エピーソード15

「そういえばさ、リスちゃんは500年もの間、寝てたよな?なんか適応能力高くない?500年前の世界はどんな感じだった?」


列車で片道6時間、レイニアーに向かってる途中、暇そうなレオスは適当な話題をノヴァーリスに振った。


大陸屈指の大都市であるクラークデールは、昔からずっと両国の貿易中心で、交通は発達している。列車の駅から飛空艇の空港まで備えて、他都市への直行列車が多い。今の連邦と帝国は、緊張関係は続いてるが、断交はしてない故、両国間の列車往来にそこまで影響は出なかった。


「私は今回で3回目の目覚めですよ。もう流石に何があっても驚かないよ」


「え?3回目?今は星暦2000年だから、ノヴァーリスさんは、星暦元年で眠りに付いたの?」と、のエルトは少し驚いた。


「そうですよ、ここは少し、お二人に歴史の授業をしましょか?」と、男子2人の応否を待たず、勝手に語り始めたノヴァーリス。


ノヴァーリス曰く、メルナリアが最初に顕現した地、今で言うと≪オンタリオ法国≫の場所には、小さな集落があった。その時の人類は、まだ言葉がなく、文明もない、今では全く想像が出来ない原始生活だった。


メルナリアはそんなつまらない世界を面白くなるために、人類を進化させ、言葉や知識を与えた。その結果、最初に進化したオンタリオ集落は、メルナリアを神様と認識した。彼女を神様と認識した集落の人々は、彼女の最初の協力者となり、信徒となった。集落は日々拡張し、信徒も徐々に増え、後に≪星天教≫となった。


時間が立ち、メルナリアが現世から去る年、自分が眠り付くでもある年に、メルナリアは、去る際に「これからは人の子の時代よ」と言葉を残した。その言葉を記念するために、「新時代」の証として、「星暦」の元年元日とした。


「ちなみに、私もオンタリオ出身ですよ」とノヴァーリスは補足した。


「あれ?ちょっとまって?ノヴァーリスさんは普通の人間なの?」と、傍らから聞くと、相当失礼な質問をしたエルト。ただ、ノヴァーリスはエルトの質問の意味をちゃんと理解してる、


「エルトくんの問題を答える前に、ずっと気になった、エルトくんの私への呼び方、さん付けはしなくていいですよ。あでも、レオスくんみたいにリスちゃんはやめてね?ノヴァーリスでいいですよ」


「ええと、分かった、ノヴァーリス」


「それじゃあ、エルトくんの質問。そうですね、普通かどうかは置いといて、私はメルナリアが造ったわけじゃないよ。メルナリアが造ったのは、エルトくんだけですよ」


「そう、なのか…」と、ちょっとエルトは寂しそうな顔をした。


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6時間後、列車は帝国の町≪レイニアー≫に到着。通関手続きを済み、駅から降りて、町を見る男組は、全く潜入任務とは思えないはしゃぎ出す。無理もない、潜入とはいえ、帝国に入るのは初めてだから。


駅周辺では、商業都市のクラークデールと違い、高密度ビルはそこまで多くはなく、逆に木造建築を中心に、1から3階の建物が多い。人口は多いが、街並みは清潔である。駅前には大きな公園があり、今日の天気も晴れてるため、どこかに草や直物の匂いがする。全体的にはのどかな雰囲気で、とてもあの軍事大国である帝国とは思えない感じだった。


「俺、ここに来る前は、ずっと帝国が戦車が街のど真ん中に走ったり、戦艦が空に飛んでたりした、鉄と血の匂いがする場所と思ってた、いあ、先入観ってこわいこわい」とレオスはかなり感嘆した。


「確かに、他の場所は分からないけど、ここだけ見ると、すごく平和そうな町だよね」とエルトもレオスと同じ感想だった。


「それで、これからどうする?ノヴァーリス」


「んん、そうですね、まずは泊まる場所を探しましょ?流石にこのまま≪天狼の心臓≫が泊まった宿屋に直行するのは無謀過ぎると思いますよ」とノヴァーリスはまず別の宿屋を探して泊まることを提案した。


「それじゃ、リスちゃん案内よろしく!」と、観光気分のレオス。


3人は駅前のエリアを通過して、さらに隣の住宅街を通過した後、別のエリアに来た。このエリアは、帝国の西端にある、今までのエリアとはまた雰囲気が違う、海沿いの観光地だ。ここには歓楽街があり、歓楽街の中はカジノや、劇場など色んな娯楽施設が並んでる。歓楽街の奥には、武器屋、バーの他に、大人の店や他に怪しい店もいっぱい並んでる、この辺りは正しくこの観光地の裏である。


3人はこの歓楽街の奥にある、とある酒場兼宿屋に入った。何故ここを選ぶかというと、これもノヴァーリスの提案である。≪天狼の心臓≫と同行してる時、別エリアにある高級ホテルに泊まっていたが、彼らは何回かこの歓楽街に来たことがあったと。彼女も一回ここに連れてこられた。多分、ここには何があるではないかと推測した。


ノヴァーリスの判断は間違いはない。を探るには、が届かない、社会の裏の方が、より確実に、情報を手に入れるからだ。


ただ、今日は時間も遅く、明日に備えて、3人は腹ごしらえのために、歓楽街の前半部分の戻った。そこで、レオスは、どうしても行きたい場所があると。どこかというと、クラークデールにはない場所、そう、カジノに入りたいだと。全く緊張感がないとエルトやノヴァーリスは呆れたが、1人でも行くと言って、2人も仕方なくレオスに付いてきた。


だが、カジノに入った3人は、まさか思わぬ人物との再会を果たした。

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