エピーソード17

時間は遡り、エルトたちが食事をした後、レオスどうしてもカジノに入りたいと、もはや任務と何の関係もなく、完全に観光気分となった。


エルトとノヴァーリスはレオスを止めたかったが、レオスは、こんな機会2度あるかどうかわからないから、1人でも行くから、止めても無駄と言い、エルトとノヴァーリスは別行動は避けたいと思って、仕方なく、レオスの後に付いてカジノに行く羽目になった。


カジノに入ったレオスは、目的もなく、ギャンブルもしないで、ただ歩き回るだけだった。


「おい、レオス、遊ぶなら早く遊んで、遊んだら帰るよ」とエルトはレオスを促した。


「遊びたいけど、そんなに金持ってないし、ていうか、俺は別にギャンブルしたくて入ったわけじゃないしよ」と、意味不明な言葉をするレオス。


このカジノは、高級ホテルと一体化で、下層部分はカジノ、そのカジノの上には高いホテルが建っている。もちろん、カジノの内装もすごく豪華で、その上に、酒や食べ物のサービスもある。このような高級な場所、レオス本人にとっては、任務じゃなきゃ一生無縁だったから、彼はギャンブルするよりも、適当に歩き回ったほうが有意義と思いっているかもしれない。


「は?お前ふざけるな、遊ぶつもりがないなら帰るよ」


「いや、だってさ、こういう場所、クラークデールにはないだろ?見るだけでも結構楽しいしよ、ほらエルト、あれ見てよ、なんだあれ?なんか面白そうじゃね?」と、レオスは指を指し、その方向には、箱型の機械がいっぱい並んでる。


「いや、僕が知るはずないだろ、それで、あそこに行く?」


「そりゃいくだろ!ほら、行こうぜ、エルト、リスちゃん」と、言いながらレオスは箱型の機械まで走っていた。


箱型機械の前についた3人、


「これ、画面がぐるぐる回って、なんだか面白そうですね、エルトくん」と、まさかのノヴァーリスまでが興味を示し始めた。


だが、ノヴァーリスはある意味レオスと同じで、こんな場所、任務じゃなかったら無縁だ。ノヴァーリスは、500年に一度目を覚まし、世界を影から見守って、何事もなかったら、また眠りについてしまう、そして、次の目覚めはまた500年後になる。スマコンを含めて、前回目覚め時は、エーテル産業はまだそんなに発達してなかったから、ノヴァーリスの好奇心がくすぐられた。


突然、3人の背後に、


「これはスロットマシンて言うんだよ御子さま」聞き覚えがある声が喋った。


声だけじゃなく、ノヴァーリスを「御子さま」と呼ぶ、この呼び方、エルトたちが知ってる限り、1人だけしか居ない、キボルスだ。


予想外の出会い、3人はすぐ目の前にあるスロットマシンから目を離れて、背後を見た。間違いなく、そこにキボルスが立っている、片手はあの夜エルトにやられたせいか、今はメカメカしい義手を装着している。3人はキボルスから距離を取った後、


「キボルス!てめぇどうしてここに?」とレオスはヒートアップし始めた。前回は手も足も出ない、デコピンで飛ばされたから、相当根に持ってるだろう。


「よせレオス、ここで騒ぎを起こすのは得策じゃない」と諭すエルト。


エルトは分かってる、もし向こうがその気があれば、声を掛けずにやれば、自分たちは既にやられてた、今みたいにわざわざ自分たちと会話する必要が全く無い。まずは向こうの目的を知らないと思ったエルトは、キボルスに


「どういうつもりだ?キボルス?」と問うた。


「おい、エルトの兄ちゃんよ、ここはカジノだぜ、どうもこうも、遊びに来たに決まってるだろよ」と、笑いながら答えた。


確かにそうだ、ここはカジノ、普通ならば、遊ぶために来るのは当たり前だ。ただ、相手はキボルス、実力の底はまだ見えてない、その上に帝国と取引をしている≪天狼の心臓≫の隊長だ。そう安く信用して良いのか悩むエルト。だが、そんな考えもキボルスに見透かされたか?キボルスは


「安心しな、俺は今仕事中じゃねえ。兄ちゃんも分かってるだろ?俺が兄ちゃんたちを殺す気があったらさっきは既に殺ったはずだ」


「そ、それじゃあ…キボルスさん、私たちは、ここで失礼しますね」と、ノヴァーリスはキボルスに別れを告げて、エルトとレオスを連れ出そうとしたが、キボルスは


「おっと待ちな、御子さま、つれないね?俺そんなに怖いか?」と3人前に立ちはだかって、さらに


「兄ちゃん達、俺とゲームしようぜ、ちなみに拒否権はねえ」と言った。


キボルスの真意が分からない3人、ゲーム?この男が言ってるゲーム、本当にただの遊びで済むのだろうか?ただ、向こうは3人の意見を待たず、最初から拒否権がないと言っている。この男は分かってる、エルトたちは確かに拒否権がないのだ。まずここは帝国、言ってしまえば敵地だ、下手に相手の提案を拒絶し、騒ぎが起きたら、それこそ向こうの思うツボにハマってしまう。ここは大人しく従うするしかないと判断した。


だが、従うとは言え、ゲームはゲームだ、例えそのゲームが殺し合いだとしても、勝ったほうが必ずご褒美がある、そうでないとゲームは成立しない。


「…分かった、ただ、僕たちになんの得がある?」と、エルトはまず最初にメリットを聞く。


「ほう?どんなゲームよりも、メリットを聞くのか?」とキボルスはほんの僅かだが、表情が曇ってる。


実は、エルトがメリットを聞くのは、もう1つの狙いがある、効果あるかどうかは分からないが。あの夜、エノテリアがエルトに預かった権能を、なしで無理矢理引き出し、結果、【疑似神格】を獲得したエルトは、キボルスを破った。形式はどうであれ、勝ちは勝ちだ。だから、ゲームの内容を聞くよりも、勝った後のメリットを聞いたほうが、キボルスにとって、心理面のプレッシャーになる。要は、キボルスに、自分たちは今回もお前に勝つというイメージを与えるためのハッタリだ。


「そうだ、メリットがないゲームはゲームじゃないからな」


「アッハッハッハ、やっぱおめぇさん、おもしれえわ。分かった、もし俺が負けたら、君たちが探してるもの、その情報をやろう、これでどうだ?」


「分かった、それで、どんなゲームだ?」と、かなり自信満々に答えたが、実際は自信なんて全くなく、ただハッタリ。あの夜キボルス勝ったのは正直自分じゃなく、姉だ。だが、最初から拒否権がないと、退路が断たされたから、例え自信なくても、相手に悟られてはならないとエルトはそう思った。


「兄ちゃんよ、傭兵と言ったらなんだ?戦闘、戦うだろ?このカジノには、劇場がある、今日あそこに公演がない。今夜、あそこの舞台で、兄ちゃんと俺の部隊、4番隊副隊長と戦わせてもらう。ルールは簡単、戦闘不能か降参かでゲームは終了だ。武器は自由、だが、会場を破壊する程威力を持った武器は禁止な。どうだ?至って単純明快だろ?ちなみに、今回は特別サービスとして、たとえ兄ちゃんたちが負けても、デメリットはない」


「……分かった。それじゃあ、僕たちは会場で待つ」と言いながら、エルトはノヴァーリス、レオスと一緒に、カジノの劇場の方へ移動した。

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