第11話 ナユタとガイアスの出会い

わたしは、布瑠部ナユタ。


今、わたしは、自分の身体の秘密とガイアスについて話をしています。


篁総理からわたしとガイアスの「馴れ初め」について話せって(汗


いや、わたしとガイアスは、そんな関係ではないわけで。でも、ガイアスはわたしの事たまに「伴侶」とか表現するし…


でも、話さないことには始まらないわよね。


「分かりました。馴れ初めではありませんが、わたしとガイアスの出会いについて話します」


わたしは篁総理、美人(メイレン)さん、マスター、ノアに話し始める。

後は流留ちゃん。話を聞いているか、聞いていないか、わからないわね。ただ、ただ、ただ、かっぱえびせんをお行儀よく1つづつじっくり味わいながら食べてます。

食べる度に耳横の触腕風の髪の毛がピョコピョコ動いています。


可愛いなぁ~


でも、何で流留ちゃんはわたしの言うことは聞くんだろう…

わたし、何かしたかなぁ…

まぁ、流留ちゃんの事は、今は別にいいわね。


わたしは総理達に目を向ける。

「わたしとガイアスの出会いは、去年の夏休みになります」

わたしはガイアスとの出会いを話し始める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


去年の夏休みの話の前に、わたしの事をもう少し。

わたしは、もともと体が弱かったの。

子供の時はよく寝込みました。

両親は考古学や民俗学の権威でわたしが子供の頃から2人して世界中を飛び回っています。

わたしは、そんな両親が誇らしくて、テレビで両親の姿を見たり、たまに日本に帰ってきた時にいっぱい珍しい品のお土産を買ってきてくれたり、色々なお話をしてくれるのが楽しみでした。

わたしの体が強くなる様に、おまじないのお土産とか本当にたくさん…

でも、一番のお気に入りは今もしている髪の編み込み。どこかの民族の古いおまじないで日本で言う無病息災の意味を持つそうよ。


両親は基本的に日本にいないので、わたしは、親戚のおじさん夫婦に預けられていました。

おじさん夫婦は海の近くで民宿を営んでいます。

おじさんはもともと和食の料理人で、釣り好き。殆ど喋らない寡黙な人です。自分の釣った魚や納得のいく食材を求めて海の近くで民宿、という形にしたそうです。

一方、おばさんは。おじさんにベタぼれした若い中国の方。とても賑やかな方です。おじさんとは10歳以上離れています。むしろ、わたしの方が年が近いんですよ。

おばさんもお料理が上手で、医食同源がモットー。

おじさん夫婦の食育と、何より身体を強くするためにおばさんから習った、八極拳をはじめとするカンフーがわたしを色々な意味で強くしてくれました。


中学生にもなると身体も強くなり、ちょっとやそっとで風邪をひいたり、寝込んだり、ということもなくなりました。

そして、去年の夏休み。

両親が中国で発見された新しい遺跡の調査に行くことになりました。

そこでわたしは、両親に頼み込んで調査に連れていって貰いました。

発掘や調査の邪魔はしない。という条件です。

わたしは、二つ返事で承諾。

何より、生まれて初めての家族旅行です。わたしにはそれが嬉しかったなぁ…


始めて乗る飛行機、外国、何もかもが楽しかった。

調査のない日は家族で町へ出て食事をしたり、京劇を見たり、色々な事をしました。


でも、わたしが一番楽しみにしていたのは、血は争えないのか、発掘現場の見学です。

宿泊のホテルは調査団で半ば貸し切り状態。

現地の方もいますが、殆どが両親の知己。今まで色々な発掘調査を行ってきたチームのみなさん。

最早、両親とはツーカーの存在です。

そして、現場入りの日。

わたしは、えーと、何て言えば良いか…




。。



。。。



そう!



ひとしくん人形の様な服装にさせられ、ヘルメットを被って現場入りします。


ワクワクです♪


初日は小学生の遠足みたいに、車での移動中、ずっと窓の外を見てました。


木があまり生えていない岩山の山間部。そこには大きな穴がポッカリと空いています。

発掘現場の入り口でした。

わたしは、想像を越える大きさに目を見開き口を大きく開けるだけでした。

駐車場で全員降りて、わたしは、両親に連れられて一通り見学します。

まず、大穴の外の作業所では掘り出された遺物の汚れを丁寧に刷毛できれいにするという地道な作業行われています。

一緒に来たおばさま達が賑やかに作業を始めます。口は動いていても手の動きは繊細そのもの。

良く、パートのオバチャンは最強という話をききますが、こういうことなのね…

わたしは、そのまま大穴の中に連れていかれます。

「うわぁ……」

わたしは、あまりのスケールについ、声を漏らしてしまいました。

大穴の中には外からは想像できない広大な空間が広がっていました。

「ほら、見てごらんナユタ」

父がペンライトで光をを指します。

そこには、何か大きな人形のものが横たわっていました。

「お父さん、何、あれ?仏様?」

「さぁ…その謎を解き明かすのがお父さん達の仕事なんだよ」

「全長は少なくとも30mはありそうね。どう?こんなものがこんな所に埋もれていた何て、考えられる?」

母が悪戯っぽく問いかけてきます。

「ううん。なんか、すごいね」

そうでしょー。と言わんばかりの両親。

どことなく楽しそう。

「教授ー!」

下の方から両親を、呼ぶ声。

「おーう!今行くー!」

「じゃあ、ナユタ。ここから先は立ち入り禁止だから、外の遺物掃除をやってみるか、この辺りから見学してるか、しててね」

「うん。行ってらっしゃい」

わたしは、両親に手を振って見送りました。



この日は、両親が外に出てくるまで遺物の片付けのお手伝いをさせて貰いました。

何だかんだ言って、両親もわたしに遺跡や遺物。太古の浪漫に触れさせたかったみたい。

両親からすれば、わたしへのサプライズだったのかな?



中国入りして数日。

ホテルでNHKを見ています。

多少の中国語の会話は出来るけど、日本の番組が見られるに越したことはありませんから…

ここのところ毎日のように、黒くて巨大な謎の生物の映像が流れます。

ソレが破壊活動をしている映像を何度も見ました。

各国の軍隊も応戦していますが、どうなんだろう?

実際に、謎の生物が撃破された映像は出たことがないのよね…


そんな中、日本で行われていた各国首脳を集めてのサミットについてのニュースが流れます。

篁総理がアップになります。


(わたしも、年取ったらこんな素敵でカッコいいおばさまになりたいなぁ…)

篁総理は、本当にカッコいいんですよ?

趣味はツーリング。

若い頃からバイクを愛用していて、ハーレーを颯爽と乗りこなす姿は多くの女性に共感を与えてます。

バイク雑誌で特集も組まれました。

篁総理が総理大臣になってから、女性のバイク免許取得率もはねあがったとか。

実は、わたしも篁総理に憧れてバイクの免許取っちゃったクチなんですが…


総理のことはとりあえずこの変にしておいて、っと。

総理は、ここのところ頻繁に現れている謎の生物を「混沌獣(ケイオスビースト)」と称する事になったと発表。

全人類共通の敵として各国で協力しあう事を確認。

その上で日本ではかねてより、各地で研究されていた対人類外の戦いの為のエネルギーや武器を紹介。

実は、表沙汰になっていなかっただけでこういった人類外の生物というか、バケモノ?カイブツ?の類いとの戦いは続いていたみたいです。

日本では篁総理がかねてより進めていた防衛力の強化や建物を保護するバリアーの研究。シェルター設備の整備を押し進めていたの。

それから、良くわからなかった建物等に関する法改正もこのためだったと日本人は皆思ったハズ(わたしがそうでしたから)。

この混沌獣の発表が大々的に行われた後、元々高かった篁内閣の支持率がうなぎ登りだったのは言うまでもないことですね。

同時に、日本では防衛大臣が、対人類外への対策を行う組織「ガーディアンズ」を発表。

官民協力して、人類外の脅威に当たる事を宣言。


この時のわたしは、ただただ、ご飯を食べながら「ふーん」としか思っていませんでした。


この日も変わらず、発掘現場へ。

日に日に発掘の進む人形のモノ。

わたしは、毎日、それを見ます。何となく、じっーと見てしまうんです。

発掘が進んできて、形状も分かってきました。何て言うか、うーん、アニメとかに出てくるロボット?みたいなフォルムです。

まー、男の子じゃないからロボットアニメとかはあまりみなかったけど、何となく、そんな印象を受けました。

今日も、それをみていました。


その時、地震かと思う激しい振動が起こりました。

この振動は地震ではなく、この発掘現場に今朝、ニュースで見た黒いバケモノが現れ、この発掘場を攻撃して来ていたのです。

発掘現場の中にいたわたしには勿論それは分かりませんでした。

数度に渡る激しい振動。

「あっ…」

わたしの立っていた足場が、運悪く崩れました。


ーうそでしょ?下まで軽く見て10m以上あるんですけど…ー


わたしは、落下し、発掘中の人形の上に背中から落ちました。


ボキボキッ、ぐちゃっ、と嫌な音が確かに聞こえました。


わたしの、背中の骨が折れた音、ひしゃげた音、そんな音なんだろうな。


ーあ、短かったな、わたしの人生、15年か…ー




痛みも感じない。




怪我が酷すぎて、すでに、痛覚が麻痺してしまっているのかな?




このまま、死んじゃうんだ…



少ない思い出を思い出す。 



身体弱かったから、学校とかの思い出、あまりないな…


お父さん、お母さんの色々な話、大好きだったな…


おじさんにお魚の扱い方、1から厳しく習ったな…


おばさん、面白い人だったな。カンフーも習ったし、中華料理もたくさん教わったな…



かふっ、かふっ



咳き込み、血を吐きました。


これ、内臓もやられているクチじゃないかしら…


やっぱり、わたし、終わりなんだ…


そう、思った時でした。



『少女よ、私の声が聞こえるか?』


だ、だれ?


薄れ行く意識の中、わたしは、確かに暖かくも力強い(そして、ちょっと渋い)男性の声を聞いたのです。


『驚かせてすまない。私はガイアスと言う。地球の守護者だ』


え?


ガイアス??


地球の守護者???


何、言ってるの????


どこに、いるの?????


『すまない、強いて言うならばキミの真下だ』


まるで、わたしの心の声を読んでいるかの様にガイアス?と名乗った存在は話しかけてきます。


渋く響く声が、死にそうなわたしに優しく語りかけます。


『私は、現れた混沌と戦わねばならない。だが、そのためには人間の契約者が必要となる』



ガイアスの語り口に死にそうながら怪訝な顔をするわたし。


『私が今、この場で人間の目に触れたのは戦いの時が来たことを意味する。少女よ、心当たりはないか?』



心当たりならあった。


朝。ニュースで見た黒くて巨大なカイブツ、混沌獣だ。



『キミが望むなら、私の契約者、伴侶として、共に戦う存在として命を助ける事が可能だ。キミの心の強さにはその資格が十二分にある』


ガイアスはまるでわたしの心を隅々まで見透かすかの様に話す。


『この様な状態のキミに言うのは酷な話だが、私の伴侶となるか、そのまま普通のヒトとして命を終えるか、選ぶといい。キミの状態からすると、時間は短い』



つまり



ガイアスの言葉を真に受けるとこういうことなのかな?



このまま、死んじゃうか、ガイアスと一緒に戦うか。



なら、答えは決まっている。



色々な人の助けもあってわたしは元気になった。



少し、引っ込み思案な所があるわたしだけど、元気になったらやってみたいことはたくさんあった!



その中には、大なり小なりの人助けも含まれている。



なら、答えは決まっているわ!!


「分かった、わ。あなたと一緒に、戦う…だから、わたしの命を、たすけて…」


『分かった。ところで、キミの名は?』


ガイアスに名前を聞かれるわたし。 



ナユタ。



布瑠部ナユタ、よ。



『ナユタか、良い名だ』



すると、わたしが倒れている部分。丁度ガイアスの胸、人間で言うところの心臓の当たり。

大きな球体のようになっています。

そこから、蒼く優しい光が放たれます。


例えるなら。


宇宙から地球を見た時の様な輝きです。


わたしは胸の球体に、とぷん。と、まるで静かに水の中に潜る様に沈んでいきます。


身体中の骨が折れてるので全く抵抗出来ません。


ほどなくして、少し広い空間にたどり着きます。


これ、あの球体の中なんだな、と理解するのに時間は要りませんでした。



とさっ



わたしはその空間の中心にうつ伏せで倒れます。



すると、壁?壁面?に当たる場所からチューブの様なモノが伸びてきて、わたしの首、脊柱の当たりにプスリと刺さります。


そして、そのチューブから注射をされるかの様に「何か」が、注入されていきます。


「な、なに?何が起こっているの?」


わたしは状況が飲み込めず、ガイアスに問いかける。


『今、キミの体内にナノマシンセルを投与している。私のボディを構成する物質と同等のものだ』


ナノマシンセル?


『そうだ。これにより、キミの肉体は超、強化される』


ガイアスは説明を続ける。


『身体能力の向上、抵抗力の強化。肉体の修復能力が格段に上昇する』


血液が全身を巡ると同時に、そのナノマシンセルもわたしの全身を巡り、ガイアスの言う通り、肉体の修復が始まります。


それこそ、ものの数分で折れた骨、損傷していた内臓の修復がされました。


痛みもなくなり、その場でスッと立ち上がるわたし。


身体を見てみると、蒼く光る奔流が身体を流れていた。


『ナユタ、叫べ。アクト・アズ・ワン、と』


アクト・アズ・ワン?


一心同体?


何の事かな?でも、今はガイアスの言う通りにしよう。


「ガイアス!アクト・アズ・ワン!」


わたしは言われたままが掛け声を上げました。


髪の毛が銀色になってし、ぶわりと広がりました。


その内の何房かは普段よりも伸びてきて天井や背部に「接続」される様な形です。


そして、額にサークレット、両手首、両足首に金色のブレスレットの様なものが装着されました。

それぞれが地球を模した装飾がなされています。


最後に胸に同じく地球の様な宝玉に代わりわたしの胸元に半分埋め込まれる様な形になりました。


その胸の宝玉からわたしのの全身に蒼く煌めく光の奔流が流れる。


この、蒼いく煌めく光が、今ガイアスが言っていたナノマシンセルなのかな?


!?


この時、わたしは自分が服を身に纏っていない事に気づきます。


「が、ガイアス?わたしの服が…」


ちょっと同様するわたし。


『安心しろ、私の外に出れば服も元に戻る』


そうなんだ。


少しホッとするわたし。


『では行くぞナユタよ。覚悟はいいな?』


うん。


わたしの言葉を聞き、ガイアスはゆっくりと立ち上がります。


立ち上がると同時に、ガイアスを覆っていた土砂が剥がれていきます。


白銀に輝くボディが姿を表します。


立ち上がると同時に肩や腕、足のパーツが盛り上がりわたしの全身を流れる蒼い煌めきの奔流が、ガイアスの全身にも現れます。


後頭部から銀色に輝く長い鬣の様なものが発現。



ちょっと、カッコいいかも…



で、でも、どうやって動かすの??



『案ずるな、この状態ならキミの思う通り、キミの動きに同調して私が動く。さあ、地上に出るぞ。ジャンプしてみろ』


う、うん。こうかな?


わたしは軽く膝を曲げて、大穴の外に出る勢いで跳躍する。


ガイアスもわたしと同じ動きをして発掘現場の天井を突き破って地上に出ます。


ドシン!


と、着地。


外の光が眩しい。


外では避難しようとしているお父さん達。


外では今朝テレビで見た黒い怪物がそこにはいました。


『あれが、混沌。全ての生きるものの敵だ』


混沌…混沌獣ってテレビで言ってたな…


混沌獣はわたし達に気がつくと咆哮をあげ、戦闘態勢を取る。


『構えろ、ナユタよ。来るぞ』


うん。


でも、敵が来るのを待つなら。


「ねぇ、ガイアス。こっちから行ってもいい?」


『ほう。良い気概だ!キミの思うように戦ってみろ!私がサポートする』


「分かった、行くよ!」



ド    シ    ンッ!!



わたしは思いっきり震脚を踏み、一気呵成に間合いを詰める。


わたしとガイアスのはじめての戦いが始まる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これがわたしとガイアスの出会いです。


死にそうになったところを助けてもらった感じだったんです。


そして、そのまま混沌獣とのはじめての戦いになりました。





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