エピーソード14

ノヴァーリスのとんでもない爆弾発言はさらに続く


「エルトくんは多分覚えてないかもだけど、エノテリアさんの剣は、4本あるよ…ううん、正確に言えば、1本が本物で、3本は贋作、レプリカですね」


「そんな事…覚えてないていうか、知らないていうか。ちょっとまって?じゃあ、あの夜、キボルスが持ってた、今警察署の前に横たわってるのは?」


「あれも3本レプリカのうちの1本です、ちまみに、私が持ってる杖は本物ですよ」


「ていうかリスちゃん、なんで早く言わないんだよ、こんな重要情報をさ」


「ごめん、言いたかったんだけど、なんか話題が次々と変わるから、言うタイミングがなくなじゃって…」


ただ、エルトにとってはそんな事はどうでもいい、レプリカ?何のために?ずっと世界に1本しか存在しないものたと思っていた。あの剣、素人の目でも分かる、あれは普通の材料ではないと、そんなレアな材料で、4本も造ったのかと、疑問を思ったエルトはノヴァーリスに聞く。ノヴァーリスの答えは、本物はレプリカとは全くもって別物。エノテリアは昔、西の島国に滞在した時期があって、当時、あそこに、マサムネていう鍛冶職人を頼んで造ったのがレプリカ。


そのレプリカこそが、鍵である。そう、リミッターの権能開放、あるいは、権能をコントロールするための鍵。つまり、レプリカはリミッター用で、3本は別の権能に対応する、そして本物は、エノテリア用という事。


「それなら、一石二鳥です」


つまり、ビオラの狙いは、エルトの権能開放はもとからエノテラの剣が必要、それと同時にコルチカムの病気を治す方法もそこにある、この支部にしては、いい出だしだと。


だが、結局、エノテラの剣をどうやって運ぶのか、振り出しに戻ってしまった一行。


「それじゃあ…」とノヴァーリスがなんか言いたいようだが、さっきの爆弾発言のせいで、みんながノヴァーリスは今度、何を言い出すのか身を構えてる。


「みんなどうかしたんですか?」と、身構える4人を見て、ノヴァーリスは首を傾げた。


「い、いや、なんでもない、それより、なんかいい案あるノヴァーリスさん」とエルトは聞く。


「うん、そうよ」


ノヴァーリスは、警察署の前にあるレプリカを除けば、まだ残り2本のレプリカがある。まずは、その2本のレプリカを探す、と同時に、ノヴァーリスが持ってる杖の欠片も一緒に探して欲しい、と提案した。


彼女が持ってる杖は、ある意味エノテラの剣と同じで、元の持ち主は、もちろんメルナリアだ。この杖、今は本来の姿ではない、今のままでは、ノヴァーリスは戦力にならない、だから、剣探しのついでに杖の欠片も探して欲しいとみんなに頼んだのだ。


「ノヴァーリスさん、僕たちはもう仲間だ、ついでにとかはいらないから、並行に探しに行こう」


「そうそう、リスちゃん水臭いな、それにな、俺は知ってるぜ、リスちゃんはすげえ!てよ。レプリカだか欠片だか正直、俺にはいまいち理解できてねえけど、両方探しに行こうぜ」


エルトとレオスの言葉を聞いたノヴァーリスはすごく嬉しい表情で


「2人共、うん、ありがと!」


多分あまり興味ない話だろう、今まであまり喋らなかったコルチカムは


「レオス様が行くなら私も行く!」と、眼中にレオスしかいない様子。だがビオラは


「今回はコルさんはボクと一緒に留守番をするのです」


それについては、コルチカム以外のみんなは同意した。彼女がいれば心強いが、彼女の体を考えると、無理させては行けない。若干1名を除けば、そう、レオスだ。彼だけは、ようやく開放されると思って心底から安堵な顔をしてる。


「でも、ビオラ、どこから探せばいい?」


確かに、あてのないまま全大陸を探し回るのは流石に得策ではない。そこにコルチカムは、みんなに1つの提案をした。


「みんな様、帝国に行ってみない?≪天狼の心臓≫、というより、お父さんは多分、帝国に雇われてると思うの」


あの夜の事、やはり帝国が仕向けたかと思う男組。そして、コルチカムは≪天狼の心臓≫が行動前に帝国の町≪レイニアー≫に滞在したと話し、みんながあそこに潜入し、情報を探ると勧めた。負傷したキボルスはまだ≪レイニアー≫にいるかどうかは分からないが、4番隊の副隊長はまだあそこにいるはずと推測した。


コルチカムの提案に、ノヴァーリスは賛成した。ノヴァーリスはキボルスに捕まれて、一緒に≪レイニアー≫に滞在したからだ。短時間とは言え、全く帝国に行ったことない男2人よりは多少道が分かる上、副隊長の顔も知ってるから、他の場所で無闇に探すよりも確実だ。


「そうと決まれば、とりあえず今日は一旦解散だな、また明日会うお。色々準備があるし、正直俺は疲れたし」


「じゃあ、エルトくんとレオスくんは今日帰って、荷物を纏めて来てください」


ノヴァーリスは2人に声を掛けると


「確かに、何日あっちにいるか分からないし、うん、分かったよ」と、会話の流れ的に、何日かは帝国に滞在しなければならないから着替えとか準備した方がいいと考えたエルトだが、ノヴァーリスは不思議な顔でエルトに向かって


「何を言ってるんですかエルトくん。2人とも明日からこっちに引っ越しますよ?」


また意味の分からない発言をした。


「ええと?急に何を言い出すんだノヴァーリスさんは?」


ノヴァーリスは、今後もこの5人で活動する事が多いから、一緒に住んだ方が効率がいいという理由で、一緒に住む話になった。


「まぁ、いいんじゃないエルト?集合の時、いちいちこっちに向かうのも確か面倒だしさ」


「僕は別に反対しないけど、どうせ今家に帰っても1人だし、でも女子たちは大丈夫か?特にビオラは?」とエルトは女子組に聞く、


「エロトさん寝る時は自分を縛ってくれればボクは大丈夫です」


「難易度高っ!てかもう全然大丈夫の域を超えてるよ」とエルトはツッコミをした。


「冗談です、ボクは別に大丈夫です」ビオラは相変わらず冗談か本気か分からない無表情で答えた。


「私はむしろ大歓迎よ、レオス様と一緒に住むなんて…もう、明日と言わず早速今日からここに住みましょレオス様!」


「コルちゃん、ちょっと鼻血拭いて、レオスくん引いてるよ」とノヴァーリスはハンカチを取り出して、コルチカムの鼻血拭いた。


「それじゃあ、とにかく今日は解散としよ」


------------------------------翌日------------------------------


「おはよみんな」


エルトは簡素な荷物を持って支部に入った。人が揃った後、5人はとりあえず部屋の問題で話し合いをした。寮は、支部の2、3階にあり、6部屋ずつ、全部合わせて12部屋となってる。最終的に、男子は3階、女子は2階と分けて、エルトは階段上がったすぐ隣にある301、レオスは303で、エルトの向かい部屋となってる。女子は、ノヴァーリスはエルトの真下の201、コルチカムはレオスの真下の203、ビオラは、一番奥の206を選んだ、理由は角部屋の方が落ち着くからだそうだ。


部屋分けが終わった後は、5人は再び任務について話した。


今この支部の再開は公式ではあるが、正式ではないと、ビオラは話した。つまり、支部の再開を連邦内部として認めている。ただし、これはあくまで連邦内部の話で、対外にはこの支部は撤退したまま。だから、ここにいる全員に身分証明として、≪ガーディアン≫の月と盾シンボルが付いてるIDカードを発行出来ない、ひいて、他の支部のように、一般人の依頼は受付出来ない。もちろん、≪ガーディアン≫のランク制度も適用されない。要するに、ここにいるメンバー4人は、≪ガーディアン≫本部の名簿以外には、存在しない扱いとなっている。


ただ、逆に、悪事をする以外、≪ガーディアン≫のルールに縛られることもない。一応、本部からの要請として、ここ、クラークデール支部の最優先事項は「帝国動向を探り、あらゆる連邦の利益に侵害する事があれば、できる限り排除する。」となるが、それ以外は、自由に動いても構わないとのこと。


「なんか僕たちスパイみたいだな」とエルトは適当に感想を言ったが、「スパイ」の単語に反応して


「いいですねエルトくん、それじゃ、私たちは、今日から≪ガーディアン≫特務小隊と名乗りましょ」と何故かワクワクしてるノヴァーリス。


「≪ガーディアン≫名乗っちゃだめだろ僕たち…」


「別にいいじゃねえかエルト、なんかかっこいいじゃん?特務小隊の響きはさ」と、ノリノリのレオス。


「それでは、≪ガーディアン≫クラークデール支部特務小隊、エルトさん、レオスさん、ノヴァーリスさん、最初の任務を正式に発令するです」と、ビオラまで乗っかってる。気のせいか、表情こそないが、目はキラキラを感じた、やはり彼女も「スパイ」というワードに惹かれたか。


「帝国に潜入し、≪天狼の心臓≫副隊長から情報を探り出せ、です!」


3人共


「はい!」「了解!」「っしゃきた!」

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