【短編版】図書室の隅っこでイジメられてた、おさげのメガネっ子を助けたら告られたんだけど、実はすげー巨乳の美少女だった ~今さら他のヤツが気づいても、もう遅い~

有馬美樹

「地味子」に告白されたんだけど!?

藤岡ふじおかくんッ」


 俺を呼び止める声がした。

 夕日を浴びた、おさげ髪。

 黒髪が金色に輝いていた。


「私と、つきあってください!」


 絶句。


「私をかばってくれたの、藤岡ふじおかくんだけだったから」


 呆ける。


藤岡ふじおかくん、カッコよかった。みんな、怖いっていうけど。私、違うって信じてる」


 驚いた。

 そんな芯の通った言葉が。

 弱虫だって思ってたヤツの口から飛び出してくるなんて。


「ちょ……ちょっと、待ってくれ、字見あざみ


 惚れた腫れただの。

 ケンカした別れただの。

 俺には関係ねえ。くだらない話だと。

 そう思ってた俺に、女の子から告白。

 例えるなら、そう――あれだ。


『親方! 空から女の子が!』


 そんなわけあるか、ボケェイ。

 だが、俺の目の前には切実な顔をした女がいた。


「……いきなり言われても、なぁ」

「誰か、好きな人がいるんですか」

「いるわけねーだろ、そんなヤツ」


 即答。

 名前だけは美しい、クソみたいな中学校で。

 素敵な想い出づくりなんて、なんにも期待してない。


「だったら、私とつきあってくださいッ」

「なんでだよッ。なんでそうなるんだよ」

青葉あおばくんが好きだって、気づいたから」


 どストレートを鳩尾みぞおちにくらった。


(な、名前呼びかよ……ッ)


 胸にクる。心に受けた正拳突き。

 片腕で頭を抱えながら、想いを突き離しにかかった。


「なんにもいいことねぇぞ。俺なんかと関わったら、仲間外れにされちまう」


 藤岡青葉あいつはヤバい。

 陰でそう言われてるのは、知ってる。

 あの「事件」がずっと尾を引いてた。


「それを言ったら……私だって、おんなじだよ」


 字見あざみ可奈子かなこ

 二つ結びのおさげ髪に、細い縁の丸い眼鏡。

 透き通った青い目が、日本人離れしている。

 誰が呼んだか、「地味子じみこ」と呼ばれていた。


 アザミの花にはトゲがある。

 アザミの花言葉は「報復」「厳格」。

 イングランドに抵抗したスコットランドの花でもある。


 同じ字見あざみでも、こいつは自分が傷だらけ。

 心に刻まれた傷は、はた目には見えない。


 思えば、その傷が見えてしまった日から。

 俺は、彼女に捕らわれたのかもしれない。

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