第13話 ジミー

ガランド砦、最奥の会議室 

  

テーブルにはダルネア師団長、コード副師長、カイブラ大隊長、コーモレト大隊長、


エルザ大隊長が席についている。


そして、俺はエルザ大隊長の傍に立っていた。




カイブラ大隊長が口火を切る


「エルザ、緊急招集とはどういう事だ、


 しかも現在の仕事を中断してでも集まれとは、


 事と次第によっては、ただじゃおかねぇーぞ」


「そうですよ、ユーモレト大隊は演習を中断して帰ってきたんですよ、


 理由を行って貰わないと部下に説明できません」


「すまないが、緊急事態と判断した、責任は全て私にある」


「しかも、そこに居るのは 前にここに来たジミーじゃないか。


 エルザよ、こんな子をつれて緊急事態とは穏やかじゃないね」




 さて、俺は腹をくくった。


「ダルネア師団長、ジミーです発言許可願います」


「師団長、私からもジミーに発言許可をお願いします」


エルザ大隊長が口を添えてくれる。




「坊やか、いいだろう言ってみな」


「では、失礼します。 


 前回、サラマンダーの件は少なくとも数年の猶予があるとして


 対応策を話させて頂きました。


 ところが、情報を整理すると全く猶予が無いという状況が見えてきたんですね。

 

 現在可能な方法は2つ、水没させるか閉鎖するか。


 しかし、そのどちらを選んでも集団魔法という、


 唯一魔物に対抗出来る方法は消えてしまう。


 数年後には魔法士は半分になり、10年後には魔法士は存在しなくなる」


 カイブラ大隊長が吠える


「そんなことは分かっている、それでもちっぽけな可能性に賭けてでも、


 絶対に、あきらめる事だけはしねえ」


「そうだねえ、エルザ、あんた・・・この子にこんな事まで教えたのかい? 」


「はい、教えました」


「まったく、坊や・・・重ねて言うけど、皆には内緒だよ。


 それで坊やは何を言いたいんだい?」


「はい、前回は数年の猶予があるのと、水没させた坑道の復旧に


 多くても数年だと予想していたため、あの内容になりました。


 しかし、来年には魔石不足になるなら不確定ですが別の方法を提案します」


「別の方法?そんな物があるのかい」


「はい、水を使わずにサラマンダーを排除します」


「そんな方法があるなんて、知らないねえ」


「はい、まだ知られてませんから」


「なんだって?」


「師団長、ここでの魔法使用を許可頂けますか? 」


「いいけど、火・水・風のどれを使うんだい? 」


「その、どれでもありません」


 俺は、左手に杖、右手にペンダントを握る


『フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ ・・・・・・』  


 ぼしゅっ・・・・・・・・・どん


 テーブルの上に白い塊が出現する


「第4の魔法です」どや~~~


 皆が驚愕の顔で見ている、つかみはオッケー




「ジミー坊や、すまないね。


 実は教会魔法士の使う聖魔法が 第4魔法と呼ばれているんだよ


 だから坊やのは だと思うよ」


 やっちまった~~~~


「すみませんでした。やり直しをお願いします」




 頭を下げて、もう一度杖とペンダントを構える


 「 第5の魔法です」どや~~~




 「いや、十分すごいんだが、この白い塊はなんなんだい?」


 「はい、これは氷よりかなり冷たい温度の物質で、溶けると気体になります。


  密閉した室内でこの気体を吸い続けると呼吸困難で死亡します。」


 皆が、ガタガタと席を立つ。




 「大丈夫です、窓を開けていれば出ていきますし、まずは床にたまります」


 「坊や、こんな危ない魔法どうしたんだい?」


  師団長が頭をかかえている。


 「はい、氷魔法を作ろうとして失敗しました」


 「サラマンダーに氷より冷たいものをぶつける訳かい?」


 「はい、当たらなくてもコレが溶ければ


  気体が坑道の底に溜まっていきます。


  大概の生き物は呼吸が出来ないと死にますから」


  ニヤリと笑う


 「魔法士の安全確保は?」


 「この気体の溜まっているところは火が付きません、


  火の着いたランプを持って行ってもらって


  火が消えたら上の方に逃げてもらいます。」


 「なるほど」


 「後の問題は、底に溜まった気体の排気ですね。


  まあ、水を掻きだすよりは楽でしょうし、

  

  人の吐く息にも含まれている気体なので


  坑道で働いている作業者の方が排気については詳しいでしょう」


 「話を聞くといけそうだね」


 「ですが師団長、私はこの魔法を人に教えた事がありません。


  ちゃんと人に教える事が出来て、集団詠唱が出来るのか、


  それを、まずやってみる必要があります」


 「そういえば、右手に握ったペンダントは何だい?」


 「詠唱だけでは、出来なかったので色々やってみました。


 私は杖とこのペンダントが無いと発動しませんでした」


 「そうか、そのペンダントを借りても良いかい?」


 「はい、どうぞ」


 「ぼうや、私が許可するから、まず自分の分隊で魔法を教えてみな。


  ペンダントの複製もこっちでやってみるよ」


 「はい、このペンダントはギーグ分隊所属エルの故郷のお守りらしいです」


 「わかった、ありがとよ、この後分隊ごと呼び出すから、


  それまで下がってよろしい」


 「はい、話を聞いて頂いて、ありがとうございます」


  杖礼をして、退出した。




  ドアから出た俺は


 『やっちまった~~~』と その場に座り込んだ。




 ジミーが退出した後の会議室では


それぞれがしばらく放心した顔で座っていたが、


心底疲れ切った様子のカイブラがとうとう口を開いた。


「なあ師団長・・・・あれな何だったんだ?」


「ああ、新しい魔法だね。」


「いや、そうじゃない、はなんなんだ?」


「前の会議にも来ただろう、新人のジミーだよ」


「ジミーって・・・まさかジミー特別な者か?」


 「ほう、あんたの故郷じゃそう呼ぶんだね、うちじゃあジミー聖者だよ」


 「ジミーなんてを付けられて・・・と思ってたんだがマジかよ」


 「エリザ、あんたもそれに気付いて連れてきたんだろ?」


 「はい、ビナータが私を元気付けようと、


  ジミーにを作らせたんです。」


 「あの、銀貨を使って”のど薬”を作ったあの子にかい?

 

  今度は金貨でも使ったのか」


  軽口をたたく師団長に


 「いえ、この世の物とも思えない程美味でしたが 材料費が銅貨2~3枚でした」


 「そいつはすごい、こないだもらった薬も旨かったが値段を聞いて驚いた


  次は気楽に食べさせてもらおう」


 「はい、機会があればお呼びします」


  コード副師長が大きな体でボソリと声を出した。


 「師団長、彼は新人で置いておいて良いのですか? 


  それと今回の功績に対する褒賞はどうしましょうか?」


 「それがあったか、しかし、新人を半年で昇進させるのもな」


 「国への報告はどうします?」


 「それもあったか、頭が痛いな」


 「私としては、せめて分隊があの魔法を使えるのを

  

  確認してからの話ではないかと思います。

  

  いまだにタチの悪い詐欺に引っかかっている気がしています」


 「まあ、これがうまくいきさえすれば魔法士はこれからも生き残れる、


  まずは可能性が見つかった事を喜ぼうじゃないか」


 「そうですね」





  それから、しばらくして


 「ギーグ分隊、直ちに 奥の会議室に出頭せよ」


  分隊に伝令がきた。


 「ジミー!」


 「すみません分隊長、師団長の命令で俺からは何も言えません」


 「は~~~」


  ため息つくと幸せが逃げますよ





  俺達は、この無駄に立派な扉の前に立つ


  コンコン「ギーグ分隊 出頭いたしました」


 「入れ」


  あれ? カイブラ大隊長の目が笑ってる、


  エリザ大隊長の口元が引きつってる?、


  師団長が妙に芝居がかった口調ではなしだした


 「オホン、よく来たな、ギーグ分隊、


  今回、で我が師団のでの活動が


  あ、皆が固まった。


 「その上、この場で使し 


  魔法は使ったけど虚言てなに?・・・あ、エルが涙目になってきた


 「この許しがたい内容を皆で協議した結果、ジミーのが内定した」


  師団長、ここで落とすの?


  うわ~ 皆がポカンとしてるよ、


  誰かフォローして・・・くれないか、俺がするか


 「師団長、それは酷いですよ」


 「すまんな、カイブラの奴がやり返さないと気が済まないと言いだしてな」


 「カイブラ大隊長~」


 「馬鹿野郎、あそこまでコケにされて何もせずにいられるか」


 「仲間には関係無いでしょう」


 「うるせー、こんなバカ放っておいたんだ連帯責任だ連帯責任」


  硬い空気は無くなったな


 「すまないね、みんな でも・・・


  全師団の活動止めたのも、ここで魔法使ったのも、


  虚言を吐いたのも全部本当だからね」


 「最後の虚言ってなんですか? それは憶えがないですよ」


 「第5の魔法を第4の魔法と嘘をついたじゃないか」


 「いや、それは単に知らなかっただけですよ」


 「まあ、皆の溜飲りゅういんも下がった事だし本題に入ろう。


  あんた達に来てもらったのは他でもない


  あんた達には、このジミーが作ったを憶えてもらいたい」


  分隊長、再起動したな


 「第5魔法ですか?」


 「そうだ、ジミーが作った魔法だが、まだ他の人間に教えた事がないのでね。

  

  実際に他人が使える魔法なのか、あんた達に検証してほしいのさ」


 「どんな魔法なんでしょうか?」


 「内容を聞くと、危険極まりない魔法なんだ、


  だから当分の間は練習以外で使わないで欲しい。


  ジミーの話が本当なら、あんた達の命に関わるかもしれない」


 「そんなにヤバイ魔法なんですか?」


 「大丈夫だ、魔法の発動には呪文と杖とペンダントが必要だ」


 「ペンダントですか?」


 「これだ」


  エルにもらったペンダントを見せる


 「これ、あたしがあげたペンダント」


 「ああ、ジミーは、これを新魔法の起動キーにしたんだ。


  今これを複製できないか検討中だ


  作れなければ、エルの故郷に協力を得ることになるだろう」


 「エル、黙っていてゴメンね。


  これをもらった時に起動キーを


  何にしようか悩んでたんだ」


 「そうだったんだね」


 「それからアリア、俺がやってしまったのはコレなんだ。


  本当はもっと安全な魔法を作ろうとしてたのに。


  出来上がった魔法は危険な物だった。


  なんて物を作ってしまったんだろうと悩んでた」


 「そうだったんですか」


 「あたしからも頼むよ、この子を怒らないでやってくれないか。


  この子はこれを危険だから封じておくつもりだったんだ。


  でも、この魔法を使わなければ・・・おそらく国が傾く事態になる」


 「えっ? 」


 「それが予測出来たから、この魔法を表に出したんだろうよ」


 「いえ、この魔法が他の人に使えて、そして集団魔法に出来てやっと完成です。


 この魔法はまだ未完成です」


 「そういえば、ジミーこの魔法は何て名前なんだい? 」


 「出来る物質の名前は『ドライアイス』なんですが」


 「どういう意味だい? 」


 「直訳すると”乾いた氷”でしょうか」


 「乾氷(かんぴょう)かね」


 いや、寿司じゃ無いから、それだけは断固阻止する。


 「いえ、語路ごろが悪いです、


  氷よりも冷たいので凍氷とうひょうにしましょう」


 「まあ、あんたが作ったんだ、


  この魔法の名前は凍氷とうひょうだね」


 「はい、では分隊で詠唱練習を始めます」


 「ああ、型は取らせてもらったから


  このペンダントは持って行きな」


 「はい、では行ってきます」


 「おう、期待しているよ」




 訓練場


 「そろそろインターバルは終わったかな」


  皆に集まってもらい、新魔法のレクチャーを始める。


 「皆さん、注目してください。まずこの魔法で出来る物質を見て頂きます」


  俺は、短杖を構えペンダントを握った、そして


 『フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ ・・・・・・』


   ぼしゅっ・・・・・・・・・どん


    白い塊が出現する


 「これが凍氷『ドライアイス』です。


  氷よりかなり冷たいので素手で触らないでください


  触ると火傷と同じような状態になります」


 「なあ、ジミー この魔法のどこが危ないんだ?


  火の方がよっぽど危なくないか」


 「分隊長、この物質の特徴は氷よりも冷たく


  溶けると液体では無く気体になります。


  この気体は無味無臭ですが、大量に吸うと呼吸困難で死亡します」


  皆が一斉にズサーと後ろに下がる


 「大丈夫です、この気体は重いので下に溜まりますし風で拡散します。 


  人の吐く息にも含まれている成分ですので

 

  高濃度の気体を狭い空間で吸わない限りは大丈夫です。


  また、この気体が充満している場所では火が付きませんので

 

  ランプの火が消えたりした場合は、その場所から上の方に避難してください」


 「そうか、つまり広場や訓練場で使う分には


  それ程気にしなくても良いんだな」


 「そういう事なんですが、それを知らずに締め切った室内や洞窟で使うと


  味方に死人が出かねません」


 「知識をもって使えば大丈夫か」


 「はい、ちなみに呪文は『フリーズ』の繰り返しです」


 「『フリーズ』か、何か意味があるのか」


 「はい、古い異国の言葉で「凍れ」という意味です」


 「なのに、じゃなくてが出来たと」


 「まったく、思ったようにはいきませんでした」


 「分隊長、私なんかジミーの事だから


  絶対旨いものを作る為の魔法だと思ってました」

 

 「まあリドったら、いくらジミーでもそんな ・・・・ 


  分隊長、ジミーもう作ったみたいですよ」


  アリア~心を読むのやめて、お願い。


 「はい、では分隊長からこのペンダントを握って


  詠唱練習してみましょうか」


 「ジミーごまかし方が雑だぞ。こんど、この魔法で作ったの食べさせろよな」


 「はい、分かりました」


  一通り練習してもらい今日の訓練は終わった。


 「明日には人数分のペンダント用意してくれますので、よろしくお願いします」




 翌日、全員にペンダントを渡して詠唱練習を始めてもらうが、


 どうも思わしくない


 アリアから

 「ジミー君、氷より冷たくて、溶けると気体になる、気体は吸うと死ぬ


 他に何か特徴は無いですか?」と聞かれる


 少し考えて、俺は道具を調達に行った。 


 戻ってきた俺の手には水の入った桶と金槌、厨房で借りてきた金属の匙があった。


 「ジミー君、特徴を確認するのに、それがいるの?」


 「はい、見ててください」


  俺は詠唱で『ドライアイス』を出すと。


  まず、持ってきた金槌を振り下ろし『ドライアイス』を砕いた

 

 「こういう風に、叩くと割れます」


  次に欠片を右手で拾い、水を入れた桶に放り込んだ


 「水に入れると煙を上げて溶けます」


 そして、金属の匙を『ドライアイス』に引っ付ける、すると独特の振動音がする。


 「こうすると・・・・・・音が鳴ります」


  分隊長が頭を抱えている


 「余計わからなくなってきた、なんなんだコレは」


  桶の水を捨てて中にかけらを入れて、


 「中の『ドライアイス』が溶けるのをまって、


  この桶に火を近づけると・・・消えます」


 リドが冗談交じりに


「もう少しコイツに親しみを持てるような特徴はないですか?」


といわれピンときた。


「わかりました、親しみが持てるようにコレで菓子を作りましょう」




翌日、

ビナータさんにラクト乳2本と甘砂を用意してもらう。


ビナータさんも見に来るらしい。


 「さあ『ドライアイス』に親しむために、お菓子作りを始めましょう」


  あれ、ギャラリーがビナータさん以外にエルザ大隊長と師団長!


 【師団長】


  今日、坊やが『ドライアイス』に親しむ為に、菓子を作るらしい。


 「ビナータ、あの材料はなんだい?」


 「ラクト乳が2本と甘砂ですね」


 「それだけかい?」


 「はい、今日用意したのはそれだけです」


 後は金属の水筒と大きな布が見える


 「想像もつかないね」


 「はい、いよいよ始まるみたいですね」


 「そういえばエルザも坊やが作る所は初めて見るんだね」


 「はい、楽しみです」


 まず、坊やはラクト乳の瓶を布に包んで・・・注意深く振り回し始めた


 「いきなり、菓子作りとは思えない行動だね」


 「あれ、菓子作りなんですか? 何かの魔法の起動キーとか」


 「多分、ラクト乳を分離しているんだと思います」


 布から瓶を出して蓋を開けて、半分くらいを別の容器に入れた。


 そして残りの半分を水筒に入れ、もう1本のラクト乳も注ぐ


 水筒の中に甘砂を入れると、蓋をして両手で振り始めた。


 シャカ シャカ シャカ シャカ シャカ シャカ シャカ ・・・・・・・


 そして、水筒を切株の上に置いて距離を取った


 短杖を構えて右手にペンダントを握り詠唱を始める


 『フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ ・・・・・・』 


  ぼしゅっ・・・・・・・・・どん


   水筒が白い塊に覆われた。


 「ははは・・半信半疑だったが、ホントに菓子作りに使ってるね」


 「おそらく同じことを何度かやってっますね」


 「水筒の中の物はどうやってだすんだろう?」


 水筒の入った白い塊を、


ラクト乳の瓶を振るのに使った布で丁寧に包んでギュッっと縛った。


 それをコロンと足元に転がして・・・・・・・・蹴り始めた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 10分ほど蹴り続けて、ジミーは「ふうっ」と額の汗を袖で拭うと


布の結び目を解いた。


中から現れた小くなった球を金槌で軽く叩く、


表面から砕けた『ドライアイス』がはがれて水筒が現れた。


ジミーは器と匙を用意してから水筒の蓋を開け、


柄の長い匙を使って水筒の中から何かを器に取り出した。


 「さあ、どうぞ。これが『アイスクリーム』です


  どうぞ溶けないうちにお召し上がりください」


 目の前に出された白い物、匙が添えられている。


 恐る恐る匙ですくって口に入れてみる


 冷たい、そして濃厚なうまみと甘味が口のなかにふわりと広がる。


 「ジミーあんたは何て物を作ったんだい」


  よし、皆『アイスクリーム』を喜んでたべている。


  しかし、エルだけは匙を咥えて動かない。


 「エル、どうした」


 「ジミー、これは何?」 


 「さっきも言ったが『アイスクリーム』だ」

 

 「『アイスクリーム』」

 

 「うまいか?」


 「ジミー、あの魔法覚えたらコレが作れる?」


 「作れるな」


 「魔法が出来なかったら?」


 「大量の氷と塩があれば、作れるかもしれない」


 「わかった、絶対に覚える」


  どうやら、エルの決意に火が付いたらしい。


  「ジミーよ、ちょっと教えておくれ」 こんどは師団長だ


 「なんでしょうか?」


 「この『アイスクリーム』は原料はラクト乳と甘砂だけかい?」


 「そうですよ」


 「驚いたね、貴族や王家に献上できそうな旨さじゃないか」


 「でも、すぐ溶けますから。目の前で作らないと食べてもらえませんよ」


 「そうか、保管は無理だね」


 「はい、それに王家の方の前で、こんな危ない魔法使えませんね」


 「残念だ」


 「はい、でもこの魔法を使える人間が増えれば


 大量の『ドライアイス』が確保できます。


 そうすれば溶かさずに運べるようになるかもしれませんね」


 「そうか、そうなるかもな」


 「そのうち、誰でも食べられる物になるかもしれません」


  この翌日、まずはエルがこの魔法を成功させるという快挙を成し遂げた。



 閑話 リド


  「ジミーちょっと良いか」

  

  「リドかどうしたんだ?」

 

  「いや、これを見て欲しいんだ」


  そう言ってリドは金属の筒を取り出した。


  「あの水筒だと、中のアイスクリームが取り出し難いかと思って


   知り合いの職人に作ってもらったんだ。


   これなら簡単に中身が取り出せるだろ」


  「リド、すまないがコレ大量に作れないか?」


  「そんなに作っても使えないだろ?」


  「いや、各部隊にエサとして使う。1師団81分隊だから100個は欲しい。


   師団長から職人に仕事の依頼書を書いてもらう」


  「わかった、至急作らせる」

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