第12話 ナユタ、はじめての戦い

「なるほどね~。こうして、あなたはガイアスに乗ることになったんだ~」


珈琲を飲みながらノアはわたしに話しかける。


「それにしても、何か、こう運が良いのか、悪いのかわからねぇなぁ」


マスターが電子タバコに火を点けようとしますが、美人(メイレン)さんが、ギロリと睨みます。


さすがのマスターも美人さんに睨まれたらタバコは吸えないみたいです。


「それで、貴女は1人でどう、戦ったのかしら?」


美人さんも珈琲を飲みながらわたしに問いかけてきます。


「はい、あの時は…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ドン!


力強く震脚を踏み、一気に混沌獣との間合いを詰める。


敵の接近を察知した混沌獣が腕による攻撃を仕掛けてくる。

パンチではなく、大きく振りかぶり鉤爪状の手で切り裂こうとしている動きね。

わたしはその腕を外側に捌く。

こうすることにより、相手の胴ががら空きになります。

そこに、力強く踏み込みながら肘を立てて身体からぶつかる。

頂肘という技です。


一切の手加減なく全力で頂肘を叩き込んだわたし。


胸の部分を大きく凹ませながら激しく吹き飛ぶ混沌獣。


すぅー、と呼吸を整える。


『ほう。すごい威力だ』


誰よりも感心したのはガイアス。


『どうやら、キミは穏やかな見た目とは裏腹に力強い一面も持っている様だな』


えへへ


ちょっと照れるわたし。


長年の鍛練がこんなことで役に立つなんて。


『だが、あの程度で仕留められる相手ではない。油断するな』


はい!


わたしは気を引き締め、構えを取ります。





一方、ちょっぴり前の地上では…


「避難は済んだか?逃げ遅れは?回りのメンバーの確認を!」


お父さんが避難し指示を出しています。


「先生。あれが…」

「ああ、私も見るのは初めてだが、混沌獣とやらだろう…」


お父さんは避難指示を出しながらも冷静です。


「あ、あなた!大変よ!」


そこに、お母さんが慌てて駆けてきます。


「どうした?」

「ナユタ!ナユタの姿が見えないの!」

「なんだって!?」

「あの子、今日も大穴の方で人形の発掘を見学していたみたいなの…」

「まて!あそこは先程崩落…」

「ど、どうしましょう?もし、ナユタがあの中にいたなら…」


そうです。


混沌獣の攻撃で遺跡の大穴は崩落。

わたしは、遺跡の中で転落し死にかけていました。

そこで、ガイアスと出会い命を助けられていた、その時の地上での出来事です。


両親からすれば、わたしの姿が見えなければ動揺しますよね(汗)


ドン!


その時、地下から銀色に輝くボディと鬣をなびかせ巨大ロボットが地下から現れます。


あ、わたしが地下から一気にジャンプしてきた時ね。


そして、そのロボットは混沌獣に立ち向かって行くの。


わたしが頂肘で混沌獣を吹き飛ばした時…


「あれって、この遺跡で発掘していた人形のやつか?」

「おいおい、あのロボット?八極拳使ったぞ」

「混沌獣とかいうのと戦ってくれるのかしら?」


避難していた発掘隊の皆さんがわたしの戦いに注目しだします。



『やあああ!』


わたしは混沌獣に一気に肉薄する。


突き攻撃で牽制します。


今の頂肘の一撃で超至近距離が危険と判断したかのように近づいて来ません。


『ナユタよ、間合いを詰めきれないようだが…』

「大丈夫よ」


混沌獣の攻撃を腕を風車の様に回して迎撃し低く低く構えるわたし。

ボク歩という中国拳法の構えね。


思ったより、ガイアスはわたしの動きとリンクしてくれるのね。


ガイアスはロボットだし、関節があまり動かなさそうな印象だったのだけど…


『先程の一撃はさしずめ剛の一撃、と言うところか。今のしなやかな動きは柔の技だな』

「ええ。八極拳に臂掛拳よ。わたしはどちらかと言うと臂掛の方が得意ね」


それから…


『ふむ、それから?』

「八極と臂掛を学べば神さえ恐れる。なんて言葉もあるくらいなんだから」


低い姿勢でジリジリと間合いを詰めていくわたし。


わたしが間合いに入ったからなのか混沌獣は大きな鉤爪の腕を振り下ろして来ます。


わたしはその攻撃を身体を起こしながら左の手刀を振り上げ弾く。

その勢いで、右手の手刀で混沌獣の顔を弾く。そのまま自分の頭上で腕を交差させ、勢いよく手刀を叩きつける。


ぐしゃり


混沌獣は頭から地面に叩きつけられます。

わたしはそのまま混沌獣の頭を震脚の要領で踏みつけます。

そして、1度間合いを取ります。


『やはり、キミは内面に激しいものを持っている様だ。私の歴代の伴侶の中でも随一の格闘能力だ』


ガイアスが冷静にわたしを分析する。


あはは


から笑いのわたし。


カンフーは中国人のおばさんにみっちり叩き込まれて、何度も組手もしてきたから身体が自然に、ね。


でも、混沌獣へのダメージは少なく、すぐに起き上がり、遠間に逃げる。

そこから腕を伸縮させ、鉤爪を突き刺そうとしてきます。

わたしは、その攻撃を受け流す。


『混沌獣に知能はないが、相手の攻撃に対し対応する能力はある。どうやら、キミの格闘の間合いを避け始めた様だ』


確かに、混沌獣の間合いはわたしのカンフーの間合いの外。


「ガイアス。この間合い、どうにかならない?」


攻めあぐねるわたしはガイアスに何かないか聞く。


『ならばシークエンスを使う』


シークエンス?わたしはガイアスに聞き返す。


『そうだ。今、使い方をキミに伝える』


頭の中に直接、シークエンスの使い方が流れ込んでくる。

何か、アニメとかで見た「脳直」を体験してるわたし…

「火のシークエンス…よーし!」


わたしは早速シークエンスによる攻撃を試みる。

両腕を拳を握り、突きだす。


「火のシークエンス!炎矢嵐!」

『応!火のシークエンス、炎矢嵐!!』


わたしの掛け声にガイアスが合わせてくれる。

なんか、こういうのいいなぁ…



突きだした拳の宝玉の様なパーツ?から無数の炎の矢が嵐の様な勢いで放たれます。


すごっ!


自分で使っていて想像以上の攻撃に自分で驚いています。

炎の矢が混沌獣に次々に命中していきます。

それこそ、1つも外れません。

誘導効果があるみたい…

でも、一つ一つの威力は少ない様です。

要は数でダメージを取る技と言うことね。


ガイアスの両手から放たれる炎の両手の嵐を見て、あることを思い付くわたし。


よーし!


「ガイアス、炎矢嵐はどうしたら止まるの?」

『フム。何か思い付いたな?キミが両腕を下げればその時点で止まるが?』


なるほど…


「じゃあ、腕の向きを帰れば炎の矢の射線も変わるのかな?」

『ほう。確かに変わる。限度はあるがな』

「ありがとう!!なら!」


わたしは両腕を斜め上の方に向ける。

起動を変え、炎の矢は放たれ続ける。


「ねえ、腕を開くと開いた分広域化するの?」

『フム。可能だ。だがあまり開き過ぎると横方向への攻撃になってしまうぞ』

「わかった、ありがとう!!」


わたしはゆっくり腕を広げていく。

手の甲から放たれる炎の矢がわたしの予想通り、放たれる角度が広がっていく。

炎矢嵐の矢のスピードをある程度把握するわたし。


「ガイアス。炎矢嵐の矢のスピードは一定ね?」

『ああ。良く気が付いたな』

「ありがとう!なら!」


わたしは広域から炎の矢を放ち続け、タイミングを見測る。


今だ!


混沌獣がわずかに怯んだ隙に炎矢嵐の構えを解き、震脚を踏む。


踏み込みから一気に混沌獣に肉薄する。


炎の矢を追いかける形だ。

最後に放った矢の直ぐ後ろをガイアスが追いかけ、混沌獣に迫る。


ガイアスの踏み込みの力を体感的に計算に入れた箭疾歩という技。


炎の矢のガードがされていないお腹の部分に突きを繰り出すわたし。

体勢が崩れる混沌獣。

そのまま、右手、左手を順に風車の様に下から回転させながら掌をお見舞いします。

掌の威力に完全に胴の守りががら空きになります。

わたしはそのまま腕の遠心力と震脚の踏み込みの力を合わせて頂肘を叩き込みます。


ドシン!


という、震脚の力強い響きと共に


メキメキ


という、耳障りな音が響きます。



観察すると、混沌獣の胸の部分にひび割れみたいなものが見えました。


『凄いな。格闘の技で混沌獣を圧倒し、これ程の威力を出した伴侶ははじめてだ』


あはは


再び、から笑いのわたし。


と、言うかですよ?


「ガイアス。伴侶という表現は何とかならないかな?」


そう、ガイアスの『伴侶』という表現。


それが、とっーーーーーても気恥ずかしい、わたし。


「伴侶って、お嫁さんとか奥さんとかの事でしょ?15歳のわたしには早すぎます!」

『む?そうか、ならばどう、表現する?』

そうねぇ…一瞬、考えるわたし。

「契約者とか、操者とか、兎に角、伴侶だけはやめて!」

『そうか、キミが望むなら気を付けるとしよう』


わたしとガイアスが話している間に再び混沌獣が立ち上がります。


『ナユタよ。混沌獣も大分弱ってきている。ファイナルアタックを使え!』

「分かったわ!」


格闘によるダメージが蓄積されてきているのか、ガイアスの言う通り、混沌獣は大分弱っている様でした。

特に、最後の頂肘が効いている感じです。

ひび割れの中では赤黒い何かが脈打っています。


「ガイアス!炎矢嵐よ!!」

『応!火のシークエンス、炎矢嵐!!』


わたしは火のシークエンス、炎矢嵐を放ちます。

もちろん、これは牽制です。


今から使う、ファイナルアタックの布石。

わたしは、そのチャンスを一瞬の気も許さず伺います。


『ナユタよ。先程伝えたが、ファイナルアタックはキミの身体に大きな負担をかける。私のエネルギーの観点からも1回の先頭で1度しか使えないのは心してくれ』

「うん!分かったわ!」


この時のわたしはファイナルアタックの負担を少し甘く考えていました。

まさか、あれ程とは…




「なあ、あのロボット、カイブツを圧倒してるよな」

「ええ!頑張れー!」

「八極に加え臂掛までも使うのか、凄いロボットだな」

発掘隊の皆がわたしの戦いを応援してくれていたみたい。

「ねえ、あなた。あのカンフーの動き、どこかで見ませんでした?」

「そうだな…どこだろうか…」

両親もガイアス(わたし)と混沌獣の戦いに見とれています。

「ナユタが心配だが、あのロボットの戦いが終わらなければ探すものも探せないな…」

「なら、応援しましょう!あの子ならきっと無事だわ!」

「そうだな!頑張れー!」

「頑張れー!」

両親もわたしを応援してくれていました。

何故か、両親の声が聞こえた気がします。



『混沌獣が怯んだぞ!!今だ、ナユタよ!』

「分かってる!」

わたしは炎矢嵐を放ちながらゆっくりと呼吸を調える。

「ガイアス!火のシークエンス、ファイナルアタック!!」

『応!!火のシークエンス、ファイナルアタック!』

炎矢嵐を解除し、混沌獣に一気に肉薄するわたし。

両腕に炎のエネルギーが圧縮されていきます。

「ぐ、ううぁ…」

そのエネルギーはわたしの腕をも焼きます。


そうか、ガイアスの言っていた負担ってこういうことなのね…


でも!


わたしは一瞬で混沌獣に肉薄します。

振り下ろされた鉤爪に右手を絡めて弾き、脚をかけ、胴を開きバランスを崩します。

本来ならここで一撃必殺の鉄山靠と行きたいところですが、わたしは左手で混沌獣の頭を掴みます。

「あああああっ!!」

わたしは自分の腕を焼く程の炎のエネルギーをつかんだ左手から混沌獣に送り込みます。

「くぅぅぅぅっ!」

その間に更なるエネルギーを右手に圧縮させていきます。

わたしの右手もどんどん焼けていきます。

『今だ!ナユタよ!』

炎のエネルギーが混沌獣を満たしたその時、ガイアスが声をかけてきます。

そして、わたしは右手1つに集めた炎のエネルギーを混沌獣に叩き込みます!

『「火のシークエンス、ファイナルアタック!迦具土腕(かぐつちかいな)!!」』

混沌獣は大きく吹き飛びます。

超、圧縮された炎のエネルギーが混沌獣の体内でぶつかり合い、爆発、炎上します。

それは、まさしく火の神、迦具土の全てを焼き尽くす炎そのもの。

混乱獣は文字通り灰すら残らず焼き尽くされました。


「すごい、これがファイナルアタック…」

『ああ。見事だ。ナユタよ』

「よかった…」


混沌獣が倒されたのを見て、発掘隊の皆さんも歓声をあげてくれました。



戦いの熱、興奮も覚める前にガイアスはその場で膝をつきます。

『そろそろ限界だ。外に出るといい、ナユタよ』

いつの間にかガイアスと繋がっていた髪の毛は外れ、長さも元に戻っていました。

わたしはガイアスに促されるまま前に進みます。

すると、水面から出る様な感覚があり、そこを通り抜けると外でした。

ガイアスが片手を出してくれていました。

『ナユタよ。そのペンダントは肌身離さず持っているといい。私を呼ぶのに必要だ』

「うん。でも、どうやれば?」

『比較的広い空間でそのペンダントを天に掲げ私を呼べ。そうすればキミの前に馳せ参じる』

「分かったわ」

『それから、私の事はあまり他言しないように。余計な混乱を生む。キミが心から話せると思った相手にのみ話しなさい』

「うん。でも…」

『でも、何だ?』

「お父さんとお母さんには少しくらい話していいよね?」

『ふふ。仕方ない。それくらいは許可しよう』

そう言い、ガイアスはわたしを地上に降ろす。

『では、ナユタよ。一時の別れだ。我が操者よ。キミと共に戦えること、誇りに思うぞ』

「うん。ありがとう、ガイアス…」

そして、ガイアスは光の粒子になり姿を消しました。



ガイアスが消えた場所を眺めていると、発掘隊の皆さんが。あっ、勿論、お父さんとお母さんもね。

「あら!ナユちゃん!何でこんなところに?」

発掘隊の人が問いかけてくる。


そうよね、どうやって誤魔化そうかな…


「あ、あのロボットが助けてくれたの!カイブツ、怖かったなぁ…」


うん。間違ったことは言っていません。よね?


そうか、それは大変だったねー。と何とか誤魔化せたかな?


「よし、今日は引き上げよう」


お父さんが今日の作業の中止を宣言し、皆で滞在中のホテルに戻りました。



その夜


わたし達家族の部屋。

「それで、何があったんだい?」

夕食を終えたあと、お話タイムになりました。

お母さんがお茶を用意してくれました。

「やっぱり、お父さんとお母さんには隠せないね…」

わたしは、今日あったことをある程度誤魔化しながら両親に話します。

例えば、転落して死にそうになってた、とか…


「なるほど、あのロボットはガイアスというのね」

「地球の守護者、ねえ」

なんか、少しウズウズしてる感じの2人。

「凄いじゃないか!お前がそのガイアスのパイロットになったってことだろ?」

「う、うん…なんか、興奮してる?」

「これは!興奮するしかないだろ?」

「ええ!娘が古代の遺跡から見つかったロボットのパイロットだなんて!」


あ、いつもの2人だ…


ひとしきり興奮し終わったあと、お父さんがわたしに言いました。

「ナユタ。これからお前はとんでもない戦いの中に身を置くことになると思う」

「はい」

「だから、お父さん達はお父さん達でお前のサポートをしようと思う」

「はい」

でも。何をするの?

「お父さん達は、これからそのガイアスについて色々と調べてみる。何か分かったらお前に教えよう」

「うん」

お茶を飲み干したお父さん。


「で?戦うってのはどんな感じだったんだ?」


やっぱり、お父さんも男の子。ロボットが気になるみたい。

2人の考古学者としての血も騒ぐのか、色々と考察しながら遅くまで話しました…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「わたしにとって忘れられない夏休みになりました」

ナユタは、珈琲の最後の一口を飲み干し、話を終える。

「なるほど。大変な1日だったんだね」

ノアも珈琲を飲み干してナユタの話しに感心する。


「さて、色々話してくれて、ありがとう。また、頼むよ」

篁も珈琲を飲み干す。

「さて、別の様もパパっと済ませないとネ」

篁はノアとナユタに向き直る。

「2人とも、悪いんだけど、この店でバイトしてくれないかねェ?」

篁の申し出は唐突なものだった。

「ばいと?何か面白そうだからいいよ!ねっ、ナユタ!」

「え?う、うん。そうね、社会勉強になりそうだし。ノアも一緒ならわたしは構いませんよ」

ノアとナユタの2人は二つ返事で快諾。

「だ、そうだ。よろしく頼むよ2人とも」

「いやいや、そ、そんなことしなくても大丈夫ッスよ」

マスターは急に慌て出す。

「いいえ。決定事項です。私もこの店の立て直しのアドバイザーの依頼を総理直々に受けました」

「げげっ!お前も来るのかよ!?」


げげっ!とは何よ!と言わんばかりの顔をする美人。

「まぁまぁ、とりあえずナオト。この娘達に制服を出してやんな」

「は、はい。お前らこっち来い」


そこでノアはある疑問をぶつける。

「ねえねえ。何でマスターはそーりにはヘコヘコしてるの?」

ナユタも同じことを思っていた。

「いゃ、それはだなぁ…」

「な~に、簡単な事さね。コイツはアタシの甥っ子なのサ。この店も兄が残したものでね。コイツに任せてたんだが…」

篁ナオト。それがマスターの名前だ。

なるほど、そう言うことか~、と納得するノアとナユタ。

「そんなことはいいから!早く着替えてこい。このサイズで大丈夫だと思うぜ」

マスターは2人に制服を渡す。


ノアとナユタは奥のロッカールームで着替えるのだが…


ーなにこれ~!こんなの着れません!ー

ーいーじゃん、あたし気に入ったよ~♪ー

ーあなたは良いんです!でも、こんなデザイン…ー

等と姦しい声が聞こえる。


しばらくして…


「ムッフフ♪お・ま・た・せ~!」

着替えた2人が戻ってくる。

白の清潔感溢れるブラウス。中央のボタンのラインにはフリルの加工。

襟元はやはりフリル加工が少しされ、ソフトなスタンドカラー。赤いリボンタイがアクセント。

黒のタイトなパンツは動きやすそうであり、スタイリッシュな印象を与える。

「マ・ス・ター…な、何でこのベスト、こんなに胸が空いてるんですか!」

ベスト、というより編み上げのコルセットの様なデザインである。

「ムッフフ♪わかってんじゃん、マスター。あたしの自慢のおっぱいをここでも披露させちゃうのね♪」

そう、胸の部分が空いているので女の子のバストが強調されるのだ。

ノアも大きいが、ナユタもそこそこ大きい。

「おっ♪2人ともピッタリじゃねえか!」

それを見て喜ぶマスター。

「そう、この制服が恥ずかしくて若い女の子達が居着かないわけ」

美人が説明する。

日も傾きはじめ、マスターは外の日差しを出そうと入口の方に移動する。

「ねえねえ、美人。今、マスター、さりげなくあたしのお尻触ったよ!」

それを聞いた美人の表情が強ばる。

「ば、ばか!お前コイツにそんなこと言ったら…」


美人から殺意のオーラが出始める。

「ふーん、性懲りもなく。また、セクハラねぇ…」

車椅子を動かしマスターに近づく。

そして、ゆっくり立ち上がり。

「そ、それはあんな良い尻があったら触るだろう!男として!」

その一言にキレる美人。

「この、冬瓜(ドングァ)ァァァァァァァっ!!私には、触りもしないくせにィィィッ!」

美人は素早くマスターに脚をかけバランスを崩し、そのまま力強く踏み込み、肩から身体をぶつける。


ガッシャーン!


入口のドアごとマスターを吹き飛ばす美人。

通りの向こう側まで吹き飛ぶマスター。


「うわ、すごい鉄山靠…」


ワナワナと肩を震わせ車椅子椅子に戻る美人。


「ま、このお店も改装予定だったから、解体の手間が少し減って丁度よかったわ。とりあえず、リフォームに2週間くらいかかるから、リニューアルオープンの日が決まったら連絡します」


その様子を見ていた篁は大笑い。

「いやあ、2人とも変わらないネェ。さて、アタシもそろそろ帰るよ。プライベートの時間は短いのサ。これからの指示は当面、美人からナユタに行くから頼んだよ」


「はい!」

「はーい♪」


篁は手をヒラヒラさせながら店を出ていく。


「今日は2人も帰りなさい。私はあの冬瓜(ドングァ)が起きるまでは店にいます」


美人の提案に乗る2人。


「おい」


チョイチョイ、とノアの脚に髪の毛で突っつき流留が声をかける。


「小娘よ。妾はかっぱえびせんが所望じゃ。用意せよ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ナユタにもこんなことがあったのね~


結構苦労人さんなんだね!


でも、これから「ばいと」もするみたいだし、マスターも美人もそーりも面白い人達だから、あたし早速好きになっちゃった!


さて、まだまだ、ちきゅう2日目!

楽しいこといっぱいだったね!


この大魔導士ノアのちきゅう生活もまだまだこれから、ね♪

明日も楽しみっ!

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