第3話 クラシックへの道

 同月21日にはキャリア6戦目となる京都3歳SOP(現京都2歳SOP)に出走。このレースを当時のレースレコードタイムで勝っている。

 

 ここでまたも余談。

 この当時すでにこの時点で6戦を有しているが、未だに残るジンクスにも繋ってくる事象である。それは朝日杯3歳S(現行朝日杯2歳S)までに6戦以上を走っている競走馬は勝てないというモノ。実際にはそんな事は無いのだが、戦績を比べると確かに勝利数は少ない。

 これは当時のレースプログラムと体形にも関係がある。現行のレースプログラムは得意距離という概念があり、レース体形も距離ごとに新たに生まれたりしているが、ナリブーが現役時代はまだその概念が薄かった。つまり100m走が得意な人間が、マラソンが得意な人間と一緒に走るレースが多かったという事。その逆も然り。なので得意な距離体形というよりも、当時は欧州に真似たレースプログラム体形だったと言える。


 ナリブーは父ブライアンズタイムが中・長距離が得意であり、母パシフィカスは欧州の重い血統を持っていることもあって、クラシック距離~長距離が範囲な競走馬と思われていた。したがって選ばれるレースは長い距離が多いのだが、当時のレース体系では3歳戦(2歳戦)の距離は短いものが主流で2000mを越えるレースは極わずかだった。そのため勝ち上がるのに苦労する競走馬が多数出ている。ナリブーもそのうちの一頭ではあるのだが、ナリブーは気持ちの入り方次第でレース展開が左右されるためか、あまり距離は関係なかったように感じる。個人的見解だけど。


 しかしナリブーに関してはその性格のおかげもあってか、6戦目にはOPクラスというレースにも勝ち、順当さを見せつける形になった。


 そしていよいよG1レースへと駒を進めることになるのだが、ここで懸念されるのが6戦闘ってきたが故の体調の事。レースの前には各社、各関係者やファンの間でも論争になっていたが、そんな話は関係無いとばかりに、当のナリブーは断然の一番人気という訳ではない評価を覆すがごとく、着差以上に強さを見せて完勝してみせた。


 こうなってくると、俄然来年度のクラシック最有力候補となったかと思われるのだが、実はそうでもなかった。これは前述したとおりに性格的なものが考慮されたから。その証拠が朝日杯での人気オッズである。個人的にではあるが断然人気と言われるオッズは2.0倍以下だと思っている。1.0倍に近いほど断然人気と言えるが、この朝日杯の倍率は約4.0倍であり、断然とはいいがたい。という事はナリブー以外にも有力と思われている競走馬は他にもいるということになる。


 この時はまだ断然の有力候補ではなく、ただの有力候補の一頭にすぎなかった。しかしG1勝利は輝かしい実績となり、この年のJRA賞最優秀3歳牡馬に選出された。



 ここまでが3歳時(2歳時)時点のナリブーである。




 ここからはクラシックへと至る前に、前述にも出て来ているナリブーの性格・気性面に関してのお話をしておこう。


 実はナリブーの問題点として、デビューレース後間もなくからこの点について関係者の間で問題提起されていた。


 ナリブーはレースが近づいてくれば来るほど、関係者のその緊張感を読み取る能力が高いのか、以上にテンションが上がる傾向に有った。更にレース直前には一層上がるので苦労していたという。


 その苦労の一端が実はローテーションにも表れていた。この朝日杯までに6戦していたという事実の裏には、実は金銭的な思惑などに関係なく、一つの事を消化するためだけに行われていた事だったのだ。それは後に関係者の口から語られるのだが、その内容は「ローテーションの間隔を詰めることによって、多くのレースに出走させ、ナリブーから余計なエネルギーを発散させること」、「そのように組むことによって異常に興奮することを抑制しようとした」というモノだった。


 しかしこの症状は何故かトレーニングセンター内にいる時にしか現れず、休養するために牧場にて放牧されている時は一切出ていなかったという不思議な話もある。そのため大久保氏は「牧場ではおとなしい目をして穏やかで優しいのに不思議だ」と語っている。



 もう一つの問題が憶病な点だ。これも前述しているが、自分の影にさえ驚いてしまうという性格が災いして、実は走っている時の自分の影にもびくびくと驚いているという事が言われていた。この問題を解決させるために用いられたのが、代名詞ともなっているシャドーロール。このシャドーロールは一般的には鼻頭らにつける事でルックアップさせることができ。下を見る機会を減らすことが出来ると言われていて、その為に集中力が増すことで実力を発揮することが可能になると言われている。

 

 因みにナリブーは、シャドーロールを初めから装着していたわけではない。その始まりは京都3歳ステークスであり、この時のレースレコード勝ちこそがシャドーロール装着の効果が発揮されたレースである。



※ 後書き

 お読み頂いた皆様に感謝を!!


 作中には競馬用語が出てきますが、良く分からない方もいらっしゃると思います。

 そんな時はお気軽に作者までメッセでもいいので聞いてください。

 なるべくは感想欄はそのようなことに使いたくないので、よろしくお願いしますm(__)m

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