし。うん、優良物件すぎる。
あー、罪な女だよ。
でも、私はみんなのアイドルだからね!」
そう言って、ウインクをしている君は夕日に照らされて本当に綺麗だった。
それから、僕たちは良い友達だった。
夏休みも体育大会も文化祭もずっと僕たちは良い友達だった。
だけど、僕は。この気持ちの答えを隠し続けることができなくなってきた。
君と二人で、遊びに行きたい。前に行った遊園地に再び行きたいな。
そして、僕はこの気持ちの答えを知ってしまった。
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