被害者面会 @ 個室

 ぱたぱたぱた……


「光秀くん! 」


「千紗どしたの? そんなに急いで」


「秋山先輩が目を覚ましたそうです! 」


「マジか……それは良かった」


「授業が終わったら一緒に面会に行ってくれますか……? お願いします! 」


「いいけど、なんでそんなに泣きそうなの? 」


「鏡を見るたびに【探偵の勘】が私が犯人だって言うんです。

 それが嫌で鏡もあんまり見れなくて……。私、変じゃないですか? 」


「ん~、右側だけ髪の毛が跳ねてるな。

 この間までショートだったのに伸びたな」


「へ、変ですか? 面会大丈夫かな? 」


「千紗は何もしなくても最強に可愛いから、髪の毛位は跳ねさせておいた方がいいよ」


「えっ? 」


「いや、なんでもない」


「あと……光秀くん」


 さわっ ぺと……


「な……」

「ほっぺた腫れちゃいましたね。少し赤くなってる。熱は持ってなさそうだけど……」


 ぺと ぺと ぺと……


 じー


「折角こんなにイケメンさんなのに、うちの弟がすみません。あの後ちゃんと叱っておきました」


「いや、別に大丈夫だよ。

 それよりあのとき……」


「ごめんなさいっ! 」


 ぺこりっ


「千紗、頭下げなくても。

 こんなのすぐ治るから、顔あげて? 」


「うぅ……光秀くん優しいです。

 私ほっぺに唇ぶつけちゃったのに」


「いや、むしろそこは謝んなくていいやつ」


 キーンコーンカーンコーン……


「あっ、じゃあ放課後よろしくです! 」


 ぱたぱたぱた……


「はぁ……俺は嬉しかったんだけど? 」



 ◇○◇



「先輩は話せる状態になっているそうです。

 でも『自分の不注意による事故だ』って言ってるそうで……」


「そうなんだ。ならやっぱり勘は気のせいで事故なんじゃない? 」


「本人に詳しく話を聞いてみましょう」



 コンコンッ


「失礼します」


 ガラッ



「秋月先輩、こんにちは。

 具合はどうですか? 」


 ガタッ


「えっ、先輩どうしたんですか?

 顔色が悪いです。大丈夫ですか? 」


「千紗……」


「先輩、なんで目を反らすんですか?

 ねぇ、今回のは事故じゃないんじゃないですか? 」


「千紗」


「先輩こっち見てください。

 ……なんで? いつもあんなに楽しくお話してくれたじゃないですか?

 私は探偵ですが先輩が話してくれなきゃ、この事件は解けませんっ! 」


「千紗っ! 」

 ぐいっ



「光秀くん……」


「先輩、具合悪そうだからもう止めな?

 無理して聞き出すのは千紗らしくない」


「でも……先輩、腕も骨折して試合が……」


「なんで、千紗が泣くんだよ?

 とりあえず、帰ろ?

 目が覚めた後で先輩も疲れてるよ」


「ぐすっ、先輩……ごめんなさい。

 でも、私は大好きな先輩の力になりたかったんです。

 また、来ますね?


 私は先輩をこんな目に合わせた犯人を許せないです。事件は私が解決してみせます!

 事故だっていうなら2度とこんなこと起こらないようにしますから。


 だから……、だから、また来ます」



「千紗がお騒がせしました。失礼します」


 ガラッ ピシャン……




 スタ スタ スタ……



「ひっく、ぐすっぐすっ……」


「千紗……泣かないで?

 絶対に千紗は犯人じゃない」



 優しかった先輩はなぜ千紗を拒否したのか。

 これは事故なのか?

 迷探偵は真相にたどり着くことができるのか?


 【熱血探偵@自転車置場】 へ続く



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