エピーソード13
「エロトさんの武器はトンファーと拳銃です」と、ビオラはそれらをエルトに渡した。
レオスと同じく、エルトも警察時代と同じ得物である、警察の標準装備とも言える。実際、これらの開発は連邦政府の要請でもある。
まずは、拳銃の方、ビオラがエルトに渡した拳銃は、銃口は縦に2つ並んでる、下のは実弾、上にはエーテル属性弾を発射出来る。実弾と属性弾が別々に装填できる、実弾は従来の拳銃と同じマガジンを使う。属性弾は、本来ならば、使い手であるその人のエーテルを元素変換してから銃にチャージして、銃がその変換済みのエーテルを高速で射出するという形だが、いかんせん、エルトはエーテルを貯めること自体が出来ないので、ビオラは仕方なくその銃をさらに改良し、銃の上部分をレオスの剣と同じ、カートリッジ追加、そこに自分が使いたい属性の弾を装填する方式になった。
レオスの剣と違って、出力は銃本体で行える、敵に応じて出力調節が出来る。ただし、出力が大きくなればなる程、消費量も増え、基本出力であるば、弾1個で20発も撃てるが、威力最大にすれば、1発撃ったことで、エーテルの残量は空になる。
この改造メリットとしては、使用者のエーテル残量に依存しない、弾がある限りいつでも使える。ただ、デメリットも大きく、そもそも属性弾は市販される商品ではなく、どこにも流通してない。理由は、これもビオラが新開発したものだから。
属性弾の容器は、形だけ見ると、ただの薄い、縦細く、ちょっと細かい回路が刻んでる、小さな金属片にしか見えない。この金属片に、エーテルを元素変換して込めれば、属性弾になる。だから、エルトは結局誰かに頼んで弾を制作しないと行けないが、幸い、ここにビオラやノヴァーリスはもちろん、エーテル総量がもはや人間の域を超えたコルチカムもいる。
「この銃は、一度に4つの属性弾が装填出来るです、全部同じ属性でも、属性バラバラでもいいです」
と銃の説明が終わった後、ビオラはトンファーについて説明した。どうやら調整終わってないのはこのトンファーの方だった。元々、ビオラはこのトンファーはレオスの盾と同じ、大きさの変更が出来る…予定だった。
「あれ?先ビオラは銃火器の調整が難しいって言ったから、てっきりこの銃の事だと思った」とエルトはそうビオラに聞いた。
「こちらも銃です」と無表情で答えた。
「え?これ、銃なの?」流石に全員がビオラの言葉に驚いた。殴り用の武器がまさか銃である。
「まずはボクの説明を聞くのです」
「すいませんでした、ビオラ先生」と、エルトは謝った。彼は知ってる、この子にこれ以上質問したらまたまたなんか言われるからだ、エロト、ミジンコ、これ以上の呼び方は増やしたくないエルトは、とりあえず謝った。
表情がないのに、明らかに「わかればよろしい」と言ってるような感じをした。エルトは静かにビオラの説明を聞いた。
このトンファーは、拳銃の補助用として設計されたもの。元々トンファーは接近の攻撃、防御用武器だが、ビオラが開発したこれは、まず、見た目的にはトンファーそのものに間違いないが、棒の部分は、もはや棒とはいえない、四角い形に、角材みたいな形となってる。さらに至る所に細かい部品が組み込まれてる。ただし、ビオラ曰く、レオスの盾と同じ素材で作られてるので、接近武器としての耐久性には心配がないと。
銃としての性能はというと、トンファーの前の部分、つまり取手に近い方には、銃口があり、高圧縮されたエーテルを発射することで、大威力の衝撃波を形成できる、ただ、射程が非常に短く且つ対象に密着し、強い力で押し付けないと動作しない仕様となっている。何故このような仕様にしたかは、ビオラによれば、衝撃波の反動が大きく、後述の機能に合わせて使うのが前提だからと。
次に、トンファーの後ろ部分、あそこにも銃口のような形をしてるが、弾を射出するためのものではなく、一種の小型ジェットエンジンで、主に打撃の威力と速度への補助としてビオラが作ったと、こっちは取手のトリガーで任意操作できる。
以上は、トンファー単体の仕様だ。
が、拳銃とトンファー両方、決めの一手が欠けていると考えたビオラは、レオスの剣盾と同じく合体出来るように設計した。ビオラの構想では、拳銃をトンファーにドッキングして、大型化となったトンファーが拳銃の砲身にして、超高出力属性弾で敵を殲滅する事だった。
ただ、レオスの盾と違い、このトンファーは大きさを変える合金以外にも、他の金属で出来た細かい部品がいっぱい詰まってるせいで、盾みたいに単純にサイズを大きくする事が出来なかった。
「だから、こんなものを用意したんです」と、ビオラはテーブルの後ろに行き、そこには、大きな金属製箱が縦に置いてる、ビオラはその箱を手で、「パーン」と叩いた。
「その箱は?」とエルトが聞くと同時に、ビオラが手で叩いた箱の蓋が倒れ、みんなの目に映ったのは、レオスが変形した大剣よりもデカい、トンファーの見た目にした、「砲」である。
「これ…大砲?これを持ち歩くと?」と、流石に普段使いは無理があるサイズだと思うか、エルトは思わず「無理無理」と言った。
「はぁ、もうエロトさんはエーテルの総量だけではなく、脳みそもミジンコレベルです」と、普段は無表情なのに、エルトにだけ厳しいビオラは今、あからさまに失望の表情をして、さらに
「エロトさんは、最後まで人の話を聞かない癖は、どうにかしてほしいです」
エルトは思った、メルナリアはハリセンやフライパンなど、肉体へのダメージがメインだが、ビオラの言葉は精神ダメージ…これ以上ビオラを怒らせると、次は何言われるか分からないが、流石に連続に来ると凹むと、すごく丁寧に
「誠に申し訳ありませんでしたビオラ先生!」と謝った。
呆れた顔をしたビオラは、このデッカイトンファーは、別にエルトが普段使う必要がなく、もしもの場合、ビオラはエルトの場所に送ると説明した。それを聞いたエルトは「どうやって?」と聞くつもりだったが、流石に我慢した。
エルトとレオスの武器説明が終わった後、レオスは
「ビオラちゃん、武器って、俺たち2人だけか?ほら、リスちゃんとかこいつも、武器持ったほうがいいんじゃないか?」と、頑にコルチカムの名前を呼びたくない。
「ノヴァーリスさんにはないです、むしろノヴァーリスさんの杖を貸してもらいたいくらいです。すごく興味深いです」
何故かビオラは逆にノヴァーリスの杖に興味を持ってる、だが、レオスはビオラの言葉に、違和感を感じて
「ん?ビオラちゃん?リスちゃんのあれ、杖に見えるのか?」どう見ても短剣にしか見えないものに、ノヴァーリスは杖と言い張ったが、まさかのビオラまで杖と認識してる。
ノヴァーリスというと、ようやく味方を見つけたと思ったか、すごく喜んでる表情で
「ほら、私最初から杖と言ったでしょ、エルトくんとレオスくんが短剣短剣と言って、まるで私が変わってる人みたいな反応までして」
実際変わってるが、ノヴァーリスは自覚がない。ただ、科学者であるビオラは
「これは、紛れなく杖です」とまで言い切った。
ノヴァーリスが持ってる物について、結局は平行線で終わった後、ビオラはコルチカムの武器について
「コルさんには、渡したいものがあるんです、でも今は未完成です。そこで、みんなさんに、≪ガーディアン≫最初の任務を言い渡す、です!」
と、いきなり仕事が入ってきた一行、突然過ぎて、どう反応するか迷ってる4人、みんなの反応がないと見たか、ビオラは更に
「エノテラさんの武器を回収せよ、です」
エノテラの武器は今、警察署の前に横たわってる、普通ならば、すぐでも任務達成出来そうだ。問題は、誰が、どうやって、そのとてつもなく重い剣をここまで運ぶのかだ。
あくまで推測だが、ビオラ曰く、コルチカムの病気、エーテル漏れを治す方法がエノテラの剣にある、少なくとも、あそこにヒントがあると言うことだ。
どう運ぶかについては、エルトがエノテリアの権能をうまくコントロールできれば行けるはず。そう、エノテリアの権能の1つ、重力。だが、肝心のエルトは、未だにコントロールどころか、どうやったら権能の力を出せるかすら分かってない。
みんなが議論してる中、ノヴァーリスは突然、1つの爆弾を投下
「あ、そうそう、ずっと言いそびれたんだけど、エノテリアさんの剣は、1本だけじゃないですよ」
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