事件検証 @ 迷探偵の家

 ピンポーン……


 トントントン――ガチャッ!


「光秀くん、遅かったですね。

 ご飯も必要なものも私の家にあると思うんですが。

 光秀くんの家はすぐ隣なのに……

 何処か行ってたんですか?」


「悪い、予想以上に展開が早すぎて用意してなかったから。あと心の準備」


「何をですか? 」


「……何でもない。そんな無邪気な目で見ないでくれる? 」




 トン トン トン トン……


「こうやって千紗ん家来るのも久しぶりだなぁ~。千紗の部屋、2階になったんだな」


「はい、そうですよ。こっちです。

 小学生位まではよくいっしょに遊んでましたよね。なんでお家に来なくなったんでしたっけ? 学校では一緒にいるのに」


「千紗の大事な弟くんがね……」


「へっ? りくがどうかしました? 」


「いや、相思相愛なかよしな姉弟でひとりっ子の俺からしたら羨ましいってだけ」


「そうですか。

 確かにうちの陸は本当にいい子で大好きです。まだ中学生なのに可愛い彼女もいるんですよ~」


「えっ! あいつ彼女なんて作ったの?

 人のことは散々邪魔したのに?」


「邪魔? 何のですか?

 はい、ここが私の部屋です。適当に座って下さい」


 ガチャッ



「へ~、相変わらずミステリー小説がズラリだな。部屋が変わっても中身に変化なし。

 整理整頓もキッチリ。千紗らし~」


 ぽすんっ


「陸がいつも散らかすので片付けるのが大変なんですよ。

 昨日もベッドを占領して、こっちは事件のこと考えてるのに話しかけてきて……」


「なっ、あいつ。何で彼女いるのに千紗の部屋でくつろぐんだよ?! 」


「『姉ちゃんには気を遣わなくて楽』だそうですよ」


「千紗……抱きつかれたりしてないよな? 」


「えっ? ハグはしますけど、家族ですし。

 陸ってば、

『家族ならずっと一緒にいられる。姉ちゃんが一番好き』って言ってくれるんですよ。

 可愛すぎますよね~ 」


「……それ千紗は何て答えんの? 」


「もちろん『私も陸が好きだよ~』です」


「……俺にはいまだに敬語なのに、陸には違うんだな。長い付き合いなのに」



「光秀くん……、なんでそんな顔するんですか?

 私は家族以外には敬語って自分で決めてるんです。常に客観的で冷静にいられるように。

 犯人が探偵の近くにいたって結構よくあるパターンなんですよ?

 それでも心の距離は縮めますが、敬語だけは私のポリシーなの分かってるでしょう?」


「分かってるよ。あと俺が何年か我慢すればいいだけ……」



 ゴソゴソ

 カチッ


「さぁ、事件検証を再開しましょう」


「それ、俺のあげたボールペン。家でも使ってくれてんだ? 」


「当たり前です。何処に事件解決の鍵が転がっているのか分からないので、メモ帳とこのボールペンはいつも持ってますよ」


「ありがと。

 んじゃ、また事件のメモ貸して、俺が読み上げるから千紗は考えて? 」


「わかりました。どうぞ」



 ぽすんっ


「ち、千紗、なんで俺の横に来んの? 」


「読み上げもいいんですが、視覚的に文字を追えた方が私は考えやすいんです。

 嫌ですか?

 エアコン着けてるので暑くはないかなと」


「嫌じゃ……ない。けど……」


「昼間汗かいたので、さっきシャワー浴びたから匂いも大丈夫なはずです」


「俺は……色々大丈夫じゃないかも。

 う~んと【被害者の自転車は……】」


 ドキドキドキドキ……




 一体誰が何に胸を拍動させてしまうのか?

 自転車はどんな状態だったのか?


 この話はちゃんとミステリーなのか……?


 【事件勃発@迷探偵の家】 へ続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る