第2話 デビュー
現在の競馬において競走馬の年齢は満年齢にて表記されています。例で言いますと、現在は2歳表記が当時は3歳表記。競走馬のデビューは当時3歳夏からでしたが、現在は2歳夏からなどというように、同じ年齢でも表記が違っていました。ナリブーが競走馬として活躍していた当時は、まだ数え歳表記でした。この作品の中では慣れている方だと分かりますが、慣れない方だと分かりづらいと思いますので、現行での表記にて話していきたいと思います。
1993年にナリブーはJRA(日本中央競馬会)の馬体検査を受けて、同年5月19日に
この騎手決定にもドラマのようなエピソードがあって、後に南井騎手自身が語っているところによると、「君はダービーに勝った事があるか?」と大久保氏に尋ねられ、「ない」と答えた。すると大久保氏が「それならウチの馬に乗って勝ってくれ」と持ちかけられたと言っています。
しかしこのエピソードですが、実は発信は南井騎手側からのみで、大久保氏はその発言を否定しているんです。
本当のところはどうなのか気になる所ではありますが、ファンからしてみれば『あった』と思っていた方が、良い話的にドラマチックな展開です。
南井騎手のナリブー初騎乗時に抱いた想いも後に語っていますが、あのオグリキャップに騎乗した時と同じ感触・感覚で「凄い!!」と思ったそうです。南井氏もオグリに騎乗していますので、その競走馬としての能力を十分に知っています。そのオグリと同じ感覚を持ったという事は、その後の活躍も予感していたのかもしれません。
同年の8月15日、それまで調教を積んできたナリブーは2歳新馬戦で競走馬としてデビューを果たします。当時すでに1歳年上の兄ビワハヤヒデが活躍を始めていたことから、『ビワハヤヒデの弟』としての触れ込みで、2番人気に推されます。レース展開にも恵まれず、自慢の脚も使いどころのないまま2着に敗戦。1着になった馬とは力の差ではなく競馬としてのレース運びの上手さで敗れた感じがありました。
ここで大久保厩舎での思い切った采配と言いますか決断が下ります。なんと中1週にて同競馬場開催の新馬戦に再び挑み、見事勝利を収めることが出来たのです。
ここでちょっと余談になりますが、競馬の競走プログラムは新馬戦に一回しか出られないという事は無いのです。同一開催の新馬戦であれば出られます。しかし、開催場所が変ってしまうと、新馬戦には出られなくなり未勝利戦へと回ることになります。もちろん未勝利戦とは新馬戦にて勝てなかった競走馬が出ることになりますが、レースの綾等にて敗れた競走馬も多くいる為、新馬戦よりも必ずしもレベルが低いという事はありません。新馬戦に出て居なくても未勝利戦からも出走することが可能なため、その中には秘めた能力者も少なからず存在しています。
現在においては競走馬の出走ローテーションに関して、かなり余裕を持ったものになっています。それはいかに競走馬に負担をかけないようにするかという事が、科学的にも実践的にも考慮されてきた事で出来たモノ。しかしナリブーが現役競走馬当時はまだそこまで浸透していなかった概念であり、実行するのは少数派なのでした。
なので、この中1週というローテーションが実現したわけですが、現行競馬ではあまり推奨されていません。こういうところにも当時の経済動物として競走馬が思われていたという証左にもなるとは思いますが、これはあくまでも個人的見解。実際に関係者の想いは別にあったかもしれないので、そこは十分にご理解いただきたいところです。
話は戻ってナリブーの事を。
初勝利を挙げたナリブーは3戦目に重賞へと挑戦します。それが函館3歳ステークスG3(現函館2歳ステークスG3)。ここでもスタートで出負けると、その後巻き返す様子もなく6着に惨敗。4戦目におけるきんもくせい特別で当時の走破タイムは2歳馬としては破格の物を叩きだし勝利を掴むと、続いて11月6日にはデイリー杯3歳SG(現デイリー杯2歳S G2)へと駒を進めます。ここでは走破タイムはとても秀逸でしたが同走していた馬に及ばず3着に沈みます。
この頃から少し、ナリブーの能力に疑問符が付くこともありました。実際に走りを見るとレース毎にムラがある感じが見て取れました。それは性格的なものだったのか、年齢的なものだったのかは分かりませんが、この当時から『勝つときはめっぽう強く勝つが、負ける時は惨敗』というイメージが付き始めます。
※後書き
お読み頂いた皆様に感謝を!!
作中には競馬用語が出てきますが、良く分からない方もいらっしゃると思います。
そんな時はお気軽に作者までメッセでもいいので聞いてください。
なるべくは感想欄はそのようなことに使いたくないので、よろしくお願いしますm(__)m
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