第10話 インターバルの死闘

翌朝、中隊は予定通り、昨日の森に向かって出発した。


ほどなく現地に到着し、昨日と同じように前衛フロント部隊のつり出しが始まる。


むろんガラの顔だけは、昨日と違い真剣なものだった・・・多少強張ってはいたが。


今回は、カイトス小隊、ネーラ小隊とも決まった作業をこなす様に


淡々と進めていく。


ヨル小隊の番になったが、特に問題も起こらず無事討伐を終えた。


問題が起きたのは2巡目、カイトス小隊が無事討伐したすぐ後だった。


「蜘蛛が2体でたぞ~」


「前衛を二手に分けろ、右側をネーラ、左側をヨルが対応せよ」


「ネーラ小隊、詠唱可能です」


「よし、右側前衛は左側に合流せよ。ネーラ小隊は小隊長の判断で起動キーを使え」


「了解」


「ネーラ小隊、風詠唱開始、


 ネーラ小隊 起動キー『


 「ネーラ小隊、2番タイマーセット」


 「2番、タイマーセット」


 「ネーラ小隊、魔石を黒に変更」


 「「「「黒、変更完了」」」」


 「ヨル小隊、詠唱可能です」


 「ヨル小隊、風詠唱開始」


 「前衛が近い、ドーム、笛だ」


 「ブォ~~」


  前衛が退避を始める


 「ピー!!」


 「ホイッスル退避確認だヨル、撃て」


 ヨル小隊 起動キー『


 「ヨル小隊、2番タイマーセット」


 「2番、タイマーセット」アリアがタイマーをセットする。


 「ヨル小隊、魔石を黒に変更」


 「「「「黒、変更完了」」」」


「前衛部隊はつり出し作業を中止せよ。全小隊がインターバルに入った」


「各小隊はインターバルを報告せよ」


「カイトス4(40分)」「ネーラ5(50分)」という声が聞こえる


「ヨル6(60分)」アリアが答える


「前線部隊は森端部を警戒、異変があれば報告せよ」


 休息の時間はもらえなかった。


「森端部より、ジャイアントスパイダー3体出現」


「前衛部隊は3隊に別れ遅延行動。中央はカイトス、右はネーラ、左はヨルが担当


 各隊何とかインターバルの時間を稼げ、各隊の奮闘を期待する。」


 絶望的で命がけの鬼ごっこが始まった。


 前衛部隊は蜘蛛を引き離そうと遅延行動を行う、


 つまり左へ左へと移動するので、我々もどんどん左後方に逃げる事になる。


 逃げる体力を温存するために自然と下るルートを移動する。


 疲れの残った分隊長の声が聞こえる「アリア、タイムは?」


 「あと4(40分)です」アリアの声が掠れてきている。


 「よし、水を忘れるなよ、肝心な時に詠唱出来ないと困るからな」


  しばらく鬼ごっこを続られたがもう限界が近い、


  特にアリアとエルはもうゆっくりとしか歩けないようだ


  前衛部隊もそろそろ限界だろう、


  蜘蛛の右側の脚2本と左側の脚に1本ボーラーが絡まっているが、


  蜘蛛の移動速度はそれほど落ちていない。


  前衛の20人と魔法の使えない魔法士16人か、


  再詠唱まであと2(20分)という所か?


  カイトスはそろそろ再詠唱可能だから、あっちの蜘蛛は討伐したかな?


  ネーラはまだインターバル中、救援は望めないな・・・詰んだか。


  いや、何とかして20分の時間を稼げ、1発なにかで牽制できれば・・・あれ?


  前衛と魔法士を交互に見る、もしかして?


  よし、蜘蛛の脚にからまったボーラーが立ち木に引っかかった。


 「小隊長、分隊長 時間稼ぎを思いつきました。」

 

 「言ってくれ」


 「ジミー何するんだ?」


 「前衛の方に小隊魔法を使ってもらいましょう」


 「「そんな事出来るのか?」」


 まず、確認してみよう。


 「前衛の方で今、インターバル中で無い方は居ますか?


  いらしたら手を挙げてください」

  

  20人全員が手を挙げる。


 「魔法士は魔石を小隊に取り換えて近くの前衛の人に渡して、

 

  杖の照準は魔法士が小隊長に合わせてください。」


 「前衛の方は杖を持ったら、火の詠唱をお願いします」


 俺も魔石を取り替えて、近くの前衛フロントさんに渡す。


 前衛さんの腕を持って照準を決める。


 よし、前衛の皆さん、詠唱が始まった。


 「小隊長役の方、適当に起動キーを」


 「よし、わかった」


 『


 小隊長の杖から炎が飛び出し蜘蛛を包む、


 威力はいつもの1/4くらいだろうか?


 牽制には十分な威力だ。


 蜘蛛は狂ったように暴れ出した。


 皆がぼーぜんとしていたので。


「小隊長、皆さん、何してるんです、今のうちに逃げますよ」


 と声を掛けた。


 結果から言うと、蜘蛛は暴れた事でボーラーの絡まった脚を無くした事で


 移動速度を落とし、


 火が感覚器官を潰したのか所かまわず暴れ出した。


 アリアの方からチョコレートに似た香りがただよう。


 「分隊長、詠唱可能です」


 そうしてインターバルの時間を稼ぎ、魔法士の小隊魔法でトドメを差した。

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