エピーソード12

「そういえば、なんでビオラは僕たちの名前を知ってるんだ?」


地下室への移動中、エルトはトイレの件を思い出して、その時はまだ自己紹介もしてなかったはずだから、好奇心でビオラに聞いた。


「エロトさんは本当にバカですね、ボクはこの支部の責任者です、資料くらいはちゃんと読むのです」と、ビオラは完全に呆れた顔でエルトの質問を答えた。


「ビオラはさ、僕だけ当たりが強いのはなんでだ?トイレの件はもう謝ったんだろ?それとも僕はまだ他になんかやらかした?」


「そんな事はないです、ボクはただエロトさんを罵倒したいだけです」


「それが当たりが強いていうんだよビオラ」


雑談しながら、地下室へ到着する一行。


「それにしても、ここエレベーターもあるのか」と感嘆するレオス。


≪ガーディアン≫支部のは、上3階と地下1階の構造になってる。上の3階は普通に階段を使うだが、地下室は地面からかなりの距離があるため、エレベーターで繋がってる。そして、この地下室は上の3階と違って、色んな設備が置いてる、ただ、どういう機械か、ビオラ以外は全く分からない。


地下室のある1室の中、テーブルの上に、小さな端末が何台が置いてある。ビオラはそこに手を伸ばし、その中の1つを手にして、


「これは、新型のスマコンです」


ビオラこの新型スマコンを4人に1台ずつを配りながら、


「このスマコンは完全にプロトタイプです、世界に5台しか存在しないのです。まず、これらをみんなさんにテストをして貰うです」


だが、新型スマコンを手に取ったエルトはビオラに


「僕、これ使えないんだよ、エーテルないから…」ちょっと悲しそうな表情をするエルトに、ビオラは


「だからエロトさんはバカです、まずはボクの話を聞くのです」と、説明する前にも罵倒を忘れないビオラ。


ビオラ曰く、この5台のスマコンは、みんなのためにチューニングをしたもので、さらに、ビオラが開発した新機能として、通信魔法は本人のエーテルに依存せず、このスマコンだけで行える。ただし、この機能は、ここにある5台限定の機能なので、他のスマコンと繋げるには、はやり本人が通信魔法が出来ないと無理だと。


「昨日徹夜したのは機能の最終調整のためです、きのうだけに」と、ちょっとやり切った顔をしたビオラ。


さらに、ビオラは今後も新機能を追加する予定だが、何を追加するかは未定だそうだ。


「おお!これはすげえ、エルトはともかく、俺もそんなに魔法得意じゃないから、通信が使えるだけでもありがてえ」


謎の感動をしてるレオスはさらに、他になんかあるかとビオラに聞いた、まるで新しいおもちゃを手に取った子供かのように、目がキラキラしてる。


「そうですね、じゃあ、完全にボクの趣味で開発したものですけど、みんなさんのエーテルの総量を計るのはどうです?」


「お、やりてぇ!」と即反応するレオス。


それを聞いたビオラは、片眼鏡のような機械を取り出して、そのまま原理を説明する。そう、これはあくまでメガネであり、決して某異世界の戦闘力53万がある人物が装着してるヘッドマウントディスプレイではない。原理としてはすごく簡単で、例えば、照明魔法という、一番簡単な魔法を、エーテル使用量を10とする、そこに、照明魔法を何回使えるかを、その人を片眼鏡で見て、そしてスマコンの残量に合わせてシミュレートする、シンプルな計算方法。ビオラは人間なら80から100のが普通で、魔法の適正が高い人間なら200から500もある。自分は430で、かなり高い部類だと。


そして、片眼鏡を掛けたビオラは、エルトを見て、しばらく沈黙した後、


「エロトさん…ごめんなさいです、無理です。この機械は10刻みなのです…」


「え?謝らないでなんか言ってビオラ、凹むから」いきなり謝られて逆に気になるエルトは、ビオラに聞き返すと


「エロトさんの総量は計測不能です…正確な数字は分からないです、強いて言うなら、10以下です。ミジンコレベルです」相変わらずエルトに対して辛辣。


「やめて、ビオラが言うと、妙にリアルで、余計に悲しいからやめて」ただ、これは、エノテラの権能の影響によるものだとメルナリアから聞いたから、こうなるのは最初から知ってる、が、それでもちょっと涙目になってる。


流石にエルト可愛そうと思ったか、ビオラはすぐに


「大丈夫です、レオスさんは60しかないです、ナメクジレベルです、エロトさんと大差ないです」と、フォローするビオラだが、ただ、ビオラの言葉を聞いたレオスは


「少ないのは予想したけど、ナメクジかよ…」と、エルトをフォローするつもりだったビオラは、見事にレオスまで撃沈した。


次に、ビオラはコルチカムを見て


「コルさんは1660です、すごいです、コルさんと喧嘩してはだめです」と、さらっととんでもない数字を言い出すビオラ。


「レオス様、大丈夫よ、例え何があっても、レオス様は私が守るから」と、コルチカムはレオスに追い打ちをする。


「…正直、今の気持ちすげえ複雑だわ、心強い言葉だけどよ、自分を殺そうとした人に今は守ると言われて…しかもよりによって見た目がか弱い女子に…泣くぞ俺」男子組2人の完全敗北の瞬間。


そして、最後にノヴァーリスを見て


「ノヴァーリスさんはちょうど300です、でも、着痩せタイプの隠れ巨乳です」何故か余計な情報まで言い出す始末。


どうやらこの片眼鏡は透視の機能まで付いてるようだ。それを聞くとノヴァーリスは自分の体を隠そうとしたポーズを取った。実際、彼女はずっとマントを羽織っており、未だにどんな服を来てるかすら分からない。真相はノヴァーリスとビオラしか知らない。


「い、いきなり何を言い出すのビオラちゃん」とノヴァーリスは頬が少し赤に染まってる。


だが、エルトは


「ノヴァーリスのエーテル総量はそんなに低いの?」とメルナリアのリミッターであり、現人神でもあるノヴァーリスの総量に、エルトは疑問。


これは、エルトとある意味似たような原因で、リミッターである自分は、メルナリアの権能を開放していない上、自分自身の力まで封印されてる。だから、今の状態は、一般人より少しだけエーテル総量が高いだけで、戦闘用魔法はほぼ使えない、戦闘力はビオラとほぼ変わらないという。


全員測った後、ビオラは珍しく、ちょっとだけ高いトーンで、これはあくまで彼女の趣味で造ったおもちゃで、実際にはエーテルの回復速度などいろいろ変数があるので、戦闘力に直結しないようにと強調した。


この片眼鏡の他、5人はしばらくビオラが発明した色んなおもちゃを遊んだあと、ビオラは別の部屋にみんなを案内し、いよいよ装備の紹介を開始するビオラ。


だが、ビオラはまさかの警察時代に使った武器と同じ、レオスは盾、警棒の代わりに片手剣、エルトはトンファーと拳銃を渡した。


これを見てレオスはかなり不満な声で


「なんだよ、わくわく損した。警察の時とほぼ変わらないじゃねか」


ビオラはレオスの不満げな顔を見て、また変わらないトーンで


「レオスさんもエロトさんと同じ、バカです」


ビオラはレオスにこの武器の仕様を解説し始めた。レオスが手にした盾はひし形、片手持ちの盾だが、この盾はかなり特殊な合金製である。どんな合金かは説明してもレオスは分からないし、そもそも企業秘密だからあまり触れなかった。


で、この盾、普通の盾と違って、曲面がなく、ひし方の中心部分は厚く、外になる連れ、段々薄くなる。縁の部分には、かなり鋭くなってる。正面からは見えないが、盾を横で見てみると、細い溝がある。さらに、この盾には、純粋なエーテルを込めると、強度を保つまま、サイズを変更できる。盾の内側にはエーテルバッテリーを嵌める場所があり、更に取手の部分にはスイッチが付いてる。


剣については、盾と同じ合金製である。ただ、こっちにはバッテリーの代わりに、剣の柄の部分にカートリッジとトリガーがある、そこに元素変換済みの属性弾を装填できる。装填された弾によって剣の属性付与が出来る。


一通りレオスの武器を紹介したところ、ビオラは、


「当然、これだけではないです。これだけなら、テストの必要がないです」


ビオラはレオスに、これからの私の言葉通りに剣と盾を使うんですと指示した。それを聞いたレオスはまずカートリッジに弾を装填、そして剣を盾の溝の部分に刺す、トリガーを引いたら、ひし形の盾が突然サイズが大きくなり、斜め方向三等分になった後、上にスライドし、そのまま見事な大剣になった。大剣の剣身は、さっき装填された火属性の弾により、赤く輝いた。これは、さっきの火属性弾と、高圧縮されたエーテルバッテリーがお互い反応し合うによる現象で、通常大剣の数倍破壊力を持ってる。


変形、合体はもとから男のロマンであり、それに加え、エノテラに憧れて、ずっと大剣という武器を使ってみたいレオスはもはや狂喜乱舞、


「すげえ!!!!これマジですげえ!!ビオラちゃんってもしかして、天才か?」


「当たり前です」それでもトーンが変わらないビオラ。


ただ、ビオラは、この状態は、1発の攻撃で解除される、また剣と盾の状態に戻る。もう1回使いたいなら、また同じ動きが必要である、それから、攻撃以外で剣と盾状態に戻すには、もう1回トリガーを引いて、剣を抜けば行けると。でもこれはレオスにとってはどうでもいい。さっきのエーテル測定といい、とにかく子供と化してる。


レオスの武器を紹介終わった後、今度はエルトの武器を紹介し始めたビオラ、


「正直、エロトさんの武器はまだ調整が終わってないです、でも、一応仕様を説明するのです」


エルトの武器が銃火器のため、構造がレオスの剣盾よりも複雑だから、調整はまだ途中であるとビオラは前置きをして、説明を始めた。

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