第1話 1/2の給金

村長の紹介状があれば、


国軍の訓練所までの馬車代と宿代を軍に請求できるらしい。


国軍の師団本部があるカルスマドの街まで4日くらいか?


馬車ではチケットの半券を、宿で宿泊証明を受け取る。


これが無いと請求できない。



カルスマドの街に到着した俺は、真っ直ぐ訓練所に向かう。


訓練所は街の西の外れにあり、訓練所の入り口で村長の推薦書を見せると


すぐ中に入れてくれた。


中に入ってすぐの所に受付で推薦書を見せると


試験はすぐに受けさせてもらえた。



大きな水時計がある部屋、


検査官の合図を確認して、椅子に座ったまま水魔法を使う、


そして1時間後にもう一度水魔法を使う・・・以上 実技終わり。



隣のイスには、黒髪パッツンの女の子が座っている、


確か名前はエルと呼ばれていた。


俺と変わらない身長で、やせ型。


俺は心の中で『花子さん』をイメージした。




その後は文字が読めるか・・・とか、


ちゃんと歩けるか? 走れるか? の確認があって、


ようやく訓練所の入所許可が出た。


訓練所の事務所に馬車と宿の支払い証明を出す。




馬車代と宿代の合計、銀貨6枚と銅貨50枚を返してもらった。


父さんからは、


この金は、取り合えず大事に持っておくように言われている。


「人生何があるか分からんからな。


稼げるようになったら返せよ」


父さんありがとう、男前! 大好きだよ。



この訓練所は街の外れにあって、


男女別の宿泊棟があるけど、訓練は男女一緒だった。


最初の訓練内容はひたすら3種類火・風・水の魔法詠唱と荷物を担いで走る事。


似たような体格のせいか、エルの近くで走ることが多く


自然と話をする様になった。



次は、左腕で杖を構える練習と、


皮手袋の右手で熱い魔石を交換する練習。


杖の向きが狂うと、


分隊長に送られる力の効率が悪くなるらしい。


「顔や視線は動かしても左腕は動かすな」と


さんざん教官に怒鳴られた。




半年の訓練を終えて、国軍のイロハを教えられた俺とエルは、


同期18名と共に、魔物との小競り合いが続く砦の一つ


ガランド砦への配属となった。




まあ馬車で30分もあればニードの街に行けるガランド砦は、


俺の故郷よりは十分都会だった。



魔法士の初任給は2か月で銀貨20枚(20万円くらいか)


訓練期間の手当ても軍が半分出してくれたので、


訓練中半年分の給料、銀貨15枚が手元にある。


衣食住は保証されているし半分は実家に送る予定だ


とりあえず、この15枚は実家へ送る手配をする。


「父さん、ありがとう。借りてた分色付けて返すぜ」


後は砦の中で大体揃うだろ。



砦に向かう馬車の中はとても騒がしい。


まあ半年も一緒にいた連中だから、


大体どんなやつか分かっている。


13歳の子供に自制は無理だろう


などと思っていたら、


馬車の幌が開けられ教官の怖い顔が見えた。



「餓鬼ども、バカ話は控えろ。


 魔法士ならばのどいたわれ。


詠唱の出来ない魔法士等は皮鎧付けて


トロルの前に放り出すからな。」


すげー、しーんとなった。


ガランド砦、ここがこれから俺の職場だ。


ホワイトだと良いな。



『入社式か、前世で社長の名前は憶えてたのに


 専務の名前を覚えてなくて失敗したな。


 今思えば、あれで目を付けられたな』




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