閑話 まともじゃない?

ガランド砦、最奥の会議室


30人での会議を想定したテーブルには、


この砦の責任者であるダルネア師団長と、その副官のコード副師長


カイブラ大隊長、コーモレト大隊長、エルザ大隊長が席についている。


ダルネア師団長が2通の書類を見つめて、


ため息をつきながら、立っている2人の騎馬兵に声を掛けた


「シンダイト騎兵隊長 ガレス騎兵副長 


 この現地報告書によると 我が国唯一の魔晶石採掘現場の深部で


 サラマンダーが現れ、採掘が不可能になったとあるが? 」


 背の高い方、ガレス騎兵副長が口を開いた


「事実です、どうやら溶岩溜まりに居ついたようで


 採掘現場に近づく者に襲いかかってきます」


「コード、確かサラマンダーは師団級以上の水魔法だったよな? 」


「はい、ただし、殲滅では無く有効ですが」


「それなら師団級を何回かぶつけるしか無いじゃないか?


 それの、何が問題なんだ? 」


 と大柄なカイブラ大隊長が口を開いた


「いえ、おそらく採掘場内で魔法士だけで400人もの詠唱は無理でしょう」


とコーモレト大隊長


「それに、サラマンダーのいる溶岩溜まりに大量の水を打ち込んだりしたら、


 前衛フロントは蒸し焼きになるわ。」


とエルザ大隊長


 ダルシア師団長がもう1通の書類を見ながら、


「国元でも検討したが実現可能な策は見つからなかったらしい、


こっちで作戦を立てて採掘再開に尽力せよだと」



「普通なら、蓋をして見なかった事にするんですが。


流石に魔晶石の採掘場に蓋は出来ませんね」


「コーモレト、魔晶石が無くなったら一番困るのはうち(魔法士)だよ」


「ですが師団長、これはどう考えても無理ですよ。


 部下に死にに行けとでも言うんですか?」


「コーモレトやめなさい、師団長だってそんなつもりは無いわ」


「ですがエルザ、まともな方法ではどう考えても無理です」




「まともな方法か? ・・・・・・師団長」


「なんだエルザ?」


「うちの部隊に前衛を纏めて小隊魔法詠唱させた、


 ちょっと、まともじゃないのが居るんですが? 」

 

「何?」


「インターバル中の小隊と前衛とで遅延戦闘中、


 ジャイアントスパイダーに追いつかれて

 

 とっさに前衛フロントに小隊魔法を詠唱させて足止めと時間稼ぎをして、


 最後に魔法士がトドメをさしたらしいです」


「ほお」


「いや、そもそもそんな事出来るのかよ?」


「カイブラ、出来るかじゃなくて、やった子がいるの」


「師団長、国も我々も対策は考え付きません。


ただ今日明日に何か起きるわけではないです。


この、まともじゃない子に話を聞いてみても良いんじゃないでしょうか?」


「まあ、方策がなにも無いからね、とりあえず話を聞いてみようじゃないか。


 それで、その隊員の名はなんて言うんだい?」


「ジミー、今年入った新人ですよ」

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