犯人は探偵? @ コンビニ駐車場

 ぽんっ


「ほらっ、喉乾いたろ? なんでスマホも財布も持たずに外に出るかなぁ? 」


「ありがとうございます。

 なんか夢中で……気づいたら自転車に乗って高校にいたんです」


 コク コク コク……


「この馬鹿千紗。心配したんだぞ? 」


「ごめんなさいっ! 」


 ぺこー!!


「ごめん、頭あげて? 」


「でも……」

「いいから! 」


 ぐいっ


「なんで泣くの? 」

「へへ……最近泣き虫になっちゃいました」


「……なんで? 」



「私、先輩が事故にあったって聞いたとき凄く悲しくなったんです。


 ほんとに……ビックリする位。


 命に別状はないけど、左腕を骨折したって聞いて……あんなに一生懸命やってたテニス、最後の試合がダメになると思ったら、いてもたってもいられなくて。原因が知りたくて。

 だから事件じゃないかもだけど、調べたんです。そしたら犯人は……私?


 先輩のあんなに青ざめた顔始めて見ました。悲しかった。

 光秀くん、私はもしかしたら先輩のこと――」


「千紗! 先にこれ見て。千紗は悪くない。

 ……悪くなんかないからっ!」



「ひっく、ひっく……」

「見れないか……、なら読み上げるから聞いて」



「【自分のやってしまった事が恐ろしくて、匿名ですが自供させてください。


 私が秋月先輩の自転車に細工しました。

 ちょっと困ればいいなと思っただけなんです。ちょっと切ったりゆるめたりしただけ。それがあんなことになるなんて……。


 今は本当に反省しています。

 秋月先輩は色んな意味で憧れの存在で、本当に好きな人なんです。


 でも少し前に振られました。


 告白した訳じゃない。ずっと見てきたから分かる。先輩に好きな人が出来たのが分かったんです。


 こんなに想ってるのに振り向いてくれない。

 そんな先輩のことがドンドン憎くなって、あの穏やかな顔が今の私みたいに歪むのを見てみたくなって、やってしまいました。


 でも友達と一緒に面会に行ったら、それでも先輩は笑ってた。


「俺のミスで車の運転手さんにも悪いことしちゃったなぁ」

 って悲しそうにしてた位。

 朝は何ともなかった自転車が、急に壊れたのを疑問に思わない筈はないのに。


 あんなに素敵な人は他に私は知りません。


 だから、誰のものにもしたくなくなった。


 私は更に間が指したんです。


 誰にも聞こえないようにコッソリと先輩に『が事故の前に先輩の自転車を触ってた』って耳打ちしたんです。


 その時先輩の顔が歪んだのを見て、嬉しくなった私は本当に性格が悪いです。


 この事実を匿名でしか自供しないことも。

 ある人の名前に先輩のをあげたことも。

 私の言ったことが嘘だと分かっても、

 私が真犯人だって突き止めても、

 先輩は私を責めないと信じてることも。


 ほんと性格悪い。


 でもこんなことになったのも、先輩を私から奪ったあの女のせい。


 学校の名探偵? 笑わせるな。

 お前が先輩を傷つけただ 。


 はは、やっぱり私は反省なんてしていない。

 だってこんなにも先輩を失った悲しみと憎しみで前が見えない。 】」




「やっぱり……私が……」


「千紗、違う!

 こんな奴の言うこと真に受けなくていい」


「せ、先輩に謝らないと……」


 ふら……


「千紗っ! 」



 犯人は探偵ではなかったが、

 事件の一因は探偵にあった……。


 次回最終話【事件の迷惑料@?】へ続く

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