第13話 ちきゅうの学校!すんごい楽しみ!

あたし、ノア!


原界という別の世界から「ちきゅう」にやってきた最強無敵の大魔導士!

とは、言っても「ちきゅう」では元の世界の半分も力がつかえないけどね。


この世界にやって来て、もうすぐ1週間になるよ!

大分、「ちきゅう」の文化に慣れてきたかな?


出会ったナユタはとっても良い娘で、もうすっかり仲良し!


イカの邪神、流留とは…まぁ、良い距離感?


カフェでの、ばいとも決まってるし、ちきゅうの毎日、楽し~♪


何でも、あたしも学校に行くんだって!

お店のリニューアルオープンの準備もあるし…


もう、楽しみしかないよね?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ノアが地球にやって来て早、1週間。


数度の混沌獣の襲撃はノア、ナユタ、流留の活躍により撃退。


ノアは徐々に現代社会に馴れてきていた。



今、ノアはナユタの家のリビングのソファーで足を組、珈琲を飲みながらタブレットをチョイチョイと弄っている。

タブレットの扱いも現代社会に馴れるためのもの。

ただ、遊んでいるというわけではなく、アプリで色々と勉強中なのだ。


話しは少し前…


「ノアと流留ちゃんにも学校に行ってもらいます!」

という、ナユタの一言。

「学校!行く行く!!」

ノアはナユタの提案に超乗り気である。

かっぱえびせんを食べ、ナユタの話しには興味なさげな流留。

「流留ちゃん?学校は嫌ですか?」

「うぬ?叡知の神である妾がそんなところに行く必要はない」

素っ気ない流留の顔をニコニコと微笑みながら覗き込むナユタ。


「流留ちゃん?お姉さんの言うこと、聞けませんかぁ?」


ー流留ちゃん?お姉さんの言うこと、聞けませんかぁ?ー


ひぐっ!?


流留がビクリと身体を震わせる。


「な、何を言うておる。妾は良い子じゃ。あー、がっこうとやら行きたいなぁー」



ナユタのニコニコしながらの「お姉さんの言うこと聞けませんかぁ?」に逆らうと、おしおきが待っていることをさすがの流留も学習したのだ。


「はい♪では、2人にはこのタブレットを使って、一般的な知識を身につけてもらいます」

タブレットを見て、ノアの目が輝く。

「あっ!それ!使ってみたかったのよね!」

「うふふ。じゃあ、使い方を教えるわね?」

ナユタはノアと流留の間に入る。

そして、タブレットの電源を入れる。

待ち受け画面にどどーんと、ハダカデバネズミの写真がアップされる。

「な、なにこの気持ち悪いネズミみたいなの…」

「あら!ハダカデバネズミよ?カワイイでしょ?」



。。


。。。


流石のノアもノーコメントである。


「まぁ、ハダカデバネズミの可愛さはまた今度たっぷり話すとして、この画面になったら…」


ナユタはセキュリティ解除のパスワードを入力する。簡単なパスワードで直ぐに覚えられる数字だ。

「ノアはこのアプリで、流留ちゃんはこのアプリでお勉強です。時間も決めましょう!午前中はノアが使う。午後は流留ちゃん。夜は話し合いで使う」

ナユタのタブレットルールに承諾する。

「分かったから!はやく!はやく!その、たぶれっと使わせてよ~♪」

はいはい、と言わんばかりにナユタはノアにタブレットを渡す。


こうして、タブレットの使い方を覚えたノアは、現代日本の学校に通うために、一般的な知識や常識。高校生としてのある程度の学力を得る為にタブレットで勉強をしている。


尚、ノアは興味のあることはとことんのめり込むタイプである。

元々いた世界とは全く違う現代日本、地球の文化に興味津々。勉強は、はかどっている様だ。


「あっ、もうお昼」

約束のタブレットを使っていい時間が来てしまった。

「しょうがない。お昼食べよ♪」

タブレットを閉じたノアはキッチンに向かう。


ーテーブルのパンを食べてね。おかずはこのプレートを電子レンジに入れて「温め」を押すだけよー


料理のできないノアに、ナユタは毎日お昼を用意してあげているのだ。

鼻歌を歌いながらお昼のプレートをセットして、電子レンジを使う。

「いやー、でんしれんじって便利ね~♪原界にも欲しいなぁ…」


ーテーブルのパンはトースターで2、3分焼くと美味しいわよー


すでに切り分けられているチーズ入りのちょと固めのパンを数切れトースターに並べて、スイッチを入れる。

「ムッフフ♪このとーすたーも便利よね~。あたし達の世界だとこんな風にパンを焼くことはなかったからな~」


ーこれに水を入れて、ここにセットしてスイッチを入れてね。直ぐにお湯が沸くから、このスープカップにこれを一つ入れて飲んでね。インスタントの珈琲も淹れて飲んでね。でも、水以外のものを入れると壊れてしまうから絶対に入れないでねー


カチッとちょっと馴れてきた動作でケトルのスイッチを入れる。

「でも、やっぱり一番便利なのはこのけとるよね!こんなにカンタンにお湯が沸くなんて!信じられないよね♪」

レンジで「チーン!」

トースターも「チーン!」

ケトルのお湯も沸いたのでスープカップにフリーズドライのミネストローネを入れお湯を注ぐ。

「サラダはれいぞうこっと」

ノアは自分のランチョンマットの上にプレート、焼けたパンを乗せたお皿、サラダの小鉢、スープのカップを並べる。

「こんなにあっという間にランチ♪すんごいな~ちきゅう!」

プレートにはチキンのソテー、イカのフリッター、スクランブルエッグ。サラダはケールなどサラダリーフ、水菜、ダイスカットされたトマトにじゃこ。味はつけてある。

「おいしそー。いただきま~す♪」

ノアはテレビを見ながらナユタの用意してくれたお昼ご飯をのんびりと食べる。

食後の珈琲も飲み終わり、時間を見る。

「あっ!2時に美人とマスターが店に来てって言ってたっけ」

ノアは食器をキッチンに持っていく。


ー食器はスポンジにこの洗剤をつけて軽くあらったら、隣の籠に並べてその籠のままこの機械に入れて蓋をすれば勝手に洗ってくれるわー

食べたものは自分で片付ける。

ナユタとの約束である。

ノアは言われた通りに食器をあらい、食洗機にセット。

「いやー、このしょくせんき、すんごい!あたしでも洗い物終わるよー♪」

食洗機に洗い物をセットしたノアは部屋に行き、着替え。

鏡の前で身嗜みを整える。

「よし!今日もカワイイ♪ちきゅうのファッション、たのしー♪」

カチッとお気に入りの大きめなヒップバッグをつける。

「流留~、あたし出掛けるからね~。おとなしくお留守番しててよ?」

「うぬ?よきにはからえ」

お風呂場で水風呂で微睡んでいた流留に声をかけ、ノアはカフェに行く。



「こんにちわ~♪」

ノアは元気よくカフェのドアを開ける。

「あら、早いわね」

「おう、来たな」

カフェにやってきたノアを車椅子の美女、鳳美人フォン・メイレンと不躾髭の少しだらしない男性、マスターことタカムラナオトが出迎える。

今、このカフェはリニューアルオープンのため、改装中だ。

とはいえ、大きな手入れはもう済んでおり、後は新たな目玉メニューをどうしようか?という話である。

「おう。ドリップのブレンド珈琲を出したいんだけどな、お前さんならどうする?」

「ん?この店の豆の取り揃えなら常時4~6種類くらいのブレンドができると思うな~。だから、それぞれの特徴をメニューに書いてお客さんの気分で選んで貰うってのは?」

なるほどな。と、感心するマスターと美人。

「それで行きましょう」

早速珈琲のメニューが決まる。

「後は、どうしましょうか?」

「まー、エスプレッソとカプチーノくらいはやるか?」

マスターが提案する。

「えすぷれっそ?かぷちーの?何それ?」

「ん?知らねぇのか?」

「うん。あたしの世界にはなかったよ?」

「そうか、じゃあ、ちょっと待ってろ」

そう言い、マスターは手早くエスプレッソマシンでエスプレッソを抽出する。

その様子を目をキラキラさせながら見るノア。

「ほら」

エスプレッソ様の小さいカップをノアの前に滑らす。

「へぇ~、これが"えすぷれっそ"ね」

そう言い、カップを口許に持っていき、香りを嗅いでから1口飲む。

!?

初めて飲むエスプレッソの味に目をぱちくりさせるノア。

「何て言うか、珈琲が圧縮されてる感じね。結構、苦いけど、何かそれがスッキリするね」

ノアの感想に微笑むマスター。

「ねえねえ、かぷちーのってのは?」

エスプレッソを飲み干したノアは次の珈琲をねだる。

そこに


「こんにちわ」


学校を終えたナユタがやってきた。

両手に食材の入ったトートバッグを持っている。

「学校終ったんだ。何その食材?」

「これ?これは美人さんに頼まれてカフェの新しいメニューをわたしなりに考えてきたの。直ぐ、取りかかりますね」

エプロンをしながらナユタはキッチンに向かう。


水を張った鍋をセット。

手際よく頭付きの海老を分解。一部はボールにいれ、調味料をいれて擂り身に。

餃子の皮を取り出し、擂り身とカットした海老の身を手早くくるむ。

鍋に蒸籠をセット。包んだものを並べていく。

蒸し上がる間に、今度はイカを擂り身にしていき、擂り身を焼売の皮で包む。

そうこうしていると餃子が蒸し上がる。

「はい、海老餃子です。そのままどうぞ」

出来立ての海老餃子を3人に振る舞うナユタ。

「貴女、点心も作れたのね…」

「はい。中国人のおばに一通り仕込まれました」

烏賊焼売が蒸し上がる間に、ナユタは中国茶を用意。

「なるほど、飲茶ね?」

「はい。通学の途中で思い付きました」

ナユタと美人の会話についていけないノア。

「てんしん?やむちゃ?なにそれ?」

「フフ♪点心というのはね…」

ノアに点心と飲茶について説明する美人。

「へぇ~、やっぱり、ちきゅうのご飯の文化面白いね!」

次々に出される点心を食べながら感心するノア。

「おう。飲茶は良いアイデアだがよ、手間かからねえか?」

「いえ。タネは事前に仕込めますし、言う程の手間ではありません。夜のお酒のおつまみにも使えますし」

「そうね。点心なら私も手伝えるから、飲茶セットをメニューに入れてみましょう」

これで食べ物のメニューは、カフェらしく

スパゲッティから、ナポリタン、ミートソース、カルボナーラ、ペペロンチーノ。

ご飯ものでオムライス。

「何なら、炒飯でもやります?」

「そうねぇ、コンロの火力がちょっと足りなくないかしら?」

「あ、そこなら対策済みです。おばから普通のコンロでも美味しく作れるやり方教わってますし…」

「へぇ、じゃあ、1つやってみて」

ナユタの提案に美人は1度食べてから、と思ったようだ。

ナユタはフライパンに火をかけ、油をひく。

鍋を温めている間にネギを微塵切りにし、持ち込んだ叉焼の端を刻み、玉子を2個割っておく。

程なくしてフライパンから煙が立ち込める。

ナユタは玉子を投入。少し、玉子を崩したらご飯を投入。お玉でご飯を潰していく。

塩コショウを少し振り、鍋を振る。振ってはお玉でご飯を整え、パラパラになるまで炒め、そこでネギと叉焼を投入。フライパンのヘリに醤油を滴し鍋を煽り、お玉に炒飯を取っていきお皿に盛り付ける。

「どうぞ」

「うん!良い手際ね!」

3人はナユタの炒飯を試食。

「おいしー♪こんなお料理もあるのね!てんしんってのもおいしかった!」

「うん!これならお客様に出せるわね!ナユタは誰かさんと違って料理のレパートリーが多いわね!」

「うるせえ!」

ナユタは3人のやり取りを見ながら、次の皿を出す。

「うふふ。こんなのはどうですか?」

ナユタは炒飯の上にオムレツを乗せた皿を持ってくる。

そして、3人の前でオムレツにナイフを入れる。

ご存知ふわとろオムライス、ならぬ、ふわとろオム炒飯である。

「それに、これをかけますよ」

「お、お前それは!」

「うふふ。マスターが隠していた特製デミグラスです」

デミグラスの良い匂いがカフェを満たす。

「さあ、食べてみましょう!わたしもまだ味見してないので」

4人はそれぞれデミソースのふわとろオム炒飯を口に運ぶ。

「おいしー♪何これ~♪」

「確かに、ナユタの炒飯も見事だけど。ナオトがこんなに美味しいデミグラス仕込めたことが私には驚きだわ」

「うふふ。予測通りです。マスター、デミグラス美味しいですよ」

皆に誉められて少し照れるマスター。

「オムライスをケチャップかデミか選べたらどうかと思ったのと、ハッシュでも出そうと思ったからよ」

マスターは女子3人に背を向けてポリポリと頭を掻く。

「はっしゅ?」

「お料理の名前よ。ハッシュドビーフ。牛肉と玉ねぎとマッシュルームなどのキノコを炒めてデミグラスで少し煮るの」

「へぇ~、美味しそう♪」

ナユタとノアの会話を聞きながら美人はタブレット端末を操作する。

「よし。これで大方のカフェの食事のメニューは決まりね。後は私の仕事だわ」

こうして、賑やかにカフェでの急遽始まった試食回は幕を閉じていく。

「おう。ノア」

「なに?」

「エスプレッソとカプチーノの淹れ方教えてやるから、また店に来い」

「うん!でも、明日はダメなんだ」

「何でだ?」

「ムッフフ♪ナユタと一緒に"すまほ"を買いに行くの!」

そうなんです。とナユタもうなずく。

「そうか。まー、午後はだいたい店に要るからよ。スマホ買った後とかでも何時でも来いな」

数字に強いノアは美人と一緒に原価率の計算を、ナユタとマスターはメニューの打ち合わせを進める。


「あら、もうこんな時間ね。2人はそろそろ帰りなさい。流留をそのままにしてるんでしょ?」

「「あっ…」」

時計は既に19時を回っていた。














あっ!!!



ナユタとノアが家に帰ると流留が玄関で仁王立ちして待っていた。

髪の毛も些か逆立ちぎみ。


「ゴメンゴメン。夢中になっちゃって」


「いや!今日という今日は許すまじ!」


とりつく島もないくらい怒っている。


「流留ちゃん。お姉さん達、流留ちゃんを待たせちゃったお詫びに海老さんをたくさん買ってきましたけど…ダメ?」


海老と聞き髪の毛がふわりと戻る。


「ほう。よき心がけぞ。妾の何たるかがようやく分かってきたようじゃな。はよ餌の支度をせい!」


踵を返し、嬉しそうにリビングに戻る流留。

ソファーにぼふっと座りタブレットをピコピコいじり出す。


「娘!」

「なあに、流留ちゃん」

「妾はこの"えびちり"とやらと"えびまよ"とやらが所望じゃ。作れ」

タブレットの料理サイトを開いて見せる流留。

「まあ!流留ちゃん!タブレットで検索出きるようになったのね!お姉さん、感心しちゃった!直ぐ作りますね」

その前に…

ノアが手提げの袋を流留に渡す。

「なんぞ?この袋は」

「ナユタの作った"てんしん"よ。あんたの分持って帰ってきたの」

流留はノアから袋を強奪し、覗き込む。

ヒクヒクと匂いを嗅ぐ。

大好きな海老の匂いに満足気な表情。

「ほほぅ。小娘にしては殊勝な心がけぞ。妾は寛大じゃ。今日の事は不問にしてやろう」

そのまま、パックしてあった海老餃子や海老饅頭、海老焼売を食べ出す流留。


大好物の海老を喜んで食べる流留。


その時…



「むぬぎょうわあめらっ!」


人には発せられない言葉を発する流留。


顔を青くしてソファーにひっくり返っている。



「あっ、間違えて烏賊焼売渡しちゃった…」


流留の悲鳴?を聞きキッチンから出てくるナユタ。手にはエビマヨの乗ったお皿を持っている。



「こ~む~す~め~ぇ~…」


ゆっくりと起き上がる流留。


「今日も妾に"共食い"をさせるとわ!許すまじ!そこになおれ!」

「あはは、ゴメンゴメン」

「笑い事ではないわぁ!」

イカの邪神である流留はイカを食べると気絶する。共食いだから。

内心、ノアはその様が面白くて事あるごとに食べ物にイカを混ぜてからかっている。最も、今日は素で間違えたわけだが…


「ハイハイ。流留ちゃん。怒らない、怒らない。エビマヨ要りませんかぁ?」

「いる」

「はい。じゃあ、自分のお席に座りましょうね?」

ナユタには逆らえない流留は少し不満ながらも自分の食卓の自分のテーブルにつく。

「はい。エビマヨですよ」

「おお!でわ!」

手掴みで食べようとする流留にニッコリ微笑みかけるナユタ。


ひぐっ!?


流留はこれから起こるであろう事を想像し、両手を合わせる。

「い、いただきますなのじゃ」

「はい。お姉さんに注意される前に良くできましたね、流留ちゃん」


お箸で、エビマヨをつまみ、はむっと1口。

不機嫌だった流留の顔が一気にご機嫌になる。

「美味である!流石であるぞ、娘!」


「はい。エビチリはまだだけど次のお品よ」

次にナユタは麺料理を出す。

「なんぞ?これわ?」

「まあ、食べてみて」

ノアも、とノアの前にも麺の丼を出す。

言われるままズルズルと麺をすする。流留。

「むお?海老の風味がすごいの!これも美味!」

「ホントだ海老がすんごいわね」

ナユタは嬉しそうに語る。

「海老の頭でお出汁をとったのよ」

美味しそうに食べる2人をナユタは微笑みながら見ている。

自分の作った料理を美味しそうに食べてくれる人を見るのがナユタは大好きなのだ。

「はい。エビチリですよ」

ナユタ大皿にエビチリを持ってくる。

皿の中には身のエビチリと頭のエビチリが混在していた。

「お出汁をとった後の頭をカリッと揚げてから身と一緒に炒めたものよ」

「ふむふむ。旨そうである!」

テーブルにお皿が載せられると流留は待ってました!と言わんばかりにエビチリを取り、食べる。


「ふむふむ。美味!美味!び……」


喜んで食べていたところ、動きがピタリと止まる。





数秒後




「ぬがめらやさにへわれっ!」



急に口を押さえて人間では発音できない音を発しながらのたうち回る。



「何が、あったの?流留ちゃん!烏賊は入ってませんよ?」


ガクガク震えながら、声を搾り出す流留



「か…」



「「か?」」



「からいわ…」


ガクッと力尽きる。


「あっ…お子様の辛さにするの忘れた…」


「確かに辛いけど、イカって辛さに弱いのかな?」

「さあ…」


この賑やかな食卓が3人のささやかな日常となっている。




それから数日後の朝。


ノアは姿見の前で自分の姿を何度も見ている。


胸元に大きなリボンのセーラー服。

夏服なので爽やかな水色と白のシンプルな配色。

白いソックスにはクロスのアクセント。


「ついに、学校ね!このせーらーふく、カワイイ!さっすがあたし♪」


「ノア?準備はいい?そろそろ行きましょう!」

「うん!」


学生鞄を持ちお気に入りのヒップバッグをカチッと身につけるノア。


ナユタと同じ高校に通うようになるノア。

ナユタはこの街にある県立、聖塚きよつか高校に通っている。

ナユタのマンションから見れば駅の反対側にあり、メインストリートから少し奥に入ったところにある。

徒歩で20分ほど。比較的歴史のある高校である。

聖塚という名前からクロスをモチーフにした校章をしているが、とりわけミッション系の高校ではない。

学校全体として生徒の生活の環境作りに注力している事が有名。

勉学、部活などの環境もよく、一部の部活は県内の有名市立高校に迫る実力のある部もあるのだ。

学力の方も進学校さながらのサポートで生徒の行きたい大学を目指した勉強のやり方を教えている。

そんな高校にノアは別の世界から編入してきたわけだ。

ナユタは学校側との打ち合わせ通にノアを職員室に送り届けた後、教室に行く。

ノアは改めて学校の説明を聞き、自分のクラスに担任の先生と一緒に行く手筈になっている。

「失礼します」

校長室にノアの担任が入室してくる。

眼鏡に髪を夜会巻きにしている40歳くらいの女性。雰囲気から厳しそうなイメージを受ける。

「げっ!せ、先生…なんでここに…」

担任の教師がかつての自分の担任に似ていたことから、つい、口に出てしまうノア。

「芹那さん、でしたか?初対面なのに『げっ!』等とはとても失礼です。気を付けなさい。今日は転校初日ですから大目に見ますが、次からは指導対象ですよ」

「あはは、すいません。あまりにも前の先生にそっくりだったのでビックリしちゃ、いまして…気を付けます」

後頭部を掻きながら誤魔化すノア。

かつての先生にも言葉遣いには厳しくしつけられたノア。それこそ、言葉遣いが悪すぎて半日以上ぶっ通しでお説教を喰らったこともある程だ。

「さて、では教室に行きますよ」

担任につれられて、教室に向かうノア。



朝のHR前。賑やかな教室。話題は転校生の事で持ちっきりだ。

「女の子らしいよ?」

「カワイイのかな?」

「どんな子かな?」

等と変わった時期の転校生にみんな興味津々だ。

(転校生があの大魔導士ノアだなんて、誰も思いもよらないんでしょうね)

ナユタは噂話に耳を傾けながら少しだけ口元を緩める。

「はい。皆さん、着席」

担任が入ってくる。

形式張った朝の挨拶を終え、担任が転校生について切り出す。

「もう、すっかり噂になっている様ですね。今日は転校生を紹介します。どうぞ」

担任の合図のもと「はーい!」と元気よく返事をしてノアが教室に入ってくる。

長いダークブラウンのはねっ毛髪をなびかせ、背筋を伸ばし、颯爽と入ってくる。

ノア自慢の大きな胸が歩く度にたゆん、たゆんと弾み、。ノアのワクワクしている心の弾みを現す様に。

勿論、一瞬でその大きな胸は男子からも女子からも注目される。

教壇の前、教室の中央にたったノアは胸を張り、すうっと息をすって、ウインクしながら元気よく挨拶をする。



「芹那ノアよ!よろしくね!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こうして、あたし、大魔導士ノアのちきゅうでの学校生活が始まったわけ!


早速、注目の的!

あたしがカワイイからだろうけど、大きな自慢のおっぱいにみんな注目しすぎ♪


友達たくさん出来るかな?


ワクワク!ドキドキ!楽しみしかないよね!

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現代に転移した魔法使いと地球の守護者の少女の地球防衛大作戦 杵露ヒロ @naruyamato

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