第6話 4/5の秘密

「ギーグ分隊、休養者を除き エルザ大隊長の執務室に直ちに出頭せよ」


 訓練中の俺達に伝令があった。


 ヨル小隊長を含め、ネイド分隊、セラ分隊からも視線が集中する。


「ギーグ、お前、何かやったか?」


「いや、ネイド、それなら俺一人の出頭のはずだ」


「そうね、部屋でやらかしたならギーグとネイド連名よね」


ヨル小隊長ギロリと俺の方を見た。


「ジミー、お前か? 」


「ちっ・・ちがいます」小隊長こえーよ。


「許可するから、とっとと腹決めて行ってこい」


「「「はい」」」


「ほら、3人 急ぐぞ」


大隊長の執務室へと走りながら、ギーグ分隊長から


「3人共、身に覚えは」


「「「ありません」」」


「だよな、俺も大隊長からの呼び出しは想像もつかない、


 すまんが臨機応変でいくぞ」


「「「了解」」」


エルザ大隊長の執務室前に到着、互いに身だしなみを確認して。


コンコン「ギーグ分隊、出頭しました」


中から「おお、来たか入室を許可する、入れ」


「はっ! 失礼します」


中に入ると、執務席に座るエリザ大隊長と、その横にビナータさん?


「ギーグ分隊長」


「はっ」


「実は君の所のジミー魔法士なんだが」


「はっ」


分隊長から俺に向けての殺気を感じる。


「ジミー君の生まれ故郷で使われている”のど薬”の再現を


こちらのビナータ女史と2人でやっていてな」


「はぁ」


よしっ、殺気が弱くなったぞ。


「私も試させてもらったんだが、実に素晴らしい薬だった」


「喜んで頂き恐縮です。」


「それで・・だ」


「ビナータ女史によると、薬を作るのに今の時期を逃すと、


来年の今頃まで作成は不可能になると。


しかし、魔法詠唱を主任務とする我々には冬場こそ必要となる薬だ。


軍の上層部に報告して予算を取りたいが、それには時間がかかる。


我々としては上層部の許可を待つ余裕は無いと考えた。


そこまでは良いな? 」


「はっ」


「そこでだ、薬の材料費は当面、私が支払う。


今回、つぼ5個分は”のど薬”を確保したい」


「はっ」


「薬確保の為、ギーグ分隊は隊員ジミーとビナータ女史に協力し


”のど薬”を作成してもらいたい。」


「はっ」


「ん、では速やかな任務遂行を期待する。退出してよし」


「はっ! 失礼します」


執務室のドアの外で


「ギーグ分隊長、申し訳ありませんでした。まさか”のど薬”とは」


「ジミーさん、のど薬ってエルさんに飲ませた、あの薬ですか? 」


「ジミー、心臓には悪かったが、まあいいや。


 別に何かやらかした訳じゃなかったんだな」


「ジミー君、休みの日に居ないと思ったら、そんな事やってたんだ」


ドアが開いて、ビナータさんが出てくる。


「ビナータさん、驚きました」


「いやいや、あんたも言ってたろ、薬は使ってなんぼだって。


調子の悪そうなエルザ大隊長に使ったら、すっかり気に入っちまってね


金はここに預かってきたよ。さあ、皆で手分けして材料から集めようか」


「ジミー、作り方はお前が知っているんだから


何をしたらよいか、お前が指示してくれ」


「分隊長」


「それなら、一度食堂に集まっとくれ、見た方が早い」




 食堂にて

  食堂で樹糖の瓶とツボを見せて


「すみませんが、アリアさんと分隊長は樹糖の瓶入りを5本と、


 このサイズの蓋の付いたツボを購入してきてください。


 樹糖はドギーの店で、ツボはその帰りに買ってきました。


 樹糖だけで銀貨10枚以上の高額品ですので


 くれぐれも気を付けて、行ってきてください。」


「ドギーの店なの? 」「銀貨10枚? 」



「俺とリドは中庭でニガの実を摘む、なるべく形の良いのを合計100個だ」


「おう」


「摘み終わったら、ヘタを取って水洗いな」


「わかった」


「じゃあ、行こう」


「じゃあ、あたしはカマドの準備しとくよ」


「お願いします」




 ドギーの店


 【アリア】

「こんにちは、おじさんいますか? 」


「おお、アリアさんか、久しぶりだね」


「はい、今日は上官と一緒なんです」


「はじめまして、アリアの上官でギーグと申します」


「これは、ご丁寧に。そうだアリアさんジミー君紹介してくれてありがとうね。


 ほんとうに、彼には驚かされるよ」


「実はその件でお願いがありまして・・」


ギーグ小隊長が思わず言い淀む


「おじさん、樹糖の瓶入り5本ある? 至急入用しきゅういりようなんだけど」


  「えーーーーーーーー」




  兵舎食堂


「できた・・・・・・」


「疲れた・・・・」


「キツイ・・・・」


「あつい・・・・・」


「なあジミー、この面倒なツボを煮る作業って本当にいるの?」


「ごめん、リド、正直わからないんだけど、


 銀貨2枚分無駄にする可能性があるから、


 これやっとかないと怖い」


「皆、お疲れ様、ジミー パンとお茶の用意できてるよ」


「ビナータさん、ありがとう。・・・・・・さあ皆さん、


 これからの事は他言無用です。」


「なんだ」「なんですか」「バレるとまずいことなのか?」


「この銀貨2枚の樹糖ですが、瓶の内側に少し残ります」


「そうですね」


「それで、もったいないのでパンに付けて


 食べてしまおうかという提案なのですが? 」


 「「「「「「え~~~」」」」」


 「そんなことしても良いの?」


 「悪いなら残念ながら洗って処分するしか」


 「別に犯罪行為ではないし」




 『大変、おいしゅうございました』

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