第10話 ナユタのすんごい秘密
あたし、ノア!
あたしの活躍見てくれた?
今、混沌獣との戦いが終わりって、カフェへもどってるところ。
街には大きな被害はないみたいなんだけど。
流留のヤツがへそ曲げてるのよね~。
イカのクセに!
ま、忘れてたあたしが悪いんだけどねw
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「フン((( ̄へ ̄井)妾のことを忘れるとは!なんたる無礼っ!」
流留は、頬を膨らませ、顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。
「あはは、ゴメンゴメン」
ノアはカラカラと笑いながら流留の頭をポンポンとする。
プンスカ怒る流留をひょいと持ち上げだっこしてほおずりするナユタ。
「怒った流留ちゃんも可愛いですね~。ほっぺた膨らませて、顔赤くして、タコさんみたい~♪」
流留の表情が固まる。
「おい、娘。今、なんと?」
「え?タコさんみたいで可愛いって…」
タコもイカも一般的に可愛いかは別の問題である。あくまでナユタの感性がそうなのだ。
それを聞き、更に顔を赤くして湯気でも出そうな勢いで手足をバタバタさせ怒る流留。
「なんたる屈辱!あんなのと一緒にするでないわ!タコよりイカの方が上じゃ!」
どうやら、流留はタコが嫌いな様だ。
「流留ちゃんは、タコさん嫌いなの?」
「フン((( ̄へ ̄井)きゃつらこそ我等が不倶戴天の敵よ。きゃつらとの因縁は語り尽くせぬほどぞ」
「ふ、ふーん…」
とりあえず、話を合わすナユタ。
「あっ、こんびに♪ちょっと寄ってきたいから先行ってて!」
ノアはコンビニを見つけ小走りで入っていく。
「なにかしら?」
「知らぬ!あんなの放っておけ!行くぞ娘」
ご機嫌斜めな流留はナユタに言う。
「おい!おろさんか!」
「え?お姉さんに抱っこされるのはイヤですか?」
「いやじゃ!」
「なんでですか?」
「いやなものはいやじゃ!」
「そうですか…じゃあ、帰ったらお仲間と一緒におねんねですね?」
そう言い、ニコニコ笑うナユタ。
ーお仲間と一緒におねんねー
流留の脳裏に冷凍庫で凍らされている烏賊達が浮かんでくる。
「ひぐっ!?」
人間には発音できない悲鳴をあげる流留。
凍った同胞達と目があったのを思い出す…
「わ、わかった。同胞達とのおねんねはいらん!妾は腕が砕けたという、うぬを心配してだな…」
「まぁ!流留ちゃん、お姉さんを心配してくれてたのね!うれしい!」
流留を抱き締める腕に更に力が掛かる。
ミシミシ
流留の全身が軋む音がした気がする。
「わ、わかっかたから、おろせ!おろして!おろして下さい!特別に手を繋ぐことを許可してやるから!」
「うーん、仕方ないですねぇ…」
ナユタはゆっくりと流留をおろし、手を繋ぐ。
「本当になんともないのかえ?」
流留は真面目に心配してナユタの手を握る。
「ええ、あれくらいのケガなら数分で治ってしまうわ」
流留は触腕っぽい揉み上げの部分の長い髪を動かし、頭を掻く。
「うぬはうぬで訳ありの様だの」
「ええ、それをこれから話すのよ…」
すったもんだしたりしながら話していると、直ぐにカフェへと着く。
カランカラン
ナユタと流留はカフェに戻る。
「お!もどったな、お疲れ!」
マスターが笑顔で出迎える。
「ノアは?」
「何かコンビニ寄りたいって」
「そうか」
ナユタとマスターが簡単な会話をする。
その間に流留はマスターに近づき、ズボンをくいっ、くいっと引っ張る。
「おい。妾はこーらを所望じゃ。出せ」
「マスター、お願いします」
流留の物言いに少しイラッと来たマスターだが、ナユタに改めて頼まれ仕方なくコーラを準備する。
カランカラン
「ただいまー、あっマスター。あたし珈琲ね♪」
コンビニのビニール袋を手に下げてノアが元気良く帰ってくる。
「どうしたの?急にコンビニなんて…」
「ん?流留のやつが頑張ったからご褒美」
出されたコーラを飲み始めた流留の前にコンビニ袋からお菓子を取り出す。
「あのね、ノア。一応、飲食店ではこういった持ち込みは基本的に禁止だからね」
「そうなんだ。分かった」
ナユタはこの世界の一般的なルールをノアに説明する。
そんなノアが流留に買ってきたものは。
「うぬ?何ぞ、この海老の描かれたモノは」
ーかっぱえびせんー
「さあ、昨日見てて何か海老の絵がついてたからこれにしようと思って」
そう言い、かっぱえびせんの袋を空けるノア。
「ふむ。小娘にしては殊勝な心がけぞ」
そう言い、かっぱえびせんを1つつまんで食べてみる流留。
!?
もう1つつまんで食べる
!?!?!?
更にもう1つ
!?!?!?!?!?!?!?
触腕っぽい髪をピョコピョコ動かし一心不乱にかっぱえびせんを食べてはコーラを飲む。食べてはコーラを飲む。
やめられない、とまらない
それは人間でも、イカ(邪神)でも止まらない。
「ぷはー♪美味!美味!美味!美味!美味!美味!」
ご満悦の流留。
「おい、小娘、ヒゲの。妾はおかわりを所望じゃ。はよせい」
しょうがないなぁ、という感じでノアはもう1袋かっぱえびせんを出し、舌打ちしながらマスターはコーラを出す。
「流留ちゃん。ゆっくり食べましょうね?」
ナユタはニコニコしながら流留をたしなめる。
「ひぐっ!?わ、分かっておる。あまりに美味だったので、つい…うぬらは話があるのであろう?妾の事は気にせず話せ」
そう言い、流留はナユタには逆らわず、お行儀良くかっぱえびせんを食べ出す。
「ああ、後。ご褒美としてその揉み上げ?の辺りの触腕みたいな髪も動かせる様にしたから」
「あ、添え言えばさっき動いてたわね」
そんなことなど聞こえるか聞こえないか、かっぱえびせんに夢中の流留である。
「さて、なかなか面白いモノを見せてもらったが。いよいよ本題だ。ナユタ、説明してもらおうか?」
篁は流留の頭をポンポンと撫でながら切り出す。
マスターの淹れた珈琲が全員に行き渡ったところでナユタはそれを1口飲んで話し出す。
「はい。まずはノアにも、総理にも美人(メイレン)さんにもマスターにも、話すことが今になったことを謝ります」
深々と頭を下げるナユタ。
「ガイアスと相談して、本当に信の置ける方にしか話さないようにしていたの」
「そうかい。それだけの秘密なんだネ」
篁が優しく言う。
「はい」
「分かった。決心してくれてありがとう。サ、続きをたのむよ」
うなずき、話し出すナユタ。
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「まず、わたしの身体には無数のナノマシンセルが血液と共に流れてます」
「なのましんせる?」
ノアはわたしに聞いたこともない単語を聞き返す。そうよね、この子のいた世界は科学技術なんか一切ない世界だものね。
「今のあなたにはまだ難しいから、とりあえずそういうもの、ってしておいて」
分かったと、頷くノア。
「そのナノマシンセルはわたしがガイアスの操者になった時に彼から与えられたモノです。
それがないとガイアスの力に身体が耐えられないからです」
ナノマシンセルがわたしに与える力は人知を遥かに超えたものでした。
「肉体の修復能力。再生能力と言えます。先程も右腕が砕けましたが、治るのもほんの数分です」
「それは、凄いわね…」
感嘆の声を漏らす美人さん。
「はい。ですが、修復能力が高まっていても痛覚はなくなっていないので普通に痛いんですよ」
ニコリと微笑むわたし。
「ちょっと!じゃあ、昨日の鳴神嵐とかいうすんごいの使った時も?」
驚いたノアがわたしに質問してくる。
「ええ。あの時も腕がズタボロになってたのよ」
それを聞いた皆さんは驚く。
まぁ、そうよね。わたしが実は戦う度にボロボロになるまで傷ついていて、ものすごく痛い思いしているなんて、わからないわよね。
「だから、ガイアスは戦う度にボロボロになるわたしを気遣ってくれて、敵を確実に倒せるまで乗らせてくれないの」
「それは、驚いた。アンタいっつも涼しい顔してるからねぇ。その他にもナノマシンセルとやらの恩恵は何かあるのかい?」
総理の質問にわたしは答える。
「はい。身体能力の超強化があります」
実はわたしはとんでもない身体能力をもっているの。
流留ちゃんを片手で猫さんを持ち上げる様に持てるのもその為ね。
ガイアスの肩の上でバランスを崩さず掴まってられるのも、身体能力超強化のお陰ね。
これでも日常生活をまともにおくれる様になるのに苦労したのよ?
下手するとお鍋の柄なんか握り潰しちゃうんだから。
わたしは元々身体が弱かったから余計加減がわからなくて…
それから、痛いのさえ我慢すれば本来人間が無意識にかけているリミットを外すこともできます。
もちろん、その際に身体が負ったダメージもすぐに修復されます。
でも、凄く痛いので余程の事がなければやれません。
「わたしの身体については今話した様な感じです」
……
絶句する皆さん。
まぁ、ノア(と流留ちゃん)は良くわかっていない感じですけど…
「成る程、貴女の身体の事はなんとなく分かったわ。じゃあ、ガイアスって何者なの?」
美人さんの質問。
「ガイアスは地球の守護者です。有り体に言えば超古代の知られざる文明が造り出したスーパーロボットです」
。
。。
。。。
まぁ、言葉をなくすわよね。
わたし自信も唐突無形なこと言ってるのは重々分かっているもの。
「随分とざっくりした説明だなぁ、オイ」
「そうね」
マスターと美人さんも言葉をなくす。
「はい。すいません。ガイアス自身がわたしにも段階を追ってしか説明をしてくれないので」
「まぁ、すーばーろぼっととか良くわからないけど、あの強さを説明してよね」
ええ
わたしはノアの問いに頷く。
先ずは基本武装。
ラケーテン・ブロウ。
前腕部を敵に向けて射出する。用はロケットパンチね。
ヴィントスラッシャー。
前腕部から最大3枚展開できる刃、切れ味はバツグンですよ。
シュトゥルムアーム。
前腕部を超高速で回転させるの。打撃やヴィントスラッシャーや後で説明する各シークエンスと組み合わせるのが主な使い方ね。
ブースターキック。
用は飛び蹴り。ガイアスの自重と速度で小細工なく単純に物凄い威力なのよ。
バインブレード。
ガイアスの脛の部分から展開する大型の刃。ヴィントスラッシャー同様に切れ味は凄いわ。
イメージ的にはヴィントスラッシャーが双剣の様な手数や回転数を売りにするのに対して、バインブレードは大剣などの大型剣。重量で威力を上げる感じね。
ガイアスアーク
ガイアスの胸の球体の部分から超エネルギーを放出する技です。シークエンスを使わない、かつわたしが搭乗しない場合の唯一の遠隔攻撃です。ただ、この状態での切り札の様な物なので威力もエネルギー消費もファイナルアタック級なんです。
今の説明の通り、ガイアスは格闘戦に特化したタイプです。基本武装にミサイルやビームみたいなものはありません。遠隔攻撃は各シークエンスを使うことになります。
シークエンスによる攻撃バリエーションは豊富ですね。
今使えるシークエンスは火、水、風、雷、闇の5つ。最も闇のシークエンスは今日の戦いで解放されたのだけど…
シークエンスはどれも強力です。ですが、基本的には大技なので使い所を誤ると大変な事になります。
「なるほど~。じゃあ、あのファイナルアタックとかいうすんごいのは?」
ファイナルアタックはわたしがガイアスに搭乗した時に使えるようになる切り札ね。
威力は見ての通りです。
その分、わたしへの負担も大きくそう何度も使えるものではありません。
「フム。そういうものなんだねェ。ただ、アンタとガイアスが我々にとっての切り札的戦力であることはかわらないわね」
総理は珈琲を飲み干し、カップをノアの方に滑らす。
「ナオトのより、アンタの珈琲の方が美味しいネ。お代わり淹れておくれ」
ノアは顔を明るくして、喜んでキッチンに向かいます。
チョイ、チョイ
流留ちゃんが触腕風の髪の毛でわたしの肩を叩く。
「妾もこーらのお代わりを所望じゃ」
わたしは休憩がてら立ち上がり、ノアのお手伝いをします。
ノアは珈琲の香りを嗅いで、いくつかの豆をブレンドしてミルを挽いています。
(結構、本格的なんだ…)
わたしはノアの所作に感心しながら流留ちゃんのコーラを用意します。
「はい。流留ちゃん」
「うむ。よきにはからえ」
流留ちゃんはかっぱえびせんとコーラをすごく気に入ったみたいね。ご機嫌もすっかりよくなったわ。
「はい。出来たよー。今回は、ムッフフ♪飲んでからのお楽しみね」
嬉しそうに微笑むノア。
わたし達はノアの出してくれた珈琲を楽しむ事にします。
豊かな珈琲の香りがお店に広がります。
口に含むと苦味は弱く、少し酸味が強め。飲み込むと鼻に戻る豊かな香り。
「これは素晴らしいわね。ナオトのより美味しいわよ」
美人さんが絶賛します。
うん。わたしもそう思う。
「確かになぁ、大したモンだ」
マスターもそこは素直に認めたみたい。
「う~ん、良いネェ。さて、ノアの珈琲で気分もリフレッシュしたところで、アンタとガイアスの馴れ初めについて話しておくれ」
な、馴れ初めって(汗)
わたしとガイアスは、その。
恋人とか(汗)
夫婦とか(汗)
そういうものでわ……
で、でも総理の言うことはあながち間違いでもないから否定できないのが悲しい…
「わ、分かりました。わたしとガイアスの出会いについてお話します」
そう、あれは、去年の夏休みでした………
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