振り返ると赤毛の美女!?

                   *

 

長い間待ち続けたが…。

「全然来ねえ~」

 いつの間にか、青かった空は赤く、夕日になっていた。

「ここ本当に天国か…。もしかして日本国内じゃなく海外の可能性も…」

 まだここにきて誘拐の線を追っていた。

 ―海外なら俺終わりだよ…。いや待てよ…。

 ここで家族の存在を思い出す。

 俺が行方不明なら家族が捜索願を出すはずと考えたが、よくよく考えると家のお荷物がどこかに行って行方不明なら、家族にとって嬉しいことはないだろう。探さないはずだ。

 と考えているうちに、悲しくなってきた。

 深いため息を吐き、地面を向いていていると…。

「ねえ君、どうしたの…」

 と肩を叩かれ、咄嗟に後ろを振りぬくと…。

 そこにいたのは、赤毛で、奇妙な服。というよりゲームとかで出てくる。防具を着ていた。衣装を着て、そういう仕事をしている女性なんだろうと思った。

 俺はやっと人に会えた喜びと安心感で涙を流してしまう。

「あれれ、なんか私悪い事でもしたかな…。奇妙な服を着ているけど、何処かの民族なの」 

 と不思議そうに聞く彼女。自分の服装をよく見る。

 青いパーカーと赤い短パンと普通な恰好だろう。

 ただ似合っていないという事だろうか…。―民族という悪口…。

「というか…。君、本当に大丈夫。迷子になったの…」

 と心配そうな顔をしている彼女に俺は「実はコンビニで」経緯と今を話す。

「で、胸が痛くなり、倒れて目が覚めたら、ここ大草原に…。という形で」

 と言うと彼女はまた不思議そうに顔になった。

「そのコンジニって言うのかしら、ここら辺では聞かないけど…」

 その発言にその時は違和感じなかった。ただ、ここはド田舎だろうと理解した。だから、俺は優しく「ここはどこの県ですか…」と聞くと、彼女は頭を傾げ、こう言った。

「え、どこのけんってよく分からないけど、ここは;名もない地;サンホン王国の領土よ」

「え…何所って、」

 その時、時間が止まったかのように感じた。

 ―ここは、日本じゃあないのか…。

辺りを見るが、日本にはないだろう。海外にあるような大草原。といい、彼女の服装、言動を見る限り、日本という可能性は低い。だが、言語が一緒。という部分でさらに謎が深まる。

 彼女を放置して考え込んでいると、彼女は気まずく感じたのか、「あぁそういえば、自己紹介がまだだったわね」と手を差し出してきた。

 妙な不気味さと考えても、分からない気持ち悪さを抱えながら、手を握る。

「私の名前は、ミネル・カンパネラ。皆からカンネラと呼ばれているわ」

「俺は木売良人だ。よろしく」

 と言うとまたもや不思議そうな顔で「変わった名前ね」と言われた。

 握った手を上下に振り、放し、ひと通り挨拶を終わらせる。と、彼女は空を見上げた。

「あら、夕方も終わりそうね…。ここ、拠点にはぴったりだし、ここに拠点を建てるから。あなたも泊まっていきなさい、夜は危ないのよ」

 ―拠点を…って、テント的な物か。でも、どこに…。

 拠点を立てると言うが、彼女の軽装で、瓶二つほど入る鞄しか背負っていなかった。とてもテント的な物を持っている様には思えなかった。

 困惑しながら、突っ立っていると…。

「ちょっとごめんね。集中したいから静かに待てって…」

 俺は頷くと、彼女は目を閉じて、何かブツブツと言い始めた。そして、大草原に響くほどの大声で、「ログハウス」と言った。と同時に、地震が発生した。

「な、なんだ…」

 大きく揺れる地面に流され、ふらつき始める足。そして、カンネラが立っている目の前の地面が段々盛り上がっている事に気が付く。

 その地面は見る見ると盛り上がり、家の様な形になり、白い煙が辺り一面に充満し、俺はせきこむ。

 煙が、風に流され、充満した煙は徐々に減っていき、盛り上がった土があった。場所を再び見ると…。

「ほら、出来たわよ。良人も入りなさい」

「え」

目の前にあったはずの土は無くなっており、いつの間にかその場所にログハウスが立っていた。

 ―どうゆう事だ…。

 困惑しながらも、ログハウスの中に入っていく。

「す、すげー」

 ログハウスの中は、意外に豪華だった。似合わないシャンデリアに、六人ほど並んで座れる机の上には美味しそうな七面鳥と赤ワインに山積みにあるサラダ。と見てお腹が鳴る。

「まぁ、食べましょう」

 お言葉に甘えて、椅子に座り、七面鳥を食べる。が…。味もする。腹も膨れるのに、食べてない様に感じる。今まで経験したことのない感覚になる。

「あ、言い忘れていたけど、この飯はお腹が一杯になるまでにね」

「分かった」

 何故なのかは聞かなかった。気になったまま、ご飯を食べ終わり、カンネラと俺は寝室に移動する。

 寝室には右側に窓とそれぞれ、別のベッドが用意されており、少し残念に思いながら、横たわる。

「じゃあ、ランプ消すわね…」

 部屋は暗くなり、カンネラは毛布を深く被る。

 暗い部屋の中、独り天井をじっと見つめた。

 ―今日は色々あった。が、

今までの事を振り返る。

 胸の痛みでコンビニに倒れ、目が覚めると目の前には大草原だった。それから、赤毛の美女と出会い。同じ寝室で寝ている。

 だが、中でも印象的なのは、カンネラが「ログハウス」と叫んだ瞬間、地面が盛り上がり、この家が建った事だろう。明らかに、カンネラが意図的に出したと言えるだろう。

 ―俺もできるかな…。明日、聞いてみよ。

 と期待を胸にして、その夜眠りについた

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