第2話 ナユタ、すんごい!巨大ロボット、すんごい!

あたし、ノア。ノア・セリーナ。


大魔導士ノアよ。


元の世界、(原界っていうんだけど)での役割を終えた自分に与えられた使命を果たすため別の世界にやってきたの。


やって来た世界は、何かの催し物の最中の場所に出たの。


そこでは、あたしの原界での仲間達の『こすぷれ』とかいうのをした人達がたくさんいて、とても賑やか!


いきなり変な邪神が出てきたけど、ま。あたしの敵ではないわけ。


今は、出会った女の子、布瑠部ナユタに色々案内してもらっているところ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここは、東京ビッグサイト。


大人気作品のイベントの真っ最中だ。


先程、邪神が現れ、それを異世界からやってきた少女ノアが難なく撃退し、封印した。



そして、そのノアと出会ったのが布瑠部ナユタという少女。


黒髪の艶やかなロングヘアー。左側の1房を顔の横で(揉み上げの辺り)赤と白の糸の様なものと一緒に編み込んでいるのが特徴的だ。

少し大きめなお洒落っ気のない眼鏡をしている。

今日は白を基調とした涼しげなワンピースに薄ピンクのカーディガンという装い。

首からは少し大きめな金色のロケットペンダント。よくみると細かで精緻な細工がしてある。

左手首にはパワーストーンのブレスレットと、ミサンガ。

靴もワンピースにあわせて白のスニーカーである。

肩から水筒などを入れるためのポーチをかけている。何とも言えないデザインのキャラクターの(一言でいえばちょっとキモい)キーホルダーをつけている。


ナユタは優しく真面目で面倒見のいい少女だが、世間一般的にちょっと気持ち悪い動物やキャラクターが好きなところがある。


なお、好きな動物はハダカデバネズミ。

好きなモンスターはフルフル。


両親は著名な考古学者で、ナユタもそういったものに多く触れてきており造詣が深い。



「はい。これはどう?」


打ち解けたノアと一緒にフードコートを回り、物珍しそうにするノアにご馳走をしている。


「へぇ…珈琲がこんなスイーツにねぇ」


フラペチーノに舌鼓をうつ。


「改めて、のんびりみてみると、賑やかねぇ」


ノアは感心しながら周囲を見渡す。


ノアのようにコスプレ衣裳のままフードコートを楽しんでいる人達もいる。



「さっきのあれは一体…」


「んー。邪神や禁書の類いよね。もしかして、この世界では珍しくない?」


「珍しいと言えば珍しいのだけど…」


何処か不安気にペンダントを握りしめるナユタ。


ノアの一言で皮肉にも例のクトゥ・ル・ルーという邪神の存在がナユタの感じている不安ではないことが彼女自身には分かってしまった。


(ガイアス…)


ナユタはある存在のことを心で呟く。



「どーしたの?何か不安なことでも?大丈夫、大丈夫!あたしが何とかしてあげるからさ」


フラペチーノを飲み干してから言うノア。


「美味しいけど、やっぱり、珈琲には何も入れない方がいいな♪」


ノアはカラカラと笑う。



ノアは知る由もないが、実はこの地球は侵略を受けている。


この事はすでに世界中に知れ渡っており、物珍しい事ではない。


脅威と戦うための組織も出来上がっている。


先程のショーで観客がパニックを起こさなかったのもそういう事情があった為である。


そして、何を隠そうナユタ自身も地球を護るための組織のメンバーなのだ。


故に、ナユタ自身は先の邪神騒動の様なものには慣れっこなのだ。


「ま、あなたが何の心配をしているか分からないけど、このあたしがいるから大丈夫よ!」


胸を張るノア。


大きめの胸が強調される。


スタサガの作中ではここでノアの上着のボタンが弾けとんで、ニーナに当たり、胸の話題になりニーナが悔しがる、というのが定番の流れだ。


あはは、と2人は笑い会うのだった。



………



ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、


息を切らしながら歩く10歳くらいの女の子。


先程、ノアに封印された禁書の邪神クトゥ・ル・ルーである。



暑ひ………



重ひ…………



乾く……………



干からびる………



ノアから本体の禁書を取り返すべく禁書の魔力を追い、ビッグサイトに向かっている。


乗騎の眷族すら召還できず、自らの足で歩いている。



地上を歩くのがこんなにも重労働だとわ………



おのれ、ニンゲンの小娘め!



等と思いはするものの如何せん、動きが鈍い。


何とかビッグサイトの会場にたどり着くも、その場でべちゃりと潰れる(倒れる)


なお、本日の東京ビッグサイトは気温32度を記録していた。


熱しきられたコンクリート。


強烈な照り返し。


陽射しを遮るものは何もない。


体感温度は40°に近いだろう。



そして



「み、水…出来れば海水を…ひ、ひからびる…」


手を伸ばし、意識を失う。


人間で言うところの脱水状態と熱中症である。


………


「はっ!」



邪神クトゥ・ル・ルーは目を覚ます。


「あら。お目覚めね、可愛い邪神さん」


ノアが手をヒラヒラさせる。


ノアが魔力を探知して入口で倒れていたクトゥ・ル・ルーを確保したのだ。



「ぐぬぬぬ。うぬは先程の小娘!ここで会ったがうぬの運のつき、さあ我が本体を寄越せ!」


勢いよくノアに向かおうとするが、その場でべちゃりと踏まれ、潰れる。


「くっ、み、水が、足らぬ…」


そこにナユタがスポーツドリンクを持って現れる。


「はい、どうぞ」


クトゥ・ル・ルーはナユタからスポーツドリンクを引ったくると一気にごくごくと飲み干す。


「ぷはー、生き返るわ!海水の方がよかったが、背に腹は変えられぬ!」


「あなた、お名前は?」


ナユタはクトゥ・ル・ルーの目を見て聞いてくる。


完全に子供扱いである。


「ふ、ふふん!妾の眼を直視して発狂しない精神力は誉めて使わす。妾こそは、禁書『深淵なる叡知』クトゥ・ル・ルーぞ。頭が高い!平伏せよ、ニンゲン!」


「ハイハイ。九頭流留(くとう るる)ちゃんね?」


ノアはそのやり取りを見て大笑い。


「あはは!そんな姿でここまで来た根性は認めるけど、今のあんたじゃあ何にも出来ないわよ?」


ぐぬぬ、と、下唇を噛み、悔しがる邪神。


「ところで、ナユタ。あなたも、コイツがこの気持ち悪い邪悪な禁書の化身だということ忘れないでよね?」


人皮で装丁された古書を見せる。


「寄越せ!」


邪神が飛びかかろうとする。


「むぎゅう…」


それをノアは再度、邪神の頭をふんずけて止める。


「だめだめ。ま、仮にあんたの手に渡っても厳重に封印術式をかけてあるし。あたしにしか解けないから意味ないけどね」


足で邪神の頭をぐりぐりする。



「な、何と言う屈辱…おい!娘!助けろ!」


邪神はナユタに助けを求める。


「もう、ダメよノア。いくら邪神でも見た目は可愛い女の子なんだから~」


ノアの足を払いのけて、邪神に思い切りハグをする。


「いやいや、ハグはダメでしょう。気持ち悪いじゃん、コイツ。一応、邪神だし、湿っぽいし、イカだかタコだか分からないし…」


そこが可愛いのよ~


ナユタはニコニコ顔でハグする力を強める。


ミシミシと音が聞こえてくる。


「痛い!痛い!分かった、妾が可愛いのはよく分かったから離してくれ!潰れる!おい!小娘!助けろ!」


ナユタのキモカワ好きが炸裂である。


「ハイハイ。とりあえず、離れようね、ナユタ」


ため息をつきながらノアはナユタを邪神から引き離す。


んで


邪神の首根っこをつかんでつまみ上げる。


「やめんか!小娘!離せ!離せ!馬鹿者!」 


手足をジタバタさせる邪神。


「これ、どうするの?このままって訳にもいかないんだけど…」


「勿論、連れて帰ります!放っておけないのでしょう?それに…」


ナユタは邪神をノアから取り返し、抱っこする。


「あなたも行くアテ、ないんでしょう?」



ノアを見て微笑む。


「なので、今からこの娘のこのことは流留ちゃんで統一です」


ノアはため息をつきながら「ハイハイ」と肩をすくめる。


「わ、分かった!流留でも何でもいいから、兎に角下ろせ!」


うふふ、と楽しそうに微笑むナユタ。


だが



急に流留を抱っこしている手を離す。


べちゃっ



尻餅をつく形になる、クトゥ・ル・ルー改め、流留。


「たわけ!下ろせと言ったが離せとはいっておらん!もっと丁寧に扱え!」


手をバタバタさせてナユタに文句を言う流留。


そのナユタはペンダントを握りしめ、険しい表情をし、一点を見つめていた。



来る………!



…………


突如、ナユタの見つめた方角の空間が歪む。


歪んだ空間から腕の様なモノが伸びてくる。


その歪んだ空間を腕でこじ開けるようにし、黒い、影が形を作ったかのようなモノ。血管の様に赤いスジが全身にはしっている人の形をした何かが現れる。


それは咆哮をあげる。


そして、ここビッグサイトに向かいゆっくりと歩みを向ける。


「何、あれ?」


ノアは口をあけ、ナユタに問う。


「あれこそが、今、この地球を侵略している脅威。混沌獣、ケイオスビーストとわたし達は呼んでるわ」



行かなきゃ…



ナユタは説明もそこそこに駆け出す。


訳も分からず残される、ノア。


「どうする?」


「妾に聞くな」



混沌獣が確認できたビッグサイトでは手際よく避難がはじまる。


その避難する人々とは逆の方向に走るナユタ。


おっとりした感じとは裏腹に足は早い。


息も切らさずに一気に高速で駆け抜ける。



ここまで来れば…



ナユタはネックレスを天に掲げ、その者の名を呼ぶ。


『ガイアス!』


するとナユタの前方に光の輪、魔方陣の様なものが展開される。


そこからゆっくりと、白銀色に輝くボディをした巨神(分かりやすくいえば巨大ロボット)が姿を表す。


胸元と額、両の手の甲と両の足首には地球を思わせるかの様な球体のパーツが埋め込まれている。

その球体の回りは金色のパーツに覆われている。

そして、頭部には3本の角のような装飾があるのが特徴的だ。

全高は30mくらいはあるだろうか。


その巨大ロボット、ガイアスは片膝をつき、手を差し出す。

その掌にひょいとナユタは飛び乗り、ガイアスの顔を見て頷く。

そのままガイアスは立ち上がりながらナユタを自身の左肩に移動させる。


ふわりとナユタの髪とスカートが風になびく。 


「行くわよ、ガイアス!アレをこれ以上行かせてはだめよ!」



『分かった、ナユタ』


ナユタの言葉に反応するしガイアス。


青く、眼が輝く。



「ラケーテン・ブロウよ!」



『応!ラケーテン・ブロウ!』


ナユタの掛け声に応じ、ガイアスが両の拳をつき出す。


ガイアスの肘から先が射出され、混沌獣に向かって放たれる。(要はロケットパンチ)


ナユタの戦いがはじまる。




………






「すんご~~~~~~~~~~~~~~い!


何アレ!?」


ノアは突如現れた巨大ロボットに大興奮だ。


何せ、元々の世界には存在していなかったモノだからだ。


「機神じゃと!あの娘、機神の担い手かっ!?」



キシン?何それ?


ノアが思ったのは言うまでもない。


「でも、ナユタ1人にはまかせられないよね!」


ノアも駆け出そうとする。



「待て!」


流留が呼び止める。


「うぬはこの世界の者ではないのであろう?何故戦おうとする?」


なんだ、そんなこと。と言わんばかりの顔でため息をつくノア。


「確かに、あたしは、あんたみたいな禁書を封印するために別の世界から来たけどね」


だったら…と口を開く流留。




「あたし、世界の守護者なのよね。それはこの世界でも、もとの世界でも、はたまた別の世界でも変わらないわけ」


だから、戦う!


自身に満ち溢れる笑みをもらす。


「じゃあね」


ナユタの元に行こうとする。


「待て!」


それを流留が呼び止める。


「妾も連れていけ!このままここで干からびるのはゴメンじゃ!」



この邪神が一般人に見つかっても面倒だな、と、直感的に感じたノアは、流留の首根っこをムンズと掴む。



「おい!妾は猫ではないぞ!その持ち方はやめんか!」


足をバタバタさせる流留。



「え~、やだ。あんた何かじめっとしてるんだもん。嫌なら置いてくよ?」



ぐぬぬ、と下唇を噛む流留。



「というか何でうぬと言い、先ほどの娘といい、こうも軽々片手で妾をもちあげれるのだ!これでは妾の権威というものが!」



ハイハイ、と適当に相槌を打つノア。



「ま、あたしは魔力で身体能力を強化できるからね」



冷静に考えると、この邪神の言うことは的を得ているのだが、今は深く考えないことにするノアだった。



「よし!空飛ぶよ!飛ばすから暴れて落ちるなよ~!」


ノアは流留の首根っこを掴んだままナユタの処に向かう。




ー待っててね!今行くよ、ナユタ!ー





…………



ナユタと混沌獣の一進一退の攻防が繰り広げられている。



「火のシークエンス、炎矢嵐!!」


ナユタが掛け声を発するとガイアスの右手の甲のパーツが赤く輝き、右手から無数の炎の矢が嵐のように放たれる。

炎の矢の弾幕が混沌獣を後退させ、爆煙が立ち込める。


ガイアスは、「シークエンス」という属性攻撃を使う。

今ガイアスが使ったのが火のシークエンス。他にも風や雷といった複数の属性を操ることが出来るのだ。



「やった!」



ナユタは追撃の手をゆるめ、少しばかり気を抜いてしまう。



その時


『いや…手応えがない』


爆煙の中から混沌獣の腕が伸びてくる。



その腕は一直線にナユタを襲う。


自然とナユタを庇う動きを見せるガイアス。


混沌獣の腕が直撃しようとしたその時




ナユタとガイアスの前に障壁が展開される。



ガキィーーーーン



という、金属がぶつかり合うのに似た音が響く。



「ムッフフ、お・ま・た・せ♪」



ノアが文字通り『飛んで』来たのだ。


「ノア!」


ノアはナユタの近くに寄り


「あなた、すんごいのね!後で詳しく教えてね!」


「ええ、ありがとう」


先ずは



2人は混沌獣に向き合う。



「おい!ニンゲンども」


ノアに首根っこを捕まれた状態の流留がジタバタし、自分の存在を強調する。


「妾も手助けしてやる!ありがたく思え!」


腕を組んで偉そうに言う。


「あんた、この世界を脅かす邪神の一柱でしょうが。何でアレと戦うのよ?」



「ふん!うぬらを助けるのではない!あんなのに妾が侵略するための世界を荒らされては困る!だから仕方なくうぬらを手助けしてやろう、というわけじゃ。さあ小娘!封印を解け!魔力を寄越せ!」


ノアはどうする?とナユタを見る。


「仕方ありません。こうなったら流留ちゃんにもお手伝いしてもらいましょう」


にこやかに答えた直後、真剣な顔をして


「それだけ、危険な相手なの。混沌獣は…」


ノアに言うナユタ。



この世界の事をまだよく知らないノアも、ナユタの気迫から混沌獣が危険なモノであることは瞬時に理解できた。


実際にノアのもといた世界でも混沌(ケイオス)との戦いは永遠と続いていた。


「分かったわ」


ノアは禁書を取り出し。


「禁書『深淵なる叡知』封印術式限定解除!」


ノアは禁書の封印を一時的に解除する術式を展開する。


光に包まれた流留が成人女性の姿(要は最初に現れた時の姿)へと変身していく。




「ふふふ…



漲る!!魔力が漲るぞ!!!


潤う!!カラダが隅々まで潤うぞ!!!


ふはははは」



カラダが急成長し、巨大化もし、気分も大きくなる流留。



「いい気になるのはいいけど、変な真似したら即刻、もっと厳重な封印を施すからね!」



「致し方ない、分かっておるわ!では、いくぞ!」


髪の毛の触手で混沌獣を攻撃する流留。


混沌獣の両腕を捕縛し口から圧縮水流を吹き、攻撃する。


「以外に器用なのね、あいつ」



さらに、別の触手で四方八方から叩きつける。



「そうね」


ガイアスの左肩に乗ったまま答えるナユタ。


『ナユタ。あれは邪神の類ではないのか?』


「そうだけど、今はわたし達の味方よ」


『そうか。ならば巻き込まないように気を付けるとしよう』


ノアがナユタの近くに飛んでくる。


「あなたそんなところで大丈夫なの?」


「ええ、ガイアスが守ってくれるから平気よ」


ナユタは微笑む。


「でも、弱点がなかなか分からなくて、攻めあぐねてたの」


2人は頷く。


先ずは、弱点探しね!


「あなたは少し休んでてよね!行くわよ!ゴールドインパルス!!」


ノアは光の一撃を放つ。


混沌獣に直撃するが、効果が薄い。


「混沌獣は弱点以外の攻撃には強い耐性を持っていることが多いの。さっき炎で攻撃したけど、効果は薄かったわ」


「成る程ね」



ノアは魔力球を大量に作り出す。

この魔力球等の扱いを、ノアの世界では『法術』という。ノアが開発した魔法であり、自分の魔力を臨機応変、自由自在に変化させて操るモノだ。


「先ずは動きを止めないとね!」


そして、魔力球で全方位から攻撃する。


動きは止まるがやはりダメージは少ない。


『ナユタ。彼女は?かなりの実力者の様だが?』


「そうね。別の世界から来た最強の魔法使い、ってところかな。信頼できるわ」


『そうか』


ガイアスの質問に答えるナユタ。



「おい!娘!此の弱点が分かればよいのだな?」


流留がナユタに声をかける。


「ええ、そうだけど何か手があるの?流留ちゃん」



「任せよ!妾は叡知の書ぞ?おい!小娘!そのままこやつの足を止めよ!」


仕方ないわね!


と、魔力球の弾幕を強める。


由、行くぞ…



流留は片側の髪の毛を束ねていく。


束ねた髪の毛の先端が鮫の頭の様な形に変わっていく。


「くらえ!!」


と左右の鮫の頭になった髪の毛で混沌獣に噛みつく。



ギチギチと耳障りな音が響く。



そして


ブチブチブチッという音と共に混沌獣のカラダの一部を喰い千切る。



「どうじゃ!思い知ったか!」


鮫の頭がワショワショと喰い千切った混沌獣の体組織を咀嚼し




ゴクリ




「「飲んだ!!」」



さすがに、この光景にノアもナユタも驚く。



げふっ



流留がゲップをする。



「不味いのぉ。おい!ニンゲンども!こやつの弱点は雷属性じゃ!」



どういう能力なわけ?2人が思ったのは言うまでもない。




「ふふん!妾のメガロバイトで捕食すると、相手の肉質や弱点などが手に取るように分かるようになるのじゃ!凄いであろう!」


(そして、捕食対象から魔力も補給出来るのじゃ!見ておれよ小娘!)



確かに凄い…



最も捕食できなかった場合は何も分からないという弱点があるわけだが。



「ノア!流留ちゃん!もう少し時間を稼いで!わたしとガイアスもフルパワーで戦います!」



「オーケー。頼んだわよ」



ところで



「流留!あんたもう少し足止めできないの?」



「妾を誰だと思うておる!それくらい容易いわ!!」


今度は髪の毛を巨大な蟹の鋏に変化させる。


そして、その蟹の鋏で混沌獣を左右から挟み込む。




「ふはははは!これで動けまい!!」



事実、カニバサミのパワーは凄まじく混沌獣を完全に押さえ込んでいた。



よし、今なら!


「ガイアス!」


『応!!』


ナユタは意を決して。


『ガイアス!ハート・イン!!!』


ナユタはガイアスの肩から胸の地球を模したパーツに飛び込む。


まるでプールに飛び込むかの様にとぷんと波紋を広げガイアスの内部に入る。


光の奔流の中を進むナユタは、ガイアスの心臓部に到達する。


その中では、ナユタは例のペンダント以外何も身に付けていなく光に包まれていた。


『ガイアス!アクト・アズ・ワン!!』


ナユタが掛け声を上げると、ナユタの髪の毛が銀色に変化し、ぶわりと広がる。


その内の何房かは天井や背部に「接続」される。


額にサークレット、両手首、両足首に金色のブレスレットの様なものが装着され、それぞれが地球を模した装飾がなされている。


最後に胸のペンダントが同じく地球の様な宝玉に代わりナユタの胸元に半分埋め込まれる様な形になる。


そして、その胸の宝玉からナユタの全身に蒼く煌めく光の奔流が流れる。


ガイアスにも変化が現れる。


肩や腕、足のパーツが盛り上がりナユタの全身を流れる蒼い煌めきの奔流が、ガイアスの全身にも現れる。


後頭部から銀色に輝く長い鬣の様なものが発現する。


これがガイアスのフルパワーモードである


ナユタが直接ガイアスに搭乗することではじめて発現するのだ。


『ナユタ。いつも言っているが、長い戦いは君の身体が持たないぞ』


「分かってる!!一気にいくわ!」


呼吸を整え。


「ガイアス!雷のシークエンス!プラズマドライブ始動!!」


『応!雷のシークエンス、プラズマドライブ始動!!』


ガイアスの両腕に雷が集まり始める。


一方のノアは



「大海の覇者、迸る青き雷!ブルーサンダーー!!」



流留が捕まえている混沌獣に雷の魔法を放つ。


こちらは竜皇が1つ。大海の覇者である「迸る青き雷 ブルーサンダー」の力を解き放つ。


青い雷が混沌獣を覆う。


バリッ!バリッ!


超高圧の雷撃が全身に迸り混沌獣の体表を焦がす。



オオオオオオオオッーーー!!



混沌獣の叫び声が響く。


「効いてるわね!」


この戦いの中、攻撃を与えた状態で混沌獣が吼えたのは今回がはじめてだ。



ノアの青い雷が混沌獣のカラダを少しずつ消滅させていく。


そこに


「ノア!流留ちゃん!離れて!」


ものすごい勢いでガイアスが迫る!


『おおおおおおおっ!』



流留は器用にカニバサミの部分だけを切り離す。


混沌獣はカニバサミに拘束されたままだ。



「あんた、以外にインファイターだったのね」


「ふふん!恐れ入ったか!」


ノアは指で形を作り


ほんの、ちょっぴりだけ、ね。流留をからかう。



流留がカニバサミを切り離し、ノアが雷撃の攻撃を止めた直後、ガイアスがタックルをしてくる。


「やあああああ!」


ガイアスが雷を纏うパンチの連打をする。


なお、内部のナユタもガイアスと同じ動きをしている。


ナユタの動きとガイアスの動きはリンクしているのだ。


混沌獣が怯んだところでナユタは思い切り踏み込み、背中から体当たりをする。中国拳法でいうところの鉄山靠の動きだ。


踏み込みで地面がひび割れたのは言うまでもない。


そして、混沌獣が体勢を崩したところに二連続の蹴り技で蹴り上げる。二起脚の動きに近い。


上空に混沌獣が蹴り上げられた所で、両の腕を突きだし混沌獣に向ける。


「プラズマドライブ、フルチャージ!!」


ガイアスの前腕部に雷のエネルギーが収束する。


「シュトゥルムアーム、起動!」


ガイアスの前腕部が回転を始める。


ガイアスの両腕に、雷とプラズマの奔流が生まれる。


「今よガイアス!!」


『応!雷のシークエンス!鳴神嵐!!!』




両腕に発生した雷とプラズマの奔流が嵐となり混沌獣を襲う!



「す、すんごい…」



さしものノアもその破壊力を察し驚きの声をあげる。



「あ、あんなの妾でも耐えられぬぞ…」


流留も冷や汗を流す。



雷の嵐が治まると、体組織の8割以上を失った混沌獣がいた。



「うそ!アレでまだ生きてるの!?」


さすがのノアも驚く


そして、混沌獣は最後の力を振り絞り空間を歪め始める。


「おい!逃げを打つ気じゃぞ!」



ノアと流留が追撃に動こうとする。



「逃がさない!」



鳴神嵐で倒しきれない可能性を想定していたナユタはガイアスの角の1つに雷のエネルギーを収束させていたのだ。




「ガイアス!ファイナルアタックを使うわ!!」


『応!雷のシークエンス、ファイルアタック!雷・光・刹!!!』



頭部の角に収束された雷のエネルギーを頭を大きく振るい、解き放つ。



超巨大な雷の剣が混沌獣を開きかけたゲートごと切り裂いた。





オオオオオオオオッーーー!!




断末魔の咆哮を上げ混沌獣は消滅する。





こうして、ナユタとノアと流留による奇妙なトリオの活躍でビッグサイトは、地球は護られたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ちょと!


見た見た?


あのナユタ勇姿!!


すんごかったね!


只者じゃないって感じてたけど、あれほどだったなんて…


それから、あの『ガイアス』ってのも気になるよね!


でも、やっぱりこの世界も混沌の侵略を受けてたんだね。


だから、あたしが導かれ、来たわけね。


ま、何はともあれあの混沌獣、ケイオスビーストってのからみんなを守れて良かった、良かった!

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